2023年11月29日 更新

サステナビリティ経営とは何か。企業が取り組むメリット、事例を徹底解説

サステナビリティ経営とは、環境・社会・経済に配慮しながら企業が持続可能な発展を目指す経営スタイルのこと。近年では環境や社会問題の解決が世界的な課題となり、消費者や投資家も企業の動向に敏感になっています。サステナビリティ経営の意味や関連用語との違い、企業が取り組むメリット、具体的な事例を紹介します。

世界的に関心を集めるサステナビリティ経営とは

環境に関するプロジェクトの会議をする男女

環境に対して注目されていたサステナビリティですが、近年は企業活動においても重視されつつあります。サステナビリティ経営の詳しい意味や注目される背景を解説します。

サステナビリティ経営の概要

サステナビリティの考え方を尊重し、利益の追求だけではなく社会的責任を果たして持続可能な発展を目指す企業活動をサステナビリティ経営と呼びます。サステナビリティ(Sustainability)とは、「持続可能性」と訳される用語です。環境・社会・経済の3つの柱(トリプルボトムライン)をもとに、長期間にわたる地球環境に優しい良好な経済発展を目指す取り組みを指します。

サステナビリティの根幹となる3つの柱

サステナビリティ経営を実現するために、サステナビリティの考え方の基本となる3つの概念を理解しておきましょう。

①環境

森林伐採や海洋汚染、温室効果ガスの排出といった問題を解決し、生物が生存しやすい環境を維持する取り組みについて、世界規模で議論されています。

②社会

ジェンダーや教育格差、人種差別などの課題を解決し、安定した社会を目指します。

③経済

健康的な労働環境を整備し、パフォーマンスを維持して長期的に利益を生み出し続けることは、企業にとって特に大きな課題です。

サステナビリティ経営が注目される背景

2015年の国連サミットでSDGsが採択されてから、サステナビリティの考え方は社会に広く浸透し、近年では地球環境や人に優しい商品・サービスが好まれる傾向にあります。世界中で地球環境や社会貢献への関心が高まるなか、事業の維持・発展を目指すにはサステナビリティ経営が欠かせなくなってきています。

サステナビリティと関連用語との違い

エコマークが書かれたブロックを積み上げるビジネスマン

世界の環境問題、社会問題に関する用語として、サステナビリティの他に企業からも注目されているのがSDGs、CSR、ESGです。正しく理解するために、それぞれの違いをチェックしておきましょう。

SDGsとの違い

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」のこと。環境・社会・経済の3つの側面について、2030年までに達成すべき17個に及ぶ具体的なゴールを設定し、それらをクリアしていくことで持続可能なより良い未来を築こうとする取り組みです。サステナビリティの考え方を具体化したものがSDGsであると捉えておくと良いでしょう。

CSRとの違い

CSR(Corporate Social Responsibility)とは、日本語で「企業の社会的責任」と訳されます。企業においては、自社の利益追求だけではなく、従業員や顧客、取引先や投資家などのステークホルダー(利害関係者)に対し、常に責任を持った行動が求められるもの。そこで適切な情報開示やコミュニケーションを行うことで、ステークホルダーの要望に応えて信頼を得ようとする取り組みをCRSと呼んでいます。

長期的な発展を目指すという意味ではサステナビリティと似ていますが、CSRは企業の活動にのみ追求されるところが違う点です。

ESGとの違い

ESGとは、Environment(環境)、Society(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字からなる言葉。企業が長期的に成長を目指す上で必要とされる3つの観点が掲げられていて、ESGの3つの要素を重視する経営手法を「ESG経営」と呼びます。サステナビリティが大枠の考え方なのに対し、ESGは経営スタイルを指すのが違いです。ESG経営をすることで、SDGsの達成につながるという関連もあります。

サステナビリティ経営に取り組むメリット

さまざまな人が働く開放的なオフィス

環境問題や社会問題解決に貢献することは、企業のイメージを良くするだけではなく、従業員の満足度の向上やコストの削減にもつながります。企業がサステナビリティ経営を行うメリットを紹介します。

企業価値が高まる

サステナビリティ経営に取り組む企業は、環境問題や社会問題に積極的に取り組んでいると評価されます。その結果、企業価値やイメージが向上し、顧客や投資家からの信頼が高まることが期待できます。

