2024年5月7日 更新

インクルージョンとは|メリット・デメリットと導入企業の成功事例3選

インクルージョンとは、包括や包含を意味する言葉で、ビジネスシーンでは多様な属性を持つ人たちが社内で自らの特性を活かして活躍できる場がある状態を指します。インクルージョンを推進すればたくさんのメリットが得られるとして、さまざまな企業が導入を進めています。ダイバーシティについて解説し、具体的な事例や導入のポイントを紹介します。

インクルージョンとは

最近ビジネスシーンで耳にする機会が増えつつある「インクルージョン」というワード。正しい意味を理解していますか。まずはインクルージョンの意味と、併せて使用されることが多いダイバーシティとの違いについて解説します。

企業のなかに個人の特性に合った活躍の場がある状態

インクルージョンは、英語で「inclusion」です。直訳すると、包括・包含・一体性などの意味を持ちます。ビジネスシーンでインクルージョンが意味するのは、属性の異なるさまざまな個性や経験を持った従業員が、自らの特性やスキルを活かして一体感を持って企業活動を行っている状態のことです。

具体的には、女性の活躍推進や外国人雇用の促進、LGBTへの理解促進、働き方に関する制度の整備などが挙げられます。企業が今後も成長していくためには、従業員の多様性を活かして、さまざまなアイディアを生むインクルージョンの状態を目指すことが大切だと言えます。

ダイバーシティとの違い

インクルージョンと一緒に良く使われる言葉に、ダイバーシティ(Diversity)があります。ダイバーシティの直訳は、多様性。ビジネスシーンにおけるダイバーシティは、互いの多様性を認めて受け入れ合うことを指しています。

対してインクルージョンは、多様な人たちが自分の個性を活かして働ける環境があることです。この2つの違いは、多様性を「受け入れる」か「活かす」かという点にあります。

インクルージョン導入のメリットとデメリット

インクルージョンを導入している企業は数多くあり、うまく活用して業績を伸ばしている企業も少なくありません。インクルージョンを導入するメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリット①従業員の生産性とモチベーションが向上する

インクルージョンを導入・推進すると、従業員の生産性とモチベーションアップにつながります。チームのなかで個性を活かせる環境を整えれば、従業員が自分の特性や発言を認められていると実感できるようになって、モチベーションがアップ。すると、自己の能力をより発揮できるようになり個人の生産性が上がります。

個人の生産性が上がることは、企業全体の生産性向上に直結します。加えて、個人の多様性を認めることで従業員と企業間の信頼は厚くなるでしょう。企業と従業員の信頼関係が深まれば、離職率の低下にも影響します。

メリット②企業ブランディングへ貢献できる

企業がインクルージョンを推進しているということは、従業員の個性を認めて多様性を受け入れていたり、ワークライフバランスや働き方の多様性を認めていたりするということです。これは、企業イメージの向上につながります。求職者にこの会社で働きたいと思わせる要素でもあるため、優秀な人材の獲得にも役立つでしょう。

さらに消費者やクライアントに対して、多様なニーズを理解して尊重する姿勢であるとアピールできるため、ポジティブなイメージを与えられます。

メリット③新規事業の創出につながる

インクルージョンには、異なる知識や経験、価値観などを持つ人材が集まることで、新しい発想が生まれやすくなり、新規事業の創出につながるメリットもあります。多様な人材がアイディアを出し合うと既存の概念にとらわれず、企業のなかに新たな風を吹き込んで、イノベーションが生まれるかもしれません。

異なる文化や言語を持つ人々が集まれば、グローバルな視野が生まれ、海外市場など新たなビジネスチャンスの創出が期待できます。

デメリット①制度やルール変更に時間がかかる

インクルージョン導入はすぐに実現できるものではなく、時間がかかります。まずは、制度やルールの整備が必要です。その制度やルールの変更には、経営陣からの承認も不可欠です。新しい制度やルールを制定して社内に浸透させるには、ある程度の時間が必要であることを知っておきましょう。

デメリット②従業員から反発が起こるリスクがある

インクルージョンを導入するためにこれまでの制度やルールを変えることで、社内で強い反発が起こる可能性があるのもデメリットと言えます。特に大きな企業では、制度やルールの変更は大変な作業です。従業員にインクルージョンを導入することの重要性や目的をしっかり理解してもらう必要があるでしょう。

