2024年5月7日 更新

レジリエンスとは?企業から注目される背景や向上のメリット、高める方法を紹介

ビジネスにおいて重要視されているレジリエンスとは、社会の変化に適応し回復していく力のことです。企業全体、また各従業員のレジリエンスを高めることは、めまぐるしく変わる現代社会を乗り越えていくために欠かせないとして近年注目されています。本記事では、レジリエンスの意味や企業が高めるメリット、施策例などを紹介します。

ビジネスにおけるレジリエンスとは?

回復力という意味を持つレジリエンスは、社会情勢に柔軟に対応するために必要な力であるとして企業からも重要視されています。レジリエンスの意味やビジネスシーンで注目される背景、類似用語との違いを解説します。

レジリエンスとは

レジリエンスとは、「回復力」や「復元力」と訳される言葉で、「困難やストレスに直面した時にしなやかに乗り越え立ち直る力」という意味で使われています。語源はラテン語の「resilire」「resilio」とされます。幅広い分野で使われる用語で、分野によって少し使い方が異なるので、まずは例をみていきましょう。

<主なレジリエンスの例>

組織レジリエンス 企業が社会や市場の変化に負けず、適応していく力
災害レジリエンス 災害から復興する力
環境レジリエンス 地球温暖化などの環境問題を復元、適応する力
サイバーレジリエンス サイバー攻撃への耐久力、回復力

本記事では、ビジネスシーンで使われる組織レジリエンスについて紹介していきます。

レジリエンスが注目される背景

近年、企業を取り巻く環境はめまぐるしく変わり、将来の予測が困難な「VUCA時代」に突入したと言われています。企業おいては、社会情勢の変化や新型コロナウイルスの影響にも柔軟に対応し、乗り越えていく力が必要であるとしてレジリエンスが注目を集めています。企業の成長に欠かせない従業員の「健康経営」の観点からも、従業員のレジリエンスを高めることは重要です。

【VUCA(ブーカ)】とは?VUCA時代に適応するための術を解説

VUCA(ブーカ)とは、先行きが不透明で予測困難な状況を指す言葉で、今の社会を表すものとして注目されています。VUCA時代に適応するためには、時代に求められる人材を目指すことが重要です。本記事では、VUCAの概要や適応するためにすべきこと、時代に合った人材育成方法などを解説します。

メンタルヘルスとの違い

レジリエンスと似た用語としてよく挙げられるのがメンタルヘルスです。メンタルヘルスとは、心の健康や精神衛生といった意味を持ちます。レジリエンスが困難にぶつかった際に柔軟に受け止め回復していく力を指すのに対し、メンタルヘルスは困難やストレスの軽減・緩和といったサポート面を示すのが異なる点です。

企業がレジリエンスを向上するメリット

企業においては、レジリエンスを高めることで従業員各人の生産性が上がり、ひいては組織の評価にもつながります。企業がレジリエンスを高めるメリットをみていきましょう。

従業員の心身の健康を増進できる

レジリエンスを向上することにより、従業員1人1人が生き生きと働き続けやすくなります。業務に追われたり職場の人間関係に悩んだりして、心身のバランスを崩す従業員は少なくありません。ストレス耐性と回復する力を身につけることで、心身の健康維持に役立ちます。結果的に離職率の低下にもつながり、長期的には組織の生産性の向上も期待できます。

組織の目標達成率が上がりやすくなる

従業員のレジリエンスが向上すると、高い目標にも前向きに取り組んで実現していく力が養われます。技術の進歩やニーズの変化に適応するため、企業や従業員は日々新たな課題やプレッシャーを抱えているもの。失敗へのおそれを乗り越え挑戦しやすい環境を整えることで、よりステップアップした目標にも対応していける力が身につきます。

企業としての評価が上がる

近年、レジリエンスは投資家や顧客からも企業を評価する指標の1つとして重要視されています。社会の変革やさまざまなリスクに柔軟に対応していける企業は、優れた企業として注目を集めます。評価が上がれば、投資の増加や企業ブランドの向上も見込めるでしょう。

レジリエンスの理解を深めるための基礎知識

レジリエンスの理解を深めるためには、構成する要素と高めるために必要な要素を押さえておきましょう。レジリエンスの基礎知識、合わせてレジリエンスが高い人/低い人の特徴を紹介します。

