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企業は日々さまざまなデータを収集していますが、経営戦略や営業における成功のためには、これらのデータを効果的に活用していくことが重要です。こうした理由から近年注目を集めているのがBIです。具体的にはどのような役割を果たすのか、機能や導入によるメリット、注意すべきポイントなどを網羅しました。
企業のデータ活用に
欠かせないBI
BIとはビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)の略語で、企業が保持する様々なデータを収集・分析し、経営における意思決定や営業戦略に活用する技術やプロセスを指します。
もともとはアメリカの調査会社であるガートナー社のアナリスト、ハワード・ドレスナー氏が1989年に「事実に基づく支援システムを用いてビジネス上の意思決定を改善するための概念および手法」として提唱したもので、現在ではあらゆる経営判断の質を向上するため、企業が保持するデータを可視化して活用する仕組みを意味する言葉として用いられています。
企業のデータ活用というと、データサイエンティストやデータアナリストなど一部の専門職の領域というイメージがある人も多いかもしれません。これに対し、BIはデータや分析結果などをレポートやグラフなどの資料としてまとめ、経営判断に役立てることを想定しています。そのため、専門家でない人に対してもデータが分かりやすく可視化されているという特徴があります。
現代のビジネスにBIが
必要とされる理由
BIはアメリカでは比較的古くからある概念でしたが、日本で注目を集めるようになったのは最近のこと。その背景には、現代のビジネスにおいて、業務用のITシステムが一般化してきたことがあります。
売り上げやコストを把握管理する業務管理システム、マーケティングや営業戦略策定に欠かせない顧客管理システム、製品の在庫や出荷を管理する商品管理システムなど、私たちは日々さまざまなシステムを用いて業務を進めています。あらゆる業務に浸透しているため、もはやこうしたシステムなしに仕事をすることは不可能といっても過言ではないでしょう。
これらのシステムには、ただ業務効率を向上するだけでなく、さまざまなデータを収集するという役割もあります。自社の業績の推移や、どの商品がどのような層に売れているかといったマーケティングデータ、SCMにおける需給データ。これらはいずれも企業にとって非常に重要なデータで、経営における意思決定を下す際の指標となるものです。
業務用のITシステムがまだあまり一般的でない時代は、これらのデータを収集・活用している企業もまだあまり多くなく、経営判断にも経験や直感の入る余地がありました。しかし、現代では経営においても、データに基づいて精度の高い判断を下すことが求められており、ビジネスの成功を大きく左右する要因にもなっています。競合他社はデータに基づいた経営判断を行っているのに、自社だけが経験や直感で判断を下していたとしたら……近い将来、大きな差となって現れることは想像に難くないでしょう。BIはデータに基づいた的確な判断を下すために、現代のビジネスになくてはならない取り組みなのです。
データを効率的に活用するには
BIツールが欠かせない
BIに取り組むうえでは、日々さまざまなITツールによって収集されているデータを俯瞰的に分析し、それに基づいて意思決定を行うことが重要です。しかし、これら経営判断に必要なデータはさまざまなフォーマットで社内のあらゆる場所に散在しているものです。データの分析はもちろん、単純に収集・集計するだけでも手間がかかるため、重要とは理解していてもなかなか思うように活用できていないのが現状ではないでしょうか。
こうした場合に、ぜひおすすめしたいのがBIツールです。BIツールとは名前の通りBIの取り組みを支援してくれるツールで、社内に散在するさまざまなデータを収集・管理し、現状の把握や分析ができるよう資料としてまとめてくれる役割を持っています。
社内の様々なシステムに蓄積されたデータを固有のダッシュボードやExcelでそのまま読み解くのは、データの専門家であっても難しく、誰もが簡単にできることではありません。こうした場合でも、BIツールを利用することで複数のデータを横断したグラフや表として分かりやすく可視化され、専門的な分析知識がなくても現状把握や分析が可能となります。
BIツールには、主に以下のような機能があります。
①データ管理
