2024年5月7日 更新

パーパス経営で企業の存在意義を明確に。注目を集める理由やメリットとは

企業が社会における存在意義を明確にすることを、パーパス経営と言います。この記事ではパーパス経営とは何か、注目されている理由とメリット、導入のためのステップについて解説します。また、企業がパーパス経営を導入した事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

パーパス経営とは

「パーパス経営」は企業の存在意義を主軸にした経営モデルのことです。まずはパーパス経営の意味や混同しやすい言葉との違い、パーパス経営の条件について紹介します。

パーパス経営の意味

パーパス経営とは、企業が存在意義と社会への貢献を明確にし、その軸で経営する手法です。欧米では「Purpose based management」や「Purpose driven business」と呼ばれています。日本においても、次世代の経営モデルとして多くの企業が注目しています。

パーパス経営と混同しやすいMVVの違い

パーパス経営と混同しやすい言葉にMVVがあります。MVVとは、M=Mission(企業の使命)、V=Vision(企業の目指す姿)、V=Value(企業の価値観、行動指針)を指し、企業経営で従来から重視されてきた項目です。

パーパス経営との違いは、社会的なつながりを重視するかどうか。MVVで重視しているのは社内や取引先という比較的狭い範囲ですが、パーパスでは社会まで含めた広い視点が求められます。  

パーパス経営が注目される理由

パーパス経営が注目される理由には、企業におけるSDGsの推進やサステナビリティ経営、DX化が求められている背景があります。

SDGsやサステナビリティ経営など社会貢献が求められているため

事業活動を通じて社会の課題解決や発展など、社会貢献が求められるようになってきています。一例としてSDGsへの取り組みが挙げられます。SDGsとは2015年に国連で採択された国際目標で、持続可能=サステナビリティな社会を目指すものです。

日本政府もSDGsとサステナビリティな社会を実現するための取り組みを推奨しています。消費者や投資家も企業の取り組みを注視し、企業におけるSDGsの重要性はますます高まるでしょう。

サステナビリティ経営とは何か。企業が取り組むメリット、事例を徹底解説

サステナビリティ経営とは、環境・社会・経済に配慮しながら企業が持続可能な発展を目指す経営スタイルのこと。…

将来の予測が難しいVUCA時代に企業が成長するため

現代は将来の予測が難しく不確実性の高いVUCA時代。先の見通しが難しいVUCA時代でも企業が柔軟に対応し成長を続けるためには、企業の構造改革が必要です。企業の存在意義を明確にして会社全体で共有し、社会の原理・原則に沿った方針を設定して運営することが求められます。そのためにパーパスの策定は有効な手段です。

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DX化を進め相乗効果を狙えるため

DXを推進する企業の増加も、パーパス経営が注目されるようになった理由の1つ。ITの導入によって業務の変革や改善を目指す取り組みをDXと言います。DX化を効果的に進めるためには、目的を振り返り、自社の存在意義や社会貢献の方法などを見直さなければなりません。つまり、パーパスを見直すことでDX化を促進し、相乗効果が生まれます。

パーパス経営のメリット

パーパス経営のメリットには、迅速な意思決定の指標になる、従業員のエンゲージメント向上につながる、ステークホルダーからの支持を得られることが挙げられます。メリットを具体的に見ていきましょう。    

迅速な意思決定ができる

パーパスが明確化することで、意思決定の判断基準も明確になります。現場で適切な意思決定がしやすくなり、権限の移譲も容易になるでしょう。適切な対応が即座にできれば、顧客満足度の向上にも寄与します。従業員は自律的な行動ができるようになり、管理コストやコミュニケーションコストが削減されます。

従業員のエンゲージメント向上につながる

パーパス経営は従業員のエンゲージメント向上にもつながります。社会貢献できる企業で働くことで、組織に所属する意義を感じやすくなるためです。「仕事が社会の役に立っている」という感覚は働く意欲を高めるでしょう。組織への愛着心が生まれ、モチベーションも向上し、退職率の低下や優秀な人材の確保が期待されます。

