2024年5月7日 更新

人工知能(AI)とは|仕組みや歴史、今後の展望をわかりやすく解説

人工知能(AI)とは、「人工的につくられた人間のような知能」のこと。AIは技術の変遷をたどり、近年の機械学習とディープラーニングの実用化によって、目覚ましい発展と進化を続けています。本記事では、AIの仕組みや歴史を踏まえ、今後の展望や身近な活用例、現在抱えている課題について解説します。

人工知能(AI)とは

人工知能(AI:Artificial Intelligence)は、「人間の知的ふるまいをコンピュータプログラムなどで人工的に再現するもの」といった意味合いで使われています。ただし、専門家ごとに定義が異なり、明確な定義付けがなされているわけではありません。

人工知能(AI)の仕組み

AIが近年急速に発展した背景として、機械学習とディープラーニング(深層学習)の研究の進展が挙げられます。機械学習はAIを支える技術の1つ、ディープラーニングはその機械学習の手法の1つであり、「AI>機械学習>ディープラーニング」といった関係性があります。これらの仕組みを、以下で簡単に解説します。    

機械学習の仕組み

機械学習では、データを繰り返し学習させることにより特徴や法則性を発見します。そして、その発見した内容に基づいて、予測や判断ができるようになります。

機械学習の主な手法とされるのは、学習データに正解を与えて学ばせる「教師あり学習」、正解を与えないで学ばせる「教師なし学習」、一連の行動の結果に報酬を設定し、試行錯誤してその報酬が得られる行動や選択を学ばせる「強化学習」などです。データ中のどの要素が結果に影響を及ぼすのかは、人間が判断・調整します。

ディープラーニングの仕組み

機械学習の仕組みの1つである、ニューラルネットワークという構造がディープラーニングの基本。ニューラルネットワークとは、人間の脳内にある神経回路をモデルにしたものです。入力層・出力層・隠れ層から成り、隠れ層が多層化しています。

隠れ層が複数あることで、より複雑な出力が可能に。人間が設計しなくても、コンピュータ自身が膨大なデータを読み解き、ルールや相関関係といった特徴を発見します。このディープラーニングにより、従来ではデジタル化するのが困難だった画像・自然言語・音といった非構造化データが学習可能になりました。

機械学習・ディープラーニングに使われるプログラミング言語「Python」については、こちらの記事をチェック↓

【2023年版】Pythonエンジニアの資格認定試験とは?おすすめの勉強法も解説

Pythonとは、システム開発を始めアプリやAIなど幅広い分野で利用されているプログラム言語です。近年の機械学習とAI開発の発展により、Pythonエンジニアへの需要が高まっています。本記事ではPythonの概要や資格取得のメリット、Pythonエンジニア向けの資格試験とその勉強法について解説します。

人工知能(AI)の種類

AIには、機能面で見ると特化型と汎用型の2種類があります。続いて、特化型・汎用型のAIについて解説します。

特化型AI

特化型AIは、個別の分野・領域に特化したAI。「弱いAI」とも呼ばれており、現在実用化されているのはすべてこのタイプのAIです。活用例として、画像や音声の認識、自動運転システムなどがあります。

汎用型AI

「強いAI」とも呼ばれる汎用型AIは、人間のようにさまざまな課題に対応できます。ただし、このAIの実現には、自ら学習し進化する能力が必要です。SF映画に出てくるような人間型のアンドロイドは、汎用型AIを搭載したロボットがモデルですが、まだ実在はしていません。

AIが未来において、人間を超越する存在になるといったAI脅威論(シンギュラリティ)もありますが、まだ人間の自然知能とAIの間には、埋められないほどの溝があります。

人工知能(AI)技術の歴史

AI技術は、1950年代からブームと冬の時代が交互に訪れてきました。現在は、第三次のブームとして注目を浴びています。ここでは、そんなAI技術の歴史を見ていきましょう。

第一次人工知能(AI)ブーム『探索と推論』

AIの概念が誕生したのは、1956年のダートマス会議です。そして1958年には、ニューラルネットワークの基盤、パーセプトロンが開発されました。この時代のAIは、明確なルールや定義づけがある課題に対して『推論』や『探索』が可能でした。ただ、ルールが不明確で複雑な課題は解けないことがわかり、第一次ブームが終わります。