BIツールは、社内で使用するさまざまなシステムのデータを収集し、経営判断に役立てるデータとして一元化する役割があります。例えば、ある商品の販売戦略を立てたい場合には商品管理システムから売上データを、また顧客管理システムからどのような層へ販売実績があるかのデータを収集し分析することになります。このため、BIツールには各システムと連携し、データを管理する機能が必要になります。
②分析・集計
社内のさまざまなシステムから収集したデータは、必ずしもそれだけで分析に使えるわけではありません。顧客リストを例にとってみると、総務部が管理するリストと、マーケティング部のリストは、同じ顧客リストであっても、必要な情報の種類や量が異なるため、蓄積されているデータの項目が異なる可能性があります。そのため、2つのリストを集約する際は重複や差分を整理するだけでなく、経営判断の材料になるようなデータを埋め合わせていく必要があります。
また別の例として、ある商品の売り上げが下がっていたとしても、季節的な要因で売れなくなっているのと、製品のライフサイクル起因で売れなくなっているのとでは、とるべき販売戦略は異なります。この場合、ただ売上データを見るだけでなく、その背景となるデータを一緒に分析しないと正しい判断は下せません。このように、分析に必要なデータを付与し、データの裏に隠れている情報を分析できるよう抽出するのもBIツールの重要な役割といえます。
社内に散在するさまざまなデータを活用するポイントについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
③レポーティング・可視化
BIツールは社内のさまざまなシステムからデータを収集してくれます。これらは経営判断を行ううえで非常に重要なデータですが、企業規模によっては膨大な量を多岐にわたる部門から集めることになるため、ただ数字の表を並べるだけでは、現在何が起こっているのか、何を意味しているのかが読み取りにくくなってしまいます。
BIツールには、こうした場合でも情報が読み取れるよう、データを必要に応じてレポートにまとめ、可視化・ビジュアル化してくれる役割もあります。特に経営陣にとって時間は常に限られており、短い時間でも正確で精度の高い判断をしていくことが求められています。BIツールを用いて情報を自動的に可視化することで、分析したデータをすばやく、そして正確に読み取るためのサポートをすることができるのです。
上記のように、BIツールには主に①データ管理②分析・集計③レポーティングなどの機能がありますが、なかには特定の機能に特化したものもあります。導入する際は、どのような情報を集め、どのように運用したいかを検討したうえで、適切なツールを選ぶことが重要です。
経営判断の指標となる精度の高いデータをまとめるポイントは、以下の記事でも詳しく紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
BIツールが活用されている場面
ビジネスにおいてさまざまな役割を果たすBIツールですが、実際にはどのような場面で使われているのでしょうか。具体的な活用シーンをいくつかご紹介します。
経営支援データの分析
BIツールを活用する場面としてまず思い浮かぶのは、経営判断のためのデータ分析ツールとしての役割です。経営判断を下すためには、売上データや財務状態などのデータをタイムリーに、かつ迅速に把握する必要があります。
こうしたデータを収集するため、従業員がExcelなどのソフトを用いて手作業で集計する姿も見かけますが、企業規模に比例してデータは膨大な量になり、時間も手間もかかります。また手作業の集計はミスが起こりやすく、データ精度の点からも問題があります。BIツールを活用することでこうした問題を解決し、最新の情報をもとにスピーディーな経営判断を行うことができます。
営業戦略のためのデータ分析
商品の売上状況を分析し、営業戦略を立てるのもBIツールの代表的な使い方のひとつです。営業戦略を立てる際は、ただ商品の売上データだけではなく、曜日や季節の行事などのカレンダー、天候、社会的なニュースなどさまざまな要因を考慮しておく必要があります。
あくまで一例ですが、雨の日に特定の商品がよく売れているなどの実績があった場合、その理由を細かく分析することでさらなる売り上げにつなげることができるかもしれません。
顧客の購買活動分析
マーケティングなどでよく行われている顧客の購買活動分析もBIツールが得意とする分野です。どの顧客にどの商品が、どういった頻度で売れているか。また、一回の購入金額や購入チャネル(ECサイトか店舗かなど)を分析すれば、プロモーションの方向性を考える重要な資料となるでしょう。
こうした顧客行動分析はマーケティング分野では一般的に用いられているものです。BIツールの活用により経営層もこうした分析ができるようになれば、意思決定の幅も広がるのではないでしょうか。