ステークホルダーからの支持を得られる

パーパス経営をしている企業は、ステークホルダーから支持されやすいというメリットもあります。ステークホルダーとは、株主、経営者、従業員、顧客、取引先の他、金融機関、行政機関、各種団体など企業の利害関係者を指します。

企業イメージの向上や顧客増加により信頼できる企業としての評価が得られ、取引額や取引先の増加、株価の上昇といったメリットが期待されるでしょう。

パーパス経営に必要な5つの条件

パーパス経営は以下の5つの条件を満たすのが条件です。


  • 自社の資金力や労働力で実現できるものである

  • 自社の利益につながるものである

  • 自社の事業と結びついているものである

  • 社会課題の解決に貢献できるもの

  • 従業員のモチベーションにつながるものである


パーパス経営に取り組むための3ステップ

パーパス経営に取り組むための3つのステップを紹介します。パーパス経営はどうやって取り入れるのか、確認していきましょう。

ステップ1.ステークホルダーと自社の分析をする

まずは、次のような項目でステークホルダーの分析を行います。


  • 顧客調査

  • 仕入先調査

  • ブランドやPRなど外部機関調査

  • IRに関する外部評価機関調査

  • CSR・SRに関する外部評価機関調査


続いて、自社の分析を行います。下記のような分析方法が有効です。


  • 3C:Customer(市場・顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)

  • SWOT:強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)

  • コンピテンシー:優れた成果を創出する個人の能力・行動特性のことを指す

  • ケイパビリティ:企業全体の組織的な能力


ステップ2.パーパスを言語化し社内で浸透させる

分析が終わり、外部環境や自社理解が深まったら、自社の在り方を再考し、パーパスを言語化しましょう。パーパスは従業員全員に理解され、浸透させる必要があります。パーパスの言語化だけではなく、その背景や想い、信念も伝え、共感を呼び起こします。従業員の納得や共感を得ることが大切です。

ステップ3.戦略を業務に落とし込んでいく

パーパスに基づいた戦略を練り、日々の業務に落とし込みます。従業員が業務でパーパスを意識できるよう努めるのが理想です。上層部が一方的に発信するのではなく、従業員がパーパスに深く考える機会・時間を確保することが重要です。

パーパス経営の企業事例

最後に、パーパス経営を取り入れた企業の事例を紹介します。社会貢献や、企業価値の向上につながった事例を見ていきましょう。

世界的総合電機メーカーの事例

世界的に知られる総合電機メーカーは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」というパーパスを策定。コロナで制約が増えストレスの溜まっている人々のために、新たなゲーム機の発表や映画の公開などエンタメ業界に貢献しました。

さらに基金を立ち上げてコンサートや映画・テレビ番組の中断で影響を受けたクリエイティブコミュニティの支援を行い、コロナ禍にもかかわらず過去最高益を達成しました。パーパスを策定することにより、コロナ禍でも社員の意識を統一できた例です。

国内大手食品会社の事例

日本の食品企業は、「確かなグローバル・スペシャリティ・カンパニー」をビジョンに掲げ、2020年までに食品業界での世界トップ10入りを目指していました。しかし、そのビジョンの実現が困難と予測され、パーパス経営に舵を切ることに。経済価値だけではなく、社会価値も同時につくる取り組みを行うことで、企業のビジョンを実現することを目指しています。

パーパスの策定には2年以上の時間をかけ、パーパスやビジョンを従業員に自分事として捉えてもらうために、従業員との対話を重ねました。現行のパーパスの他に、企業価値の向上に向けたさまざまな取り組みを展開しています。

パーパス経営で社会貢献につながる経営を目指そう

パーパス経営は自社の存在意義を再考し、社会貢献を中心に据えた経営モデルです。イメージ向上にもつながるため、取り入れる企業も増えています。パーパス経営の成功には、パーパスを明確にして従業員への意識づけを浸透させるのが鍵。実際に企業イメージが上がり、従業員のモチベーションが上がった例もあるため、ぜひ経営の参考にしてみてください。    

※記載の情報は、2024年2月時点の内容です。