2024年10月1日 更新

データマネジメントとは|メリットや進め方、成功のポイントを解説

データマネジメントとは、企業が保有するデータを適切に管理・活用することです。組織全体にかかわるため部署を超えて理解を得る必要がありますが、適切に実施すれば業務の効率化や顧客満足度の向上につながります。この記事では、データマネジメントの意味やメリット、効率的な進め方、成功のポイントを解説します。

データマネジメントとは?

データを継続的かつ適切に管理することで、有効活用を目指すデータマネジメント。まずは詳しい意味と構成要素、必要とされる背景について紹介します。

データマネジメントの意味

データマネジメントとは、必要な場面で目的に応じたデータを円滑に活用できるよう、継続的に維持・管理することです。DAMA International(国際データマネジメント協会)では、データマネジメントについて【データとインフォメーションという資産の価値を提供し、管理し、守り、高めるために、それらのライフサイクルを通して計画、方針、スケジュール、手順などを開発、実施、監督することである。】と定義しています。

つまりデータマネジメントには、データの登録や更新だけではなく、膨大なデータを蓄積するためのシステムの構築やセキュリティ管理、品質の管理やそれにかかわる取り組みなども含まれます。

データマネジメントの構成要素

DAMA Internationalでは、データマネジメントに必要な基礎概念を11の領域に分けて定義しています。データマネジメントの効果を最大限に発揮させるには、これらの領域を総合的に管理することが重要です。

知識領域 詳細
データガバナンス データに関する意思決定の方法やデータ統制のための活動
データアーキテクチャ データマネジメントの目的を明確化した戦略の策定・計画
データモデリング 各データの関連性を明確にしたデータマネジメントプロセスの可視化
データストレージ・オペレーション データ設計やデータシステムの実装基盤の構築
データセキュリティ セキュリティポリシーの制定やアクセス制御などによるデータ管理
データ統合と相互運用性 データの移動と統合に関するプロセス
ドキュメント・コンテンツ管理 ドキュメントや画像などのコンテンツ管理
参照データとマスターデータ マスターデータの一元管理
データウェアハウジングとビジネスインテリジェンス データを企業の意思決定に活用する、または課題解決や目的達成のために適切に組み替える
メタデータ管理 品質・一貫性・最新性・セキュリティを確保しながらデータを管理する
データ品質管理 データ品質の基準を定める

それぞれの領域の中で自社の弱い部分を強化すると、効率良くデータ資産を活用できるでしょう。

データマネジメントが必要とされる背景

データマネジメントが必要とされる背景には、あらゆる情報のデジタル化により、企業が取り扱うデータの種類や量が増加し、管理が難しくなってきているという理由があります。

適切にデータベースを整理しておかないと、必要なデータがどこにあるかわからない、データの重複により正しい分析が行えないなど、業務に支障が出ることも。さらに乱雑な管理により万一情報が流出してしまうと、企業の信頼を失ったり、損害賠償責任が生まれたりというリスクが生じます。

データマネジメントのメリット・デメリット

データマネジメントを実施すれば、業務の効率化や新規ビジネスの創出につながりますが、適切に運用するためには組織全体の理解を得るのが課題です。データマネジメントのメリット・デメリットを押さえて対策を立てましょう。

メリット①業務を効率化できる

データマネジメントにより、さまざまな業務の効率化が可能です。例えばデータの統合やデータ同士の関連付けなどを行いデータ整理をしておけば、業務で必要な情報を簡単に見つけられるようになります。無駄な手間を省くことで、業務効率が向上するだけではなく、本来の業務に集中できるようになるでしょう。

メリット②データのセキュリティが強化できる

データが適切に管理されていると、情報流出などのセキュリティリスクを減らせます。企業が保有するデータには、企業秘密や個人情報を含むものが多く、これらを保護することは重要事項のひとつです。データマネジメントの一環であるデータ取り扱いのルールやセキュリティポリシーの策定、アクセス権限の設定などを行い、データを細かく監視・管理することにより、セキュリティを強化できます。

メリット③新しいビジネスチャンスを創出できる

データマネジメントによって、データを整理、分析すれば、顧客理解が深まりニーズを可視化できます。これは、顧客満足度の向上につながるだけではなく、新しいビジネスチャンスが生まれるきっかけにもなるでしょう。より確度の高い施策を打ち出すことや、迅速な意思決定が可能になり、競合他社より優位に立てるかもしれません。