商品管理データの分析
小売業の場合、商品の売り上げだけでなく在庫管理も重要な課題になってくるでしょう。BIツールを使うことで、各店舗の在庫量を分析し、適正な在庫量になっているかどうか、過剰在庫になっている商品はないかなどを分析し、在庫管理に役立てることもできます。
また、商品ごとに売上高や販売個数、利益率などをもとに優先度を付与し、それに基づいて在庫管理を行うといった方法もあります(ABC分析、重点分析)。こうすることで、面積の小さなテナントに出店する場合に優先すべき商品や、重点的に在庫すべき商品などを把握することができます。
生産管理ツール
社内のさまざまなデータと連携できるというBIツールの特性を生かせば、製造業における生産管理ツールとして活用することもできます。例えば、特定の商品の原材料や製造工程、ロット番号、発送先などをまとめてデータ化することで、商品のトレーサビリティが実現できます。同様に、納品後(販売後)の故障率や不良率をデータとして管理しておけば、問題があった場合にどの工程で原因があったのかを分析する際にも役立ちます。
BIを活用する4つのメリット
BIは企業が収集するさまざまなデータを活用するうえで欠かせない仕組みといえるものです。導入することで、具体的に以下のようなメリットがあるとされています。
①社内に散在するデータを横断的に活用できる
BIに取り組む際は社内のあらゆるデータを収集し、横断的かつ俯瞰的に分析する必要があります。しかし、こうしたデータはさまざまな部署、もしくはプロジェクトの担当者が個別に管理しているのが通常で、まずは分析に使えるよう一カ所に集約する作業が必要になります。
また、データ形式もWordやExcelなどの一般的なファイルフォーマットばかりとは限りません。テキスト形式のログファイルやJSON形式の場合もあれば、社内で業務に使用しているITシステムの独自形式の場合もあるかもしれません。またJPEGやTIFFなどの画像データでしか残っていないケースも考えられます。こうしたデータを手作業で集約するのはかなりの時間や手間が必要で、いかにも非効率です。
BIツールにはこうした異なる形式のファイルを集約し、ITシステムとのデータ連携機能を備えています。社内のあらゆる部門に散在するデータをファイル形式に関わらず収集でき、さまざまな情報をもとにした多角的な判断を下すことができるようになるのがBIを活用する大きなメリットといえます。
②専門的な知識がなくてもデータが読める
仮に手作業で社内に散在するデータを収集することができたとしても、その多くはそのまま経営判断に生かすことはできません。ただただ数値だけが並ぶ表データやテキストデータなどが並んでいても、その関連性を理解してデータを読み解くのは至難の業で、通常は専門的なデータドリブンの知識が必要になります。また、商品の売上高などの数字であればすぐ理解できても、複雑な数式によって算出された専門的な数値などは理解するのにさらに時間がかかるでしょう。
BIツールはこうした場合に、データを一ヶ所に集めるだけでなく、分かりやすくグラフ化したり関連情報を紐付けたりするなどして、データの理解を助けてくれるメリットもあります。ツールを使い始める段階で設定やチューニングは必要ですが、エンジニアやアナリストなど専門家以外にも分かりやすく、見やすい形でデータがまとめられるのもBIツールが欠かせない理由のひとつです。
③リアルタイムに分析でき問題の早期発見につながる
人の手で社内のデータをまとめる場合、作業ミスによるデータ精度の低下も心配ですが、同時に作業時間がかかることでデータの鮮度が失われるという問題もあります。主力商品の売り上げを左右する大きな問題が社内で起こっているのに、その判断を下すのに必要なデータをまとめるのに1週間もかかっていたとしたら……。重要な判断を1週間前のデータに基づいて下すことになり、効果的な問題の解決にはつながらないばかりか、そもそも判断の意味すらなくなるリスクがあります。
BIツールは社内のさまざまな部署やシステム内に散在するデータを、定期的に収集することができる機能を備えています。そのため、今すぐデータが必要になった場合でも最新のデータを参照し、重要な判断の指標とすることができます。社内で問題が生じた場合でも、その原因をすぐに発見できるため、傷口が浅いうちに迅速に対応することができます。こうしたスピーディーな意思決定が可能になるのもBIツールを利用する大きなメリットです。
④レポート作成の手間が軽減
BIツールには、社内レポート作成のための手間を軽減することができるというメリットもあります。今後の経営方針や社内の課題、トラブル対応などの報告書を作成するためには、データを分かりやすく表やグラフにまとめ情報を整理していく必要があります。しかし、こうした作業はいうまでもなく時間や手間のかかるもの。他のタスクを抱えながら、手早く質の高いレポートを仕上げるのは簡単なことではありません。
