キャリアデザインとは|必要とされる理由や設計方法、企業の具体的な支援策
キャリアデザインとは、将来のビジョンを明確にして、キャリアを自分が主体的になって設計すること。社会情勢や働き方の変化に伴い、将来を見越してキャリアデザインを描くことはビジネスパーソンにとって重要です。また従業員のキャリアデザインをすることは、企業にとってもメリットがあります。キャリアデザインの意味や必要とされる背景、企業がキャリアデザインを支援するメリット・デメリットや、支援策について紹介します。
キャリアデザインとは?
まずはキャリアデザインの意味を解説します。似た言葉であるキャリアパスやキャリアプランとの違いも押さえておきましょう。
キャリアデザインの意味
キャリアデザインとは、自分主導で自らのキャリアを構想(デザイン)することです。自分が将来どんな仕事をしたいかや働き方をしたいかなどのビジョンを明確にして、自分の職業人生を設計し、実現に向けて取り組むという意味があります。必ずしも仕事に関することだけでなく、仕事を通じてプライベートも含めた人生全般を設計することを指します。
キャリアパスやキャリアプランとの違い
キャリアデザインと似た言葉に、キャリアパスやキャリアプランがあります。
キャリアパスは、経歴の意味を持つ「Career」と道の意味を持つ「Path」を組みあわせた言葉。目標とする役職や職務を決め、そこに向かってステップアップするための道筋のことです。キャリアデザインは主体性が重視されますが、キャリアパスは企業が従業員に育成計画を提示する場合もあり、主体性は問われない点が異なります。
キャリアプランは、どのように自分が今後働いていくか計画を立てることです。キャリアデザインとの違いは、プライベートの計画が含まれない点です。
キャリアデザインが必要とされるようになった理由
キャリアデザインが必要とされるようになったのは、社会の大きな変化によって、企業と個人の働き方に対する考え方が変化してきたためです。キャリアデザインが注目を集めている理由について、詳しく解説します。
1.社会情勢の変化
キャリアデザインが注目されるようになった理由の1つは、IT技術の進化や産業構造の変革に伴う社会情勢の急激な変化です。現在は、「VUCA時代」と呼ばれる先行きが不透明な時代。将来の予測が難しくなったため、企業や従業員の価値観にも変化が起きました。さらに平均寿命が延びたことでライフプランの見直しも迫られるようになったことで、キャリアデザインに注目が集まっています。
2.企業の求める人材像の変化
企業が求める人材像が変化してきたことも、キャリアデザインが必要とされる理由です。これは、グローバル化やAIによる業務効率化も進むなか、企業には競争力が求められるようになってきたからです。企業が競争力を上げるには、人材力の向上が不可欠です。
以前の日本は終身雇用や年功序列制度が当たり前の時代でしたが、現在は徐々に成果主義に移行してきています。新卒主義は減少し、より即戦力となる中途人材の採用が当たり前になり、人材の流動性が高まっています。今、企業に求められているのは、キャリアデザインを通して社内で自分に求められている役割を理解し、主体的に動いて高い成果を上げてくれる人材といえるでしょう。
3.個人の価値観の変化
個人の働き方に対する価値観が多様化してきたことも、キャリアデザインが注目されるようになった理由です。仕事が一番大切という考え方から、仕事もプライベートも充実させるためにワークライフバランスが重視されるようになってきました。
また、DX化やテレワークの普及により、働き方も多様化しています。今は、ありたい自分の姿を目指し、自分らしい働き方や生き方を自由に決められる時代。自己実現のためには、キャリアデザインが不可欠です。
キャリアデザインの設計方法5つのSETP
キャリアデザインは、これからの社会を生き抜くために欠かせない要素であるといえます。ここでは、キャリアデザインを設計する方法について紹介します。
STEP1.過去の自分を振り返る
最初に、担当した業務を担当やその時に感じたことなど、過去の振り返りを行います。以下の点について洗い出しましょう。
- 経験した業務
- やりがいに感じたこと
- 嫌だったこと
- 困難に対する行動
STEP2.現在の自分について把握する
最初に、現在の自分について正しく把握することが大切です。保有している資格やスキル、経験、強みなどを洗い出しましょう。検査やテストなどを受けて、適性についても把握するのもおすすめです。さらに、上司や同僚などにフィードバックをもらい客観的に自分のことを分析するのも効果的。じっくり自己分析することで、不足しているスキルや弱みもわかります。
STEP2.なりたい自分を思い描く
次に現在の自分について正しく把握しましょう。保有している資格やビジネススキル、経験、強みなどを洗い出します。検査やテストなどを受けて、適性についても把握するのもおすすめです。
さらに、知識やスキルについて上司や同僚、後輩、お客様や取引先などにフィードバックをもらい客観的に自分のことを分析するのも効果的。じっくり自己分析することで、不足しているスキルや弱み、自分が求められているものもわかります。
<適性診断例>
- ストレングスファインダー:自分の強み(才能)を導き出す診断
- エニアグラム:思考や行動のパターンをスコア化し、どのような価値観で判断しているかがわかる
<自己分析>
- ジョハリの窓:自分と他者が認識している「自分」のズレが理解できる
STEP3.なりたい自分を思い描く
自己分析ができたら、次は将来のビジョンを思い描きます。やってみたい仕事やなりたい自分の姿について、具体的に考えます。仕事の内容についてだけでなく、理想の生き方や暮らし方から考えるのも良いでしょう。ポイントは自分らしさを重視することです。
