2024年5月7日 更新

オンボーディングとは?新人育成で導入する目的やメリット・実施プロセスを紹介

オンボーディングとは、新入社員や転職者を迎えるにあたり行う取り組みのこと。新たなメンバーの早期戦力化が見込めるだけではなく、組織全体のパフォーマンスを向上させられるとして近年注目されています。この記事では、オンボーディングの意味や目的、導入するメリット、実施のプロセスと施策例、押さえておきたいポイントを紹介します。

新人育成で注目されるオンボーディングとは

新たなメンバーがいち早く組織になじみ、能力が発揮できるよう企業でサポートしていく取り組みをオンボーディングと言います。まずはオンボーディングの意味や目的、その他の新人研修との違いを紹介します。

オンボーディングとは

オンボーディングとは、新たに加わるメンバーが早くチームになじみ、十分に能力を発揮できるよう企業が実施する取り組みのことです。英語の「on-boarding(船に乗る)」という言葉が由来となっています。対象となるのは新入社員の他、中途入社者などの新規採用者が含まれます。また新メンバーだけではなく、同僚や上司などの既存メンバーも巻き込んで受け入れる体制を整えていくことが大切です。

導入の目的と注目される背景

近年では、早期離職者の増加や人材不足が企業の深刻な問題となっています。オンボーディングを取り入れることで、新メンバーが即戦力として能力を十分に発揮できることに加え、相談しやすい環境づくりができ定着率を上げられます。全社的に取り入れれば、部署による人材育成のばらつきも減らせるでしょう。

OJTなどの新人研修との違い

OJTなどの新人研修と違う点は、オンボーディイングの対象は新メンバーだけではなく、既存メンバーも含め組織全体に及ぶところです。内容も実務に関する教育や育成の他、交流会などを通して人間関係や企業文化になじむためのサポートをするなど幅広くなっています。

成功するOJTのコツを解説!ポイントを押さえて効果的な人材育成を

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オンボーディングを企業が導入するメリットと注意点

オンボーディングを実施すると、新たなメンバーがスムーズに組織になじめるのはもちろん、組織全体にも良い影響が期待できます。ただし、結果を出すには一定のコストも必要です。企業が導入するメリットと注意点を紹介します。

チームのパフォーマンスを高められる

新メンバーが早い段階で戦力となってくれることで、チーム全体の生産性が向上します。チームに貢献できている実感が湧くと、仕事へのやりがいも生まれるでしょう。既存メンバーからしても、教育に割く時間が減って本来の仕事に集中しやすくなります。

従業員のエンゲージメントが向上する

オンボーディングのさまざまな施策によってチーム内のコミュニケーションが活発化し、既存メンバーを巻き込んでチームの結束力を高められます。チームや会社への愛着が生まれると人材が定着しやすくなり、チームの安定稼働につながります。

新たな人材の採用コストが削減できる

従業員の定着率が上がると、新しい人材を採用・育成するためのコストが削減できます。企業が従業員の採用・育成にかけるコストは1人当たり100万円以上かかると言われていて、早期離職となると損失は多大です。さらに企業の採用コストは年々増加傾向にあるので、離職を防ぐことで大きなコストダウンが見込めます。

結果が出るまでには一定の時間がかかる

オンボーディングを導入してから結果が出るまでには、それなりの時間を要するのがデメリットとして挙げられます。また、実施するプログラムの選定や準備は人事担当者にも負荷がかかるため、導入当初はコストがかかることも知っておいてください。実施していく中で、チームの雰囲気や進み具合に応じて定期的にマニュアルをブラッシュアップし、自社に合った施策を構築していきましょう。

オンボーディング導入のプロセスと施策例

入社前・入社直後・入社後と、それぞれ適した施策は異なります。オンボーディングの導入プロセスと、具体的な施策例を紹介します。

【入社前】入社に向けての意欲を高める

入社前に行うオンボーディングは、会社に対する疑問や不安を解消し入社意欲を高めること、内定者との信頼関係を築くことを目的とします。準備としては、内定者と密に連絡をとれる体制づくりが必要です。