データを分かりやすく可視化する、情報をまとめるといった作業は、そのままBIツールの得意分野でもあります。これまで手作業で収集・集計していたデータを半自動でまとめてレポート化してくれるため、作業の手間が大幅に削減できることはもちろん、より精度が高く多角的な分析によるレポート作成が可能になるでしょう。
BIツールを導入するうえで注意すべき3つのポイント
膨大なデータを効率的に活用するうえで欠かせないBIツールですが、ただ導入さえすればいいというわけではありません。活用しきれず導入が失敗に終わった、そんなことにならないよう注意すべきポイントもあります。
ツール導入の目的を設定する
どのようなツールでも同じですが、目的もなく、ただまわりの企業が使っているからという理由でツールを導入しても意味はありません。「分析したデータを経営の意思決定に活用したい」といっても、データ分析が必要な経営課題がなければ特にデータを集約する必要はないでしょう。同様に「社内に散在する情報を可視化したい」といっても、可視化した情報をどう運用するかが決まっていなければ、ただ導入するコストや手間を増やすだけになってしまいます。
BIツールはただ導入するだけで企業に利益をもたらしてくれるツールではありません。可視化してまとめた情報をどう活用するかは、あくまで使う側の判断です。社内のどこに問題があり、何を改善したいのか、何のために情報をまとめて分析するのかといった目的が明確になっていないと、BIツールを導入しても誰も使わなくなり、いずれ形骸化してしまうでしょう。導入前には少なくとも「誰が使うのか」「どのような目的で使うのか」の2点は明確にしておく必要があります。
分析に必要なデータがそろっているか確認する
BIツールを導入する前には、どのようなデータを何のために分析するのかを明確にしておく必要がありますが、同時にその分析に必要なデータが社内に存在しているかも確認しておきましょう。例えば「ある商品の売り上げが低下しているので改善したい」という場合は、その商品の売上データはもちろん、類似商品の売上データやどのような層に売れているか、他店舗の同商品についての売上データくらいは収集しておかないと十分な分析はできません。
前項のツールの導入目的とも重なる部分がありますが、データを分析する際は、解決すべき課題に合わせて必要なデータも変わります。当然ながら「導入するだけで完璧なデータ分析ができる」わけではないため、課題を解決するためにはどのような分析が必要か、またそのために必要なデータは何かをしっかりと踏まえたうえで導入することが大切です。
収集しているデータとの連携が可能かどうか
社内に散在するデータの活用という視点でいえば、分析に必要な情報がそろっているかどうか以外に、日々データを収集している業務用のITシステムとBIツールの連携が可能かどうかも確認しておく必要があります。BIツールは基本的に業務管理システムや顧客管理システム、商品管理システムなどのITツールとの連携を考えて設計されていますが、必ずしもすべてのツールと互換性があるわけではありません。また、なかには他ツールとの連携よりも情報管理やレポーティングに特化したBIツールもあるため注意が必要です。
いくら社内のデータを横断的に、かつ俯瞰的に収集・分析できるBIツールでも、肝心のデータ同士が連携できなければ意味がありません。分析に必要なデータ(ツール)が連携できるかどうか、必ず導入前に確認しておきましょう。
社内に散在するさまざまなデータとBIツールの連携については、以下の記事でも詳しく紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
BIはビジネスの優位性を築く最善の一手に
業務管理システムや顧客管理システム、商品管理システムなどの業務用のITツールが一般化したことで業務の効率性は大きく改善され、結果として企業間の競争はますます激化しています。こうしたなか、システムが収集しているデータを経営判断に生かし、競合他社に対してさらなるアドバンテージを築こうとする動きが出てきたことは、ある意味では必然ともいえるでしょう。
BIはこうした取り組みには欠かせないツールで、経営判断にスピード感と精度をもたらしてくれるものです。特に今、競合他社との差別化やビジネスの優位性を築くための方法を模索している企業にとっては、最善の一手となる可能性があります。まずは自社の課題を可視化し、BIによりどのような改善が可能か洗い出すことから始めてみてはいかがでしょうか。