第二次人工知能(AI)ブーム『知識表現』

1980年代には、ルールベースのエキスパートシステムが誕生。専門分野『知識』を取り込み、専門家のような推論や判断が可能になりました。しかし、コンピュータ自ら必要な情報を収集できないため、すべて人の手でコンピュータが理解できる内容にする必要がありました。特定の領域の情報に限定され、活用できる範囲の限界が分かり、AIの人気は再び下火になります。

第三次人工知能(AI)ブーム『機械学習』

2000年代に、ビッグデータを用いてAI自身が知識を獲得する『機械学習』が実用化されます。そして2006年には、AIが知識を定義する要素(特徴量)を自ら学習するディープラーニングが登場。

2012年の画像認識コンテスト(ILSVRC)では、ディープラーニングを用いたAIが他のAIを圧倒的に上回り、世界的な熱狂を巻き起こしました。そこから現在も、機械学習とディープラーニングに関する研究が継続されています。

人工知能(AI)の今後の展望

AIはこれからも進化を続け、他の技術と融合しながら活用範囲が拡大すると予想されています。また、コンピュータ処理性能の向上により、新たな技術革新も生まれるでしょう。

機械学習とディープラーニングがさらに進化・深化

今後も、機械学習やディープラーニングに関する技術の進化と深化が同時に進んでいくと言われています。新しい技術開発が進む一方で、従来から存在する手法を見直すことにより、高性能な技術も再登場しています。従来の手法と新しい手法のAIを適材適所で組み合わせることが、今後の活用法になるでしょう。  

他の技術やシステムとの融合が進む

AIと他の技術やシステムとの融合が進めば、さまざまな課題の解決がもたらされます。例えば、AIとロボットの融合で、人手不足の解消や危険区域での作業が可能に。今後、モバイルやウェアラブル、IoTといったシステムとも融合しながら、さまざまな分野での活用が拡大するでしょう。

コンピュータ処理性能がさらに向上する

将来的に、複雑な計算を短時間で処理できる量子コンピュータが実用化されることで、コンピュータ処理能力のさらなる向上が予想されています。2019年には、スーパーコンピュータで1万年かかる計算問題を、量子コンピュータにより3分20秒で解く実験に成功しました。

量子コンピュータとAIを掛け合わせることで、複雑な計算をもとにした技術革新や新たな発見が期待されています。

人工知能(AI)の主な活用例と課題

AIは私達の生活に、さまざまなメリットをもたらすようになりました。しかし、まだ多くの解決すべき課題があります。最後に、AIの現在の活用事例や抱えている課題について見ていきましょう。

人工知能(AI)の主な活用例

AIは以下のように、さまざまな分野で活用されています。

カテゴリー 人工知能(AI)の活用事例
自然言語処理 検索エンジン・翻訳ソフト・チャットボット・AIアシスタント
画像認識 医療用画像診断・製造業の検品及び異常検知・PCやスマホの顔認証システム・防犯
音声認識 スマートスピーカー・音声入力システム
推論と探索 将棋やチェスなどのボードゲーム
AI×ロボット 倉庫業務の自動化(入出庫作業・受注処理・検品業務・荷物仕分け)
データ分析・予測 株価予測・自然災害の予測や分析

人工知能(AI)が抱える課題

AIはデータから学習していくため、不正確なデータや偏見を含んだデータを使用すると、結果にそのまま反映されます。データの偏りが差別を生むこともあり得るのです。また、人間に理解可能な形での説明や、気持ちに寄り添った行動が難しいといったデメリットも。

さらに、本物にそっくりなフェイク動画などの生成、フェイクニュースによる思考誘導や世論操作の危険性も増大しています。こういった課題に対処するために、AI社会原則や倫理指針の作成が国・世界レベルで活発化しています。

人工知能(AI)は今後も発展と活用が拡大する技術

現在実用化されているAIのほとんどは特化型で、あらゆる課題に対応できる汎用型はまだ実現されていません。しかしながら近年、機械学習とディープラーニングの研究の進展により飛躍的にAI技術が発展し、それも進化の過程にあります。今後は、従来型のAIと新しいAIを組み合わせたり、他の技術と融合させたりすることで、さらに活用範囲が広がるでしょう。

※記載の情報は、2023年1月時点の内容です。

関連記事