2024年5月31日 更新

【基本】AIOCRとは?OCRとの違いや導入のメリット、成功事例をわかりやすく解説

AIOCRとは、文字の読み取りが可能なOCR(光学文字認識)とAIを組み合わせた技術のこと。手書き文字や非定型フォーマットの文書も読み取れるようになり、業務効率化が叶う技術として注目されています。この記事では、AIOCRの基礎知識、機能やOCRとの違い、導入のメリットを解説します。AIOCR導入の成功事例も紹介するので、参考にしてみてください。

AIOCRとは

OCRとは、「Optical Character Recognition」の略語で、「光学文字認識」と訳されます。OCRの技術にAIを組み合わせたのがAIOCR。印刷された文字などをカメラやスキャナで読み取り、文字データに変換する技術です。

人間は印刷された文字や手書きの文字を無意識に認識できますが、コンピュータは自動に読み取れません。そのため、人間が読み取ってから文字としてデータ入力をする必要があり、作業の効率が良いとは言えないでしょう。そこで、AIとOCRを組み合わせることで、機械学習による文字の認識が飛躍的に向上。手書きの文字や非定型フォーマット文書の読み取りも可能となりました。

【比較】AIOCRとOCRとの違い

AIOCRとOCRの大きな違いは、文字の読み取り精度の高さです。手書きや非定型フォーマットの文書も読み取れるようになるため、大幅な業務効率の改善が期待されています。AIOCRとOCRの違いを比較してみましょう。

文字情報の学習機能

大きな違いと言えば、先述したようにAIを組み合わせて機械学習ができることです。AIのディープラーニングにより、筆跡の特徴も認識できるようになりました。OCRの場合、認識させるためには印字である必要があります。AIOCRの導入により手書きの文字が読めるようになるため、入力業務の負担を大幅に削減できます。

文字の識字率

AIにより文字の識字率が向上したこともOCRとの違いです。OCRでは、決められたパターンでしか識別ができませんでした。対してAIOCRならAIにより読めば読むほどデータが蓄積されるので、識字率も上がります。手書きの場合でも高い精度で読み取れるようになります。

非定型フォーマット文書の読み取り

AIOCRは非定型のフォーマットで作成された文書が読み取れるのも、OCRと違う特徴です。OCRでは帳票ごと読み取る範囲をレイアウト上で設定する必要があります。帳票は取引先ごとにフォーマットが異なるため、一つずつ設定するのは手間がかかる作業です。AIOCRでも設定が必要な場合がありますが、OCRに比べると負担は少なく大幅に業務効率がアップします。

業務システム・RPAと連携

OCRを使えば、会計システムなどと連携して作業の効率化ができますが、AIOCRはさらにRPA(Robotic Process Automation)との連携も可能です。RPAとは、人間が行う手作業をコンピュータ上で自動化して行う技術のこと。抽出データの入力や集計、出力といった業務の自動化が可能になり、さらなる業務の効率アップが期待できます。

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AIOCRを導入するメリット

AIOCRは手書きの文字まで正確に認識できるようになるため、今まで人間がやっていた入力や確認の業務の負担が減ります。紙ベースの書類をデジタル化でき、管理がしやすくなるのもメリットです。ここではAIOCRのメリットを紹介します。    

入力や修正業務の省力化

AIOCRは文字の読み取り精度が高いため、入力業務の効率が格段に上がります。手作業でデータ入力する場合、打ち間違いをすることもありますが、AIOCRを使えば人為的なミスを減らせます。それにより目視によるチェックや修正作業も減らすことが可能です。入力作業の担当者は他の業務に取りかかれるため、会社にとっても大きな利益になるでしょう。

ペーパーレス化の実現

AIOCRを導入して紙の書類をデジタル化できるため、ペーパーレスが可能に。手書きの帳票や名刺なども、AIOCRで読み取れば整理や管理も容易です。デジタル化したものはクラウド上に保管すればアクセスしやすくなり、紛失する可能性も減るでしょう。今までの書類の保管スペースを有効活用できるのもメリットです。

情報のデータベース化・一元化

AIOCRで読み取りデジタル化した資料は、データベース化することが可能です。情報がデータベース化・一元化されると、紙ベースの書類では時間と労力を費やしていた検索や共有作業が容易になります。手書きのノウハウやマニュアルなどがあれば、デジタル化することでスムーズな作業が行えるようになるでしょう。

AIOCRの種類

AIOCRには、汎用×定型フォーマット型、汎用×非定型フォーマット型、業務特化×非定型フォーマット型の3種類があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

汎用×定型フォーマット型

汎用×定型フォーマット型とは、読み取る帳票の種別は汎用、フォーマットは定型のタイプです。帳票のフォーマットを事前に定義し、書かれている箇所や文字列を指定して情報を抽出します。抽出精度は高いですが、帳票のフォーマット定義は自動でできないため、準備に時間がかかることも。またフォーマット定義済みの帳票しか認識しないので、フォーマットの数だけ定義を変える作業が発生します。  

汎用×非定型フォーマット型

読み取る帳票は汎用、フォーマットが非定型のタイプです。AIにフォーマットを学習させれば、フォーマットの定義をしなくても読み取りができます。新しいフォーマットの場合、認識の精度が落ちるため、AIに学習させる時間が必要です。

業務特化×非定型フォーマット型

帳票の種別が特定種別に限定され、フォーマットが非定型のタイプは、あらかじめAIにフォーマットの学習をさせます。人間が学習する必要はなく、多くの種類のフォーマットを読み取ることも可能です。

業務特化×非定型フォーマット型は、納品書や請求書などの帳票の認識に使われることが多い傾向です。帳票に書かれてある情報の他に、仕訳データなども抽出できます。また業務システムと連携して効率的に作業を進めることも可能です。

AIOCR導入の成功事例

AIOCRはさまざまな企業や公的機関で導入が始まっています。最後にメーカーのFAX受注や自治体の給付金申請にAIOCRを導入して、業務の効率化を実現した事例を紹介します。

【メーカー】FAX受注の入力業務を効率化

大手産業用金具メーカーでは、AIOCRの導入により受注データ入力の作業時間を削減することに成功しています。8,000種類以上の商品の60%をFAXで受注していましたが、全国12拠点でAIOCRの導入を開始。FAXの受注内容をAIOCRで処理することで、年間5,000時間の入力作業時間を削減できました。  

【自治体】AIOCR×RPAで給付金をスピーティーに

ある自治体では、AIOCRとRPAを連携させて、新型コロナウイルスの特別定額給付金の申請書類の入力作業を実施。市民から受け取った書類を確認して、システムに入力するだけの単純な作業ですが、約7万8,000世帯の書類を限られた職員で短期間のうちに処理する必要がありました。AIOCRとRPAを導入することで数倍のスピードで作業が進み、速やかな給付へとつながりました。

AIOCRとは業務効率化を加速させるOCRより精度の高い技術

OCRにAIを組み合わせたAIOCRは、識字率の精度が上がるだけではなく、手書きの文字も読み取れる画期的な技術。AIに学習させることで、いろいろな帳票のフォーマットにも対応できます。文字がデジタル化されるため、ペーパーレスや資料のデータベース化も進み、業務効率も格段に上がります。業務の効率化を向上させたい場合は、AIOCRの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

※記載の情報は、2024年5月時点の内容です。