PoC
2024年1月9日 更新

PoCとは|ビジネスにおける意味とメリット・デメリット、導入事例を紹介

PoC(Proof of Concept)は「概念実証」を指すビジネス用語で、新しい技術やアイディアの有用性・実現可能性を検証することです。PoCを活用すると、新規プロジェクトの失敗リスクを減らしコスト削減につながります。PoCの意味と類似用語との違い、導入のメリットと注意点、導入時の流れと実際の事例を紹介します。

PoCとは?

PoCとは、新しい技術や理論、アイディアなどを検証することです。プロトタイプや実証実験をはじめ、似た用語が多いですがすべて異なるもの。まずは、PoCの意味や目的を理解し類似用語との違いを見ていきましょう。

PoCの意味と目的

PoCはProof of Conceptの頭文字を取ったもので、意味は「概念実証」です。新しい理論やアイディアの実現可能性や有用性を確認する試験のことを意味します。航空機の製造や医薬品開発、映画制作などプロジェクトに莫大なコストがかかる事業をはじめ、IT業界でも注目されています。

PoCの目的は、コスト最小化やビジネスの成功率向上です。大きく投資する前にテストを行うため、本格的な開発に移る前に成功するかどうかを見極めることができます。近年のデジタル技術進化により、PoCは新しいサービスやビジネスモデルの競争力向上に不可欠な存在になっています。

類似用語との違い

PoCと似ている用語はたくさんあります。ここでは、PoCと似ている用語との概念の違いを見ていきましょう。

<プロトタイプ>

完成品の前に検証を行うことをプロトタイプといいます。プロトタイプはPoCが成功した後に作成されるのが一般的です。

<実証実験>

技術や概念の実現可能性を検証する工程を実証実験といいます。実証実験は、具体的かつ実際に近い環境で製品やサービスを運用し、問題点を洗い出すこと。ただしPoCの過程で課題や問題点が判明することもあり、ほぼ同義と捉えられています。

<MVP>

必要な機能を備え、市場での使用を前提とした製品がMVP製品です。MVP製品を実際に使用してもらい、顧客や市場の反応を受けて改善を繰り返していきます。

PoCに取り組むメリット

PoCに取り組むことは、新規事業のリスク軽減の他、コスト削減、さらに投資家や外部企業から注目されるきっかけにもなります。ここでは、PoCに取り組むメリットを詳しく解説します。

新規事業に取り組むリスクを軽減できる

PoCによって新規事業に取り組む前に本当に実現可能なのか、ニーズがあるのかなどを検証でき、失敗リスクを減らすことができます。技術・情報不足を把握でき、対処をしながら新規事業展開の準備が進められるようになるでしょう。

商品開発では検証結果を参考に、プロトタイプやMVPに移行し、事前にユーザー評価の把握が可能です。

コスト削減につながる

PoCによって事業の実現性の高い方針や工程が明確になります。想定外の修正が発生したり、無駄な開発工数がかかったりすることを防げるでしょう。

また、少ないコストで最大限の効果を得られるのもメリットです。本格的な開発に入る前に費用対効果の検証ができ、大きな損失を抑えられます。

投資家・外部企業から注目される

PoCを通じて実現性を表明し、 投資家や外部企業から高い評価を得られるケースも。これによって、投資家から出資を得やすくなったり、有力企業から業務提携オファーを獲得できたりする可能性が上がります。

PoC導入のデメリット

PoCの導入時には、注意したい点もあります。主に検証のためのコストが追加されることと、情報漏洩のリスクです。PoC導入のデメリットについて詳しく見ていきましょう。

検証回数が増えるとコストが高くなる

PoCはトライ&エラーを繰り返し、成果を積み上げるもの。しかし検証の回数を増やすと、そのぶんコストがかかります。

検証が複雑になると、得られる成果がPoCに使用したコストを下回る可能性があります。成果最大化のためには目的を正しく定義し、コストと効果のバランスを確認してPoCを進める必要があるでしょう。

情報漏洩のリスクがある

PoCがうまくいくとプロセスの具現化と可視化が進み、プロトタイプを使用しての検証が行われます。しかし、プロトタイプの進行には情報漏洩のリスクが潜んでいます。プロトタイプの作成に外部委託が必要な場合、情報が競合他社に漏れる可能性も。

競合他社に情報が流れると、自社にとって大きなダメージにつながります。情報漏洩を防ぐためには、外部委託先との秘密保持契約(NDA)の締結といった対策が必要です。

PoCの導入手順

PoCを導入する流れには3つのステップがあります。まずはゴールと工程を定め、それをもとに検証を実施。その検証結果を評価し、プロジェクトの実施または中止の判断を行います。ここからはPoCの導入手順を詳しく解説します。

①ゴールと工程を決める

まずは明確なゴールと目的を設定します。PoCの測定には測定基準や、何をもって成功と判断するのかという成功基準が必要です。

目的が定まれば、実施計画をたてます。実施の範囲・スケジュール・実施内容・体制・役割分担を詳しく決めていきます。

②検証を実施する

実施計画が定まったら、仮説検証を行います。実際の環境に近い状態で、スピーディに進めていきましょう。この際、広範なプロジェクトの場合は、多くの対象者の参加が重要です。対象者の偏りが少ないほど客観的で精度の高い検証になります。

③検証結果の評価をする

実際に検証し、出た結果から目標達成度や実現性を分析し、良い結果であれば開発や導入に移ります。実現性・リスク・コストといった面で問題が発生した場合は、新たなPoCを設定する必要があります。

また、結果が悪く、改善が見込めないときは中止・撤退も視野に入れましょう。ベストな形で開発・導入できるよう、リスクを抑えながらサイクルを繰り返していく必要があります。

PoCを導入した企業事例

PoCはさまざまな分野で導入されています。最後に、実際にPoCを導入した企業の成功事例について見ていきましょう。

工事現場の安全な労働環境作りのために導入した事例

大手建設会社では土砂崩れ、落盤、火災といった、工事現場の事故リスクへの対応が求められていました。そこで、可搬型5G設備を現場に設置し、センサー・カメラ・5Gネットワークを利用したデータ収集と、遠隔操作のPoCを実施。

ガスや湿度、二酸化炭素の危険な数値を検出した際に、作業員へ通知される仕組みを導入しました。さらに、外部操作室からトンネル内の建設機器を遠隔操作が可能になったり、ネットワークスライシング技術を活用して通信別の優先制御を確認できたりなど、リスク対応の幅も広がり、安全な労働環境作りに寄与しています。

ニーズを踏まえた観光施策のために導入した事例

観光客数が年々増加している日本のあるエリアでは、多様化する観光客のニーズを踏まえた施策が課題になっています。そこで3市6町村の街中に40台のWi-Fiパケットセンサーを設置し、スマートフォン用の固有IDを匿名で収集しました。

収集したデータをグラフ化することで人の数や流れ、混雑状況、移動ルートなどを分析・可視化。収集されたデータは、今後の観光施策や事業立ち上げ、施策の効果検証などに活用されています。

PoCとは新規プロジェクトを成功へ導くカギ

PoCとは、新しいアイディアや理論を実行していくかどうかを決断するために行う検証のことです。ビジネスの失敗やコストの削減につながるため、IT業界をはじめ多くの分野で取り入れられています。PoCを活用し、プロジェクトの成功へつなげましょう。

※記載の情報は、2024年1月時点の内容です。