レジリエンスを構成する要素

レジリエンスを構成するのは、危険因子と保護因子という2つの要素。医療現場で用いられることの多い用語ですが、レジリエンスの考え方に応用されています。

<危険因子とは>

困難な状況やストレスをもたらす原因となるものです。具体例としては戦争や災害、病気、貧困、家庭問題などが挙げられます。

<保護因子とは>

困難やストレスを乗り越えるための力をくれるものです。具体例としては個人の特性や考え方、問題解決能力、家族や友人からの支援などが当てはまります。

レジリエンスにおいては、危険因子に適切に向き合い、保護因子にアプローチしていくことが大切です。

レジリエンスを高める要素

レジリエンスを高める際に重要となる能力のことをレジリエンスコンピテンシーと呼びます。具体的には以下の6つです。

①自己認識 自分の思考・感情・行動を客観的に認識する能力
②セルフコントロール 目標に向かい、自分の感情や行動を制御する力
③柔軟性 広い視野を持ち、臨機応変に対応できる力
④楽観性 物事を前向きに捉えて行動を起こしていく力
⑤自己効力感 自分の強みを理解し自信を持つこと
⑥人とのつながり 周りの人と良好な人間関係を築く能力

これらの複合的な能力を高めるよう意識を向けることで、レジリエンスが発揮されます。

レジリエンスが高い人/低い人の特徴

従業員へ効果的にアプローチするためにも、レジリエンスが高い人/低い人の特徴を押さえておきましょう。

<高い人の特徴>


  • 考え方が柔軟で発想力が豊か

  • 物事に冷静に向き合える

  • 自分にも周りの人にも優しくできる

  • 自分の長所を理解している

  • すぐには諦めず挑戦していく姿勢が見られる


<低い人の特徴>


  • 柔軟に対応していくことが苦手

  • 目の前のできごとに一喜一憂する

  • 自分にも周りの人にも厳しい

  • 自分のネガティブな面ばかりに意識が向きがち

  • 諦めるのが早い


個人のレジリエンスの高さは日々の業務に影響を与え、組織全体に波及していきます。そのため組織として前向きで柔軟性のある風土を築くことが重要です。

企業のレジリエンスを高める方法

企業がレジリエンスを高めるには、従業員各人へのアプローチ、合わせて企業全体での取り組みを行なっていく必要があります。企業におけるレジリエンスを高めるための具体的な施策や方法を紹介します。

従業員研修を実施する

従業員個々のレジリエンスを強化することは、企業全体のレジリエンス強化につながります。まずは企業がレジリエンスの重要性を理解して、従業員へ浸透させていく施策を取り入れましょう。

<施策例>


  • レジリエンスについて学ぶ研修会

  • マニュアルの作成

  • 定期トレーニング

  • 面談

  • 適性検査


チャレンジしやすい職場環境を構築する

減点方式の評価では、従業員は失敗をおそれてチャレンジすることに消極的になります。すると困難にうまく対処できず、新しいイノベーションも生まれません。

まずは挑戦する姿勢を評価する、高圧的にならないなど、組織全体がチャレンジに肯定的な姿勢をみせることが重要です。従業員が失敗しても、そのデータを次の取り組みに活用できる仕組みを整えていけば、企業の強みになります。

自社のビジョンを浸透させる

自社が目指す方向性や現在のミッションを明確にし、従業員にも浸透させていきましょう。方向性が分かれば、従業員は迷わず行動が起こせるようになります。急激な環境の変化があった時にもいち早く気づくことができ、早い段階で適切な対処を行なっていけるでしょう。組織が一丸となって困難に立ち向かっていくための土台づくりの第一歩です。

BCP(事業継続計画)を整備する

BCP(事業継続計画)への取り組みを強化すれば、ハード面から企業のレジリエンスを向上できます。BCPとは、災害などの有事の際に備えて前もって検討しておく準備や計画のこと。企業は災害などに見舞われた場合でも、速やかに事業を復旧させることが求められます。いざという時に事業を継続させるための仕組みづくりやガイドラインの整備は欠かせません。

近年では特にサイバー攻撃への対応が大きな課題となっています。重要なデータはバックアップをとっておく、ネットワークのセキュリティ対策を強化するといった準備も、レジリエンス強化の一環です。

レジリエンスとは、社会の変化に対応し企業を成長させる力

めまぐるしい変化を続ける現代社会に企業が対応していくために、近年注目されているのがレジリエンスです。企業全体で向上に努めることで、有事の際の速やかな対応、そしてさらなる成長も見込めるでしょう。研修などで従業員各人にアプローチする、企業として体制を整えるなど、取り入れられそうな施策を検討してみてはいかがでしょうか。

※記載の情報は、2023年9月時点の内容です。