2024年5月7日 更新

ラーニングピラミッドとは?7段階の学習定着率と企業研修で活かすポイントを解説

ラーニングピラミッドとは、学習方法と学習定着率を効果的な順に積み上げたピラミッド状の図のことです。アメリカでの研究結果を基にしていて、企業研修に反映させることで研修内容の定着率向上が期待できます。ラーニングピラミッドの意味や構成する7段階の要素、活用のポイント、企業での活用例を紹介します。

ラーニングピラミッドとは

ラーニングピラミッドとは、学習方法ごとの平均的な定着率を視覚的に表した図を指します。アメリカ国立訓練研究所が発表した理論で、日本語では「学習/経験の円錐」とも呼ばれます。

図には7つの学習方法が挙げられ、図の頂点から下に向かうほど定着率が高くなり、ピラミッド型に表されているのが特徴です。学校の授業や企業の研修など、限られた時間のなかで効率的な学習効果を上げたい時に用いられています。

ラーニングピラミッドが示す7つの学習方法と定着率

学習方法は大きく受動的学習と能動的学習の2つに分けられ、ピラミッドの下層に向かうほど能動的要素が強まり定着率が高くなるとされています。ラーニングピラミッドを構成する7つの学習方法とそれぞれの定着率を紹介します。

①講義(5%)

ピラミッドの頂点となるのが、従来の学校の授業やセミナーなどで多くみられる、1人の講師が教壇に立って多数の受講者に向かって講義を行う学習方法です。一般的な学習方法ではありますが、受動的でよほど興味があり意欲的に取り組まない限りはほとんど忘れてしまうと考えられています。

アメリカ国立訓練研究所の実験では定着率5%という結果で、これから挙げる学習方法のなかでは最も低い値です。講義の内容を効率よく記憶に残すためには、ノートを取る、予習・復習を行う、ワークを入れる、反復学習するなど、自発的な行動が求められます。

②読書(10%)

ピラミッドの上から2番目が、教科書や専門書などの書籍を読んで学習する方法です。「自分で読む」という能動的な要素が含まれるため、講義よりも定着率が高いとされ10%という結果となっています。学校が指定した参考書や課題図書、企業が指定した書籍を読む場合と、自分で関連書籍を選んで読む場合があり、後者の方が定着率は高くなると考えられています。

さらに読書で得た内容をレポートにまとめる、会議で発表するなどのアウトプットと組み合わせるとより効果が高まるでしょう。

③視聴覚(20%)

研修では一般的なビデオやCDなどを視聴して学習する方法です。企業研修ではeラーニングなどが該当し、音声や静止画から得るだけの情報と比べると情報量が増えて記憶に残りやすく、定着率は20%ほどとされています。ただし、ぼーっと見ている、なんとなく聞いているだけではなく、ある程度集中して学ぶ姿勢が必要です。

④デモンストレーション(30%)

実験や実技、実際の現場などを見て学ぶ方法をデモンストレーションと呼んでいます。学校では「先生が実演する」「工場見学に行く」といった行為や、企業ではスキルを持った人が実際にやって見せるといった方法が該当します。目、耳、鼻が刺激されインパクトは大きいですが、自ら行うものではないので定着率は30%ほどという結果です。定着率を上げるには、不明点をその場で質問する時間を設けるといった能動的な要素を取り入れるのがおすすめです。

⑤グループ討論(50%)

グループ討論は、受講者がグループに分かれ、設定された課題について議論を行いながら理解を深める学習方法です。テーマを理解する、自分の意見を整理して伝える、相手の意見を聞くなどの体験や能動的な要素の割合が大きくなるため、学習効率は50%ほどとされています。他者と意見を交わすなかで、新たな気づきを得る効果も期待できます。

⑥自ら体験する(75%)

実験や実技などを見るのではなく、自分で実践して学んでいく方法もあります。学校教育では体育・美術・家庭科といった実技科目、企業研修ではOJTやロールプレイング、フィールドワークなどが該当します。実際に自分の体を動かすことで集中力が高まって学習効率が良くなるとされ、定着率は75%ほどです。

しかしあくまでも受講者が興味を持って積極的に参加することが条件です。無理やり参加させられている状態では高い学習効果は期待できないでしょう。

⑦他者に教える(90%)

ピラミッドの最下層、最も学習定着率が高いとされる方法が他者に教えることです。自分でテーマを決めて情報を深掘りし、内容を整理して他者にプレゼンテーションを行うといった段階的なアクションが必要で、テーマへの深い理解や、他者にわかりやすく伝えるスキルが求められます。学んだことを教える過程は自分にとっても繰り返し学習となり、さらに質問を受けることで自らの理解もより深まっていきます。

一般にピラミッド下層のグループ討論、自ら体験する、他人に教えるの3つが能動的学習にあたり、近年ではアクティブラーニングと呼ばれ企業においても注目されている学習方法です。

アクティブラーニングとは?メリットと取り入れ方を学び人材育成に役立てよう

アクティブラーニングとは、受講者が能動的に参加する学習方法のこと。もともとは教育現場で注目されていたものですが、企業研修にも有効であるとして導入する企業が増えています。アクティブラーニングの意味や注目される背景、企業が導入するメリットと実践例、導入する際のポイントを紹介します。

ラーニングピラミッドを企業研修で活用するポイントと具体例

ラーニングピラミッドを企業研修で活かすには、構成する7つの学習方法からインプットとアウトプットを組み合わせるのがコツです。企業研修における活用のポイントと具体的な活用例を紹介します。

受講者が参加できる機会を増やす

講義形式の研修の学習定着率を上げるには、受講者が参加・発言できる機会や、実際に体験できる機会を取り入れると良いでしょう。

<活用例>


  • 講義の要所ごとに意見や感想を求める

  • 講義の時間を短くしてグループディスカッションの時間を設ける

  • 講義を受けながら実践するワークショップ形式にする

  • eラーニングの受講後にレポートの提出を求める など


従来の学習方法に比較的簡単に取り入れられる手段なので、一度試してみてはいかがでしょうか。

すぐに現場で活かせるように工夫する

受講者が研修の内容を「自分ごと」として捉えられるように、扱うテーマや学習計画を工夫するのも効果的です。

<活用例>


  • 実際の業務に関連する事例を取り上げる

  • 業務上起こりうるリスクについて意見交換する

  • 研修のなかで目標を定め、後日報告会やフォロー研修を行う など


身近な事例を取り上げることで日常業務においてのイメージが湧きやすく、実践率が高まります。

従業員同士で教え合う環境をつくる

研修時間だけで終わるのではなく、研修の後に従業員同士が互いに教え合う風土を組織に根付かせると、長く研修の効果を発揮できます。

<活用例>


  • 社外研修で学んだことを発表する報告会を開催する

  • 朝礼や定期ミーティングなどで情報共有の時間をつくる など


一部の人に任せっきりにせずに、上司、先輩、後輩、同僚、新入社員など、立場にかかわらず教える側、教わる側を入れ替えていくのがポイントです。ピラミッドの最下層である「他者に教える」を自然に実践できる理想的な環境づくりに役立ちます。

ラーニングピラミッドを活かせば企業研修もより効果的に

学習方法とその効果が一目でわかるラーニングピラミッド。従来行ってきた研修に足りなかった要素を組み込むだけでも、学習定着率をアップさせられる可能性があります。ポイントは従業員が能動的に動けるように後押しすることです。人材育成の1つの考え方として取り入れてみてください。

※記載の情報は、2024年2月時点の内容です。

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