新規事業の開拓につながる

SDGsへの関心が高まる昨今、環境に配慮した商品を選ぶ消費者が増えてきています。今後、環境関連の製品・サービスの需要は高まることが予想されるため、企業にとっては大きなビジネスチャンスにつながることも。例えばSDGsの目標達成に貢献できるような技術を提供したり、環境問題・社会問題に配慮した製品を開発したりすれば、大きな注目を得られるかもしれません。新たなビジネスの開拓や事業拡大の糸口となるでしょう。

従業員の確保・維持に役立つ

社会からの評価が高く、職場環境にも配慮した企業は、従業員のエンゲージメントが高いのが特徴です。エンゲージメントが高まると、業務のパフォーマンスの向上や離職率の低下が望めます。さらに、サステナビリティを重視してジェンダーやLGBTを尊重した人材採用を行っていくことで、雇用の安定や多様性のある優秀な人材の獲得も見込めます。

コスト削減・資金調達が見込める

環境への配慮として省エネやリサイクルに取り組むことは、結果的に事業活動にかかるコストの削減にもなります。また、サステナビリティ経営を進める企業は投資家からの期待も得やすいため、資金集めにも有利に働くでしょう。金融機関からは、有利な条件で融資を受けられる可能性もあります。

サステナビリティ経営の国際基準「GRIスタンダード」

報告書を見せながら説明する女性

企業のサステナビリティ経営の評価基準となるのがGRIスタンダードです。GRIスタンダードは、サステナビリティの国際基準を策定する機関・GRI(Global Reporting Initiative)が作成したガイドライン。企業が経済、環境、社会にどのような影響を与えているかを一般の人に情報開示するために用いられます。GRIスタンダードをもとにサステナビリティ報告書を作成・公開し、一定の評価を受けることでメリットを享受できます。

【業種別】サステナビリティ経営の導入事例

既にたくさんの企業でサステナビリティ経営は実践されています。具体的な事例を業種別に紹介します。

アパレル業界での事例

リサイクルマークが書かれたタグが付いたジーンズ

アパレル業界では、衣料品を通して地球環境や社会問題に配慮した取り組みを行っています。

<主な事例>


  • 不要になった子ども服を回収し、必要とする難民へ届ける

  • リサイクル素材を活用した製品を開発する

  • 自然災害の被災地に衣料品を寄贈する

  • 多様性を尊重した人材の採用、教育に取り組む


IT業界での事例

日に照らされた工場と緑の木

IT業界では、環境への負荷の軽減に役立つ取り組みに力を入れている企業が多くみられます。

<主な事例>


  • IT機器やシステムの導入により実現したCO2削減効果を定量評価し、サステナブルな製品の開発に役立てる

  • CO2の削減量をトークン化し環境価値として世界規模で取引することで、世界的な脱炭素化に貢献する

  • 植物由来の純水取引を行うプラットフォームを構築し、世界規模の水不足解消に寄与する

  • 交通量をリアルタイムにシミュレーションして物流を最適化し、排出されるCO2を削減する


製薬会社での事例

製薬会社では、世界中で起こっている医療アクセスのギャップ解消へ取り組んでいます。

<主な事例>


  • 高品質な医薬品を安定して供給できる体制を整える

  • 購入しやすい価格で製品を提供する

  • 途上国や新興国の健康福祉の向上に貢献する


電機メーカーでの事例

電機メーカーでは、事業と社内活動の両面から人・環境・社会に配慮した取り組みが行われています。

<主な事例>


  • 女性のキャリア形成支援や障がい者雇用を積極的に行う

  • オンデマンド生産による業務プロセスの変革でエネルギー・CO2削減を図る

  • リサイクルにより有限な資源を有効活用する


サステナビリティ経営を実現することで社会に必要とされる企業に

植物の苗を手渡すビジネスマン

利益だけではなく、環境や社会へ貢献し、企業が持続的な発展を目指すのがサステナビリティ経営です。世界的にも注目される活動に積極的に取り組むことで、企業価値の向上や事業の維持・拡大が見込めます。事例なども参考にし、自社で取り入れられるものがないか検討してみてはいかがでしょうか。

※記載の情報は、2023年12月時点の内容です。