2024年5月7日 更新

OKRとは?導入のメリットやMBO・KPIとの違い 、運用方法・企業事例を解説

OKR(Objectives and Key Results)とは、企業と従業員の目標を設定・管理する手法です。企業と従業員が共通の目標と明確な優先順位を持ち、定期的に評価することで目標達成を目指します。この記事ではOKRの意味やメリット、類語であるMBO・KPIとの違い、運用方法などを分かりやすく解説します。

OKRとは?

OKRは従業員や企業の目標達成に有効な手法です。まずはOKRの概要と特徴を見ていきましょう。

目標設定・管理方法の1つ

OKRとは目標設定・管理方法を指す言葉で、「Objectives and Key Results:目標と主要な結果」の頭文字をとった略称。企業やチーム、個人が目標を共有し、一丸となって重要課題に取り組むことを目的としています。2000年代に米シリコンバレーの有名企業が導入したことで注目を集めました。

目標を高く設定し高頻度でレビューを行うのが特徴

OKRの特徴は、目標設定・進捗確認・評価の一連の流れを高い頻度で行うこと。また簡単に達成できる目標ではなく、チャレンジングな目標設定も特徴の1つです。従業員全員が明確な優先順位を理解して、同じ方向を向いて計画を進行していきます。

OKRとMBO・KPIとの違い

OKRと似た用語には、「MBO(Management by Objectives and Self Control):目標管理」や「KPI(Key Performance Indicator):重要業績評価指標」などがあります。目標を共有する相手やレビューの頻度、目指す達成率が異なります。それぞれの違いについては以下の通りです。

用語名 特  徴 目標の共有範囲 レビューの頻度 達成率
OKR 高い目標設定を共有し計画を推進 全従業員 1ヵ月~3ヵ月 60~70%
MBO 個人の業績にもとづいて評価 本人と上司および人事 1年 100%
KPI 業務のプロセスが適切かを測定 プロジェクトのメンバー プロジェクトにより変動 100%

OKRの基本要素

OKRの導入で効果を発揮するためには、「達成目標(Objectives)」と「主要な成果(Key Results)」を正しく設定することが大切です。OKRの基本要素を確認しておきましょう。  

O:Objectives(目標)

挑戦的な高めの目標(O)を設定します。数ヵ月で達成できてシンプルで覚えやすいものが望ましいです。定量的な数値は必要なく、企業であれば「人々の暮らしが便利になる世の中を実現する」といったビジョンのようなもので良いでしょう。チームの共感やモチベーションを高める効果が期待できます。

KR:Key Results(主要な結果)

Key Resultsは、数値で測れる定量的な指標が必要です。例えば、「売上拡大を目指す」といった目標(O)の場合、「既存顧客からの売上〇%アップ」や「新規売上〇〇以上」といったKRを設定します。

1つの目標(O)に2~5つのKRを設定すると良いとされています。ポイントは、ベストを尽くせば達成できる指標を設定すること。掲げた目標の60~70%の達成率で成功とみなします。

OKRを導入するメリット

OKRの導入により、会社と従業員の連携ができ結果的に生産性向上へとつながります。OKR導入のメリットを4つ紹介します。  

企業の目標を従業員全員で共有できる

OKRでは企業の目標を設定し従業員全員で共有できるのが1つめのメリット。主要な目標が実際の業務とリンクするため、目的意識が生まれます。連帯感とモチベーションも向上し、重要課題に協力して取り組めるようになります。  

従業員同士のコミュニケーションが活発になる

従業員全員で共有できる目標であることから、部署の隔たりなく従業員同士のコミュニケーションがとりやすくなります。誰がどのように共通の目標で仕事をしているのかが見えるため、お互いの刺激にもなります。

業務の優先度が明確となり生産性が向上する

共通の目標が設定されるため、仕事の優先度が明確になり、業務効率の向上が期待できます。全員が一丸となって1つの目標に向かい行動をとるため、企業の生産性向上にもつながります。

エンゲージメントの向上が期待できる

共有した目標の中で取り組むべき業務内容が明確化しているため、従業員は自分の貢献度を実感しやすくなります。モチベーションの維持や企業へのエンゲージメントの向上も期待できます。

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OKRの導入手順と運用方法

次に実際にどのようにOKRを導入するのか、手順と運用方法を紹介します。1つの目標(O)に対して数個の主要な成果(KR)を設定し、企業全体から部門、個人が連携することが重要です。

ステップ①企業全体のOKRを設定する

企業OKRは基本的に1つのみ設定します。ただし、複数の事業がある場合は、事業ごとのOKRを設定しても構いません。経営陣からのトップダウンではなく、企業内の各部門からの意見をフィードバックして調整するのが望ましいでしょう。

ステップ②各部門やチームのOKRを設定する

企業OKRに連動させて各部門やチームのOKRも設定しましょう。こちらもトップダウンではなく、メンバーが納得できるようボトムアップからの意見を尊重して決定。他のチームとの整合性を確保するために、必要に応じて修正を行います。

ステップ③個人のOKRを設定する

企業・部門OKRと連動した、従業員一人一人のOKRを設定します。リーダーと個人が相談しながらOKRを決めることが重要です。チーム内でも各個人のOKRを確認して調整します。

ステップ④レビューを行う

週に1度進捗状況を確認しつつ、中間で一度レビューを行い改善点について話し合います。レビュー期間の最後に各OKRの達成度を採点(スコアリング)。KRごとに%でスコアリングし、KRのスコアの平均を目標(O)のスコアとします。60〜70%の値であれば目標達成です。低すぎたり高すぎたりする場合は、今後その目標を続けるか検討しましょう。

OKRの導入事例

OKRは米のシリコンバレーにある企業により導入が始まり、日本でも活用されています。米国と国内の事例を紹介します。

事例①検索エンジンサービスの世界トップ企業

インターネットの検索エンジンサービスを提供する米のIT企業は、2000年初期からOKRを導入。当社を世界的企業に成長させた要因とされています。毎四半期にミーティングを開き、全社にOKRの評価を公開しています。1つのKRに対して0.0~1.0の定量値でスコアリングし、7割達成を目指しています。

事例②国内のフリマアプリ運営企業

国内のフリマアプリ運営会社は、日本でいち早くOKRを導入したことで知られています。急成長した当時、会社と従業員間の目標のずれを解消するために導入。個人の視点を引き上げ、組織の結びつきの強化に成功しました。上司と部下による1on1ミーティングを取り入れているのも特徴です。

事例③大手消費財化学メーカー

国内の大手化学メーカーでは、事業貢献・ESG・One team & My Dreamの3つの観点から、夢を大きく持ち大胆にチャレンジできるような目標を設定。従業員自らが目標を設定し、上司や同僚間の共有・対話を重視しています。高い目標を掲げることで従業員のモチベーションも向上しました。  

OKRとは企業と従業員の目標達成に活用できる手法

OKRは会社と従業員の目標をリンクさせ、会社の業績アップやモチベーション向上を図るのに有効な手法と言えます。高いビジョンを掲げ挑戦できる環境の構築は、企業や個人の成長にもつながるでしょう。OKRを定期的に運用して、企業の目標達成に活用してみてはいかがでしょうか。

※記載の情報は、2024年1月時点の内容です。