<施策例>


  • 会社説明・見学会

  • 内定者向けインターン

  • 内定者同士の親睦会

  • 既存メンバーとのランチ会

  • 各種マニュアルの配布

  • 入社後のスケジュール提示・目標設定

  • 定期的な面談・ミーティグ

  • オンライン教育の提供


【入社直後】不安払拭のためのサポートを行う

新メンバーの不安が最も大きい入社直後は、早く環境になじんでもらえるよう歓迎する姿勢をみせることが大事です。企業の文化や業界内のルールへの理解を深められるような場を提供するのも良いでしょう。新入社員はもちろん、業界経験のある中途入社者であっても、十分に能力を発揮するためにはサポートが必要です。既存メンバーはこまめにフォローを入れられるように意識を向け、ともに成長を目指しましょう。

<施策例>


  • 歓迎会・交流会

  • 社内の施設案内

  • 企業理念や業界知識を深める研修

  • OJT

  • 個別の目標設定と達成に向けてのサポート

  • 質問窓口の設置

  • 相談係の選出


【入社後】継続的にフォローし定着率を上げる

チームにある程度なじめてきても、定着させるためには定期的なフォローをしていく必要があります。特に早期離職を防ぐためには、入社後数ヵ月は業務に対するギャップやストレスがないか丁寧に確認しましょう。分からないことは気軽に尋ねられる環境づくりや、横のつながりを促進できる機会を提供するのも有効です。3ヵ月、6ヵ月、1年と様子をみながら継続していってください。

<施策例>


  • メンター制度

  • 1on1ミーティング

  • 業務に対するフィードバック

  • 部署・同期などさまざまな構成での交流会

  • スキルアップ研修


オンボーディングを導入する際のポイント

組織全体で受け入れ体制を整え、新たなメンバーと目標に向かいしっかりコミュニケーションをとっていくのがオンボーディングを実施する上では大切です。オンボーディングを導入するにあたってのポイントを紹介します。

受け入れる準備を徹底する

パソコンを見ながら話し合うビジネスマン

オンボーディングを実施するにあたり、まずは事前準備を徹底しましょう。全体の設計や個別マニュアルの作成、使用するツールの手配、メインとなる担当者の選定など、必要な準備はあらかじめ済ませておいてください。会社での受け入れ体制が整っていると、入社後のパフォーマンスが上がりやすいと言われています。

また、既存メンバーも当事者意識を持てるようオンボーディングへの理解を深め、新たなメンバーを歓迎するという意識づけを行うことも重要です。

多方面からのサポート体制を整える

施策を考える際には、同期との横のつながり、業務のサポート役となる上司・先輩との縦のつながり、困りごとを相談できる他チームの上司・先輩との斜めのつながりといった多方面からの視点を取り入れるのがポイントです。離職の大きな原因は人間関係と言われているので、サポート体制を厚くすることで定着率を上げられます。まずはメンバー紹介や役職の説明を行って組織への理解を深めた後、交流会などで接する機会をつくると効果的です。

期待値をすり合わせる

組織と新メンバー双方の期待値がずれていると、パフォーマンスが発揮できなかったり、本人が思い描くキャリアとギャップが生じたりして離職の要因となります。期待値をすり合わせるには、チームが新メンバーに求めていることを伝えるだけではなく、反対に新メンバーがチームに求めていることをリスニングしましょう。業務内容の他、役割や待遇についても入念な話し合いが大切です。

細かく目標を設定する

グラフが書かれた書類

目標設定する時は、早期達成が見込める程度まで細分化するのがコツです。細かな目標設定を行うことをスモールステップ法と言い、小さな目標を達成していく過程で成功体験を積み重ねられます。途中で目標を見失うおそれもなくなるため、本人の成長や業務の効率化に有効とされています。

オンボーディングとはチーム全体の士気を高める新たな取り組み

オンボーディングは、新たに加わるメンバーが早くチームになじめるよう、既存メンバーを含めて取り組んでいく施策です。新メンバーが十分に能力を発揮することで、結果的に組織全体にも良い影響が期待できるでしょう。効果的に取り組むには、準備や体制づくりから入念に行うのがおすすめです。

※記載の情報は、2023年7月時点の内容です。