<将来のビジョンの描き方の例>
将来の仕事の目標 |
なりたい自分の姿 |
例①ITコンサルタントとして活躍したい |
企業・取引先から信頼を得ている自分
|
例②IT関連の事業を立ち上げ社会課題を解決したい |
課題解決能力・マネジメント能力が身についている自分 |
STEP4.キャリアプランを立てる
STEP3で目標がクリアになったら、それに向けてキャリアプランを立てていきます。キャリアシートを作成すると、明確にしやすいでしょう。
例えば10年後に理想を叶えるなら、5年後の自分はどうあるべきか、3年後の自分はどうあるべきかなど逆算して考えてみてください。目標のために自分が今やるべき行動を明確にすればモチベーションを高められるはずです。
<STEP3例①のキャリアプラン>
年齢 |
業務 |
ポジション |
必要なスキル |
目標 |
26歳 |
ITエンジニア |
チームメンバー |
基本のプログラミングスキル |
基本のプログラミング言語を使えるようになる |
30歳 |
プログラマー |
チームサブリーダー |
・プログラミングスキル
・システム設計スキル
|
プログラミング言語を用いてシステムやソフトウェアを作成できるようになる |
37歳 |
ITコンサルタント |
マネージャー |
・コミュニケーションスキル
・プロジェクトのマネジメントスキル
|
クライアントのIT関連の課題解決を提案する |
STEP5.目標のためにやるべきことを明確にする
最後になりたい理想の自分に近づくために、何が課題かを考えます。課題解決のために、何をするべきかを挙げ、実際に行動を。ITエンジニアでいえば、必要なスキルを身につけるために実務を積むこと、キャリアアップするために資格を取得することなどが挙げられるでしょう。
企業がキャリアデザインを支援するメリットとデメリット
今、企業のなかでも従業員のキャリアデザインを支援しようという動きが多く見られます。企業がキャリアデザインを支援することにどんなメリットとデメリットがあるのかを見ていきましょう。
【メリット①】企業の人材力を高められる
企業がキャリアデザインを支援することは、人材力の強化につながります。キャリアデザインの軸がある従業員は、目標に向かって知識やスキルを身につけるための具体的な行動をとれるようになります。主体性もあるので高い成果をあげることが多く、会社にとっても人材価値の高い存在です。
キャリアデザインは個人でそれぞれ異なるので、多様な人材の確保にもつながります。多様性があり人材力の高い企業は、競争力も高いといえるでしょう。
【メリット②】若手社員の離職率を下げられる
若手社員にキャリアデザインをさせることで、離職率低下にもつながります。自身の目指すキャリアが明確になると、仕事に対する取り組みも主体的になり、仕事に対するモチベーションや会社へのエンゲージメントも向上するでしょう。
【デメリット】離職のリスクが高まる
キャリアデザインによって、離職のリスクが高まることがあります。希望の仕事や働き方が今の会社で実現できないと社員が判断した場合、離職を決断するかもしれません。従業員のキャリアデザインについて相談に乗れるよう、キャリアコンサルタントを配置するなどの体制づくりが必要です。
ただしステップアップのために辞職をした従業員がいても、その後、取引先として関係が続く可能性も。その場合はコネクションの確保につながるため、一概にデメリットだけとはいえないかもしれません。
企業のキャリアデザインの支援策
企業が従業員のキャリアデザイン支援をする場合、さまざまな方法があります。最後にキャリア支援の具体的な施策について紹介します。
キャリアデザイン研修
キャリアデザイン研修は、自分のキャリアを考え構築するための知識や手法をレクチャーする研修です。キャリアデザインは年齢やポジションによっても変化し、悩みも異なるため定期的に見直しが必要です。そのためキャリアデザイン研修も1度だけでなく、キャリアコンサルタントによる面談も取り入れ必要な時に定期的に行うのが良いでしょう。新卒や若手社員だけでなく中堅社員、管理職社員へのキャリアデザイン研修も有効です。
コーチング
コーチングとは、迷いが生じた時に答えを創り出すサポートをすること。キャリアデザインにおいて従業員に迷いが生じた時に効果的です。専任のコーチが、キャリアデザインに関するサポートを1対1で行ってくれる外部サービスを取り入れる他、コーチングのスキルや経験があれば上司や先輩がコーチを務めても構いません。コーチとともに自己分析やキャリア設計を行うことで、スムーズなキャリアデザインが叶います。
キャリア支援のための人事制度
従業員にさまざまな働き方を提供するための人事制度の導入も、施策の1つです。希望する部署への異動や、ポジションへのチャレンジを促進する制度で、下記のようなものが挙げられます。
- 異動自己申告制
- 社内公募制度
- 社内インターンシップ
- 社内フリーエージェント制度
- リモートワーク制度
- フレックス勤務
- ジョブリターン制度 など
柔軟な人事制度を導入することで、従業員が自分の新しい可能性を引き出したり、自分らしいキャリアを発見したりと、キャリアデザイン形成をサポートできるかもしれません。
キャリアデザインで目標を明確にしてキャリア形成に役立てよう
自分の将来を見越してキャリアを設計し、行動に移していくのがキャリアデザイン。明確な目標やビジョンを描くことで、目標を達成しやすくなり、その結果自身のビジネスパーソンとしての価値も上がるでしょう。企業にとっても、優秀な人材の確保ができるメリットがあるので、自身のキャリアデザインについて前向きに取り組んでみてはいかがでしょうか。
※記載の情報は、2024年7月時点の内容です。