デメリット①運用許可が下りづらい

データマネジメントの目的を明確にしないと、組織内で運用許可を得るのは難しいでしょう。データはいくつかの部署やチームをまたいで所有されるものが多いため、上層部を納得させることはもちろん関係部署の協力も必要です。まずは現状を把握して適切な目的を考え、組織にもたらすメリットをわかりやすく提示できるようにするのが第一歩です。

デメリット②全社に浸透するのに時間がかかる

データマネジメントは、社内全体で取り組むことで最大効果を発揮できますが、はじめから必要性を理解してもらうことは難しいものです。そのため社内全体でデータマネジメントに向けて連携するのは、時間がかかるかもしれません。いきなり全社で取り組まず、少ない人数の部署や小さなチームからデータマネジメントを始めるのもひとつの方法です。

データマネジメントの効率的な進め方

データマネジメントを効率的に取り入れる方法を4ステップで紹介します。自社でデータマネジメントの導入を検討している人はぜひ参考にしてください。

STEP①目的を明確にする

はじめにデータマネジメントの目的を明らかにすることで、適切なマネジメントが行えるようになります。まずは現状どのようにデータを収集・蓄積し、活用しているかを整理し、課題点を見つけましょう。そしてどのような状態が理想かを考えることで、目的が明確になります。

データマネジメントが有効となれば、早い段階で上層部、経営層の許可を得ておくことも大事です。

STEP②ガバナンスルールを策定する

いきなり複雑なポリシーを作ると現場に混乱がおきるため、データの取り扱いについての基本的なルール設定から始めると良いでしょう。まずはどのようなデータを保持し、どのようにして安全に保ち、誰がアクセスできるのかなど、簡単なガイドラインを策定します。

例えばアクセス権限については、社外の人でも閲覧できる「公開用データ」、従業員のみが閲覧できる「社外秘データ」、一定の職位以上の人が閲覧できる「機密データ」といったように分けて運用する方針を決めるといったこともデータマネジメントの一貫です。

STEP③必要なシステムを構築・実装する

データマネジメントを実現するために、必要なシステムを構築・実装します。近年、企業で取り扱うデータ量は膨大です。手作業では整理しきれないデータを自動処理できるようなシステムを実装すると、迅速なデータ活用が行えます。シンプルで低コストなツールの利用から始めるのもおすすめです。

STEP④組織に周知し運用開始する

準備が整ったら、組織に浸透させるためデータマネジメントの重要性やルールの説明などの教育を実施します。運用開始後は、データマネジメントの効果をモニタリングし、目的通りに運用されているか評価を行うことも重要です。必要があればルールの見直しや修正、定期的なアップデートを加え、適切に維持・管理していきましょう。

データマネジメントを成功させるポイント

データマネジメントの効果を最大限に発揮するための3つのポイントを紹介します。計画を立てる際にぜひ意識してみてください。

目的を設定してから進める

データマネジメントの目的を設定していないと、データを収集するだけに留まり有効に活用できません。データを有効活用するためには、あらかじめデータをどのような目的でどのように活用していくのかを決めておくことが重要です。ゴールや方向性を示すことができれば、組織全体の協力も得やすくなるでしょう。

スモールスタートで試験運用する

データマネジメントの準備が整ってもいきなり全社展開をするのではなく、特定の部署などで小規模に始めるのがコツです。すべての領域で同時にデータマネジメントを始めても、社内の混乱を招くだけであまり効果は得らません。小規模に始めることで、問題発生時のリスクを最小限に抑えられたり、組織全体に理解を行き渡らせる時間を作ったりもできます。

継続して運用を行う

データマネジメントは一度実施して終わりではありません。適切に活用していくには、データは常に最新の状態にしておき、定期的に見直し・改善を行う必要があります。目的を見失い「やっている」だけの状態にならないよう、目的意識を持って運用していくことが大切です。

データマネジメントでビジネスチャンスを広げよう

高度情報化社会を生き抜く上で欠かせないデータマネジメント。効果的に運用するにはデータマネジメントの基礎的な概念や手法を知っておくことが重要です。データマネジメントを正しく導入すれば、大切なデータを適切な場面で使えるようになり、新しいビジネスの創出につなげられるかもしれません。データ資産をうまく活用できていないと感じるなら、データマネジメントの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

※記載の情報は、2024年10月時点の内容です。

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