日本のインクルージョン企業導入事例

日本国内でも既にインクルージョンを社内で推進し、企業成長につなげている企業がたくさんあります。日本の企業でインクルージョンを導入して成功している事例を紹介します。

1.電設資材・管工機材メーカー

某電設資材・管工機材メーカーは、60年ほど前からユニークな自社ルールを導入して従業員の自主性を尊重している企業です。トップダウンの指示ではなく自ら考え行動することが最も効率良く結果を出せる方法だというポリシーのもと、従業員の個性やペースを尊重して経営を行ってきました。

結果として従業員のモチベーションが上がり、従業員が主体的に行動して、良いアイディアや製品が生まれています。創業以来赤字の年はなく、業界では国内トップクラスのシェアを誇る企業です。離職率も直近3年間は1%台をマークしています。

2.総合人材派遣サービス事業者

日本を代表する総合人材派遣サービス事業者で、創業以来、年齢や人種、性別、宗教、ジェンダーなどの違いを問わない「個の尊重」を信念に掲げています。多様な従業員が自分の能力を余すことなく発揮できる環境を構築するために、さまざまな取り組みを行っている企業でもあります。

さらに女性活躍支援にも力を入れていて、女性従業員とその上司に向けたキャリア開発研修やマネジメント研修を実施。その他、LGBTQを始めとするセクシュアル・マイノリティへの理解促進へ取り組んでいます。

3.メディア・インターネット広告事業者

メディア・インターネット広告事業者のメガベンチャーであり、インクルージョンを推進する先進企業の事例です。個人の強みを自己認知させる研修やお互いの強みを共有したチームビルディングを実施し、個人の強みにフォーカスしたキャリアプランニングのもと人事異動などの環境整備を行っています。

個人の個性を伸ばし、活用することでクリエイティブなアイディアが生まれて、新規事業の創出などの事業成長に良い影響をもたらすとして、年齢や性別、社歴にかかわらず役職に抜擢するカルチャーが根付いています。従業員の3割強は女性で、管理職全体の女性比率は2割という女性の強みを活かした企業です。

チームビルディングの目的とは?チームのパフォーマンスを向上させる手法を学ぼう

チームビルディングとは、目標達成に向けてメンバーの能力やスキルなどを最大限に発揮させる取り組みです。チームビルディングを取り入れることで、チームパフォーマンスの向上などが期待できます。本記事では、チームビルディングの基礎知識や取り入れる際のポイントを解説。チームビルディングの手法と具体事例もあわせて紹介します。

インクルージョン導入のポイントと注意点

実際にインクルージョンを自社に導入する場合には、いくつか気を付けておきたい点があります。インクルージョン導入のポイントと注意点を押さえておきましょう。

目的やゴールを会社全体で共有する

インクルージョン導入を進めるためには、社内の意識改革が必須です。インクルージョン導入に関心を持ってもらい協力を得るために、導入によってどんなメリットがあるのかを従業員に理解してもらう必要があります。加えて、ゴールや達成期間などの目標を明確にして共有しましょう。

また、導入後も定期的に情報共有を続けることも重要です。共有するのは、離職率や採用成果、業績など数値化できるものが適しています。従業員にアンケートを行うなど実際の声を聴くことも大切です。

経営陣が積極的に関与する

インクルージョン導入には、時間や手間がかかり、制度変更など大きな変革も伴うため経営陣の協力は不可欠です。人的リソースを最大限に活かす目的でインクルージョンを導入していることを理解してもらい、経営陣の積極的な関与を促しましょう。

数字だけを目標にしない

インクルージョンは効果の数値化が難しいため、数字だけを目標としないことも大切です。例えば女性管理職に活躍してほしい場合に、数字第一主義になって基準に満たない人を管理職に登用して女性の比率を高めても意味がありません。インクルージョンの評価は、数字以外のところで図る必要があります。

インクルージョンとは全社員が自分らしく活躍できる環境のこと

インクルージョンとは、すべての従業員が自分の力を最大限に発揮し、活躍できる環境で仕事ができる状態のことです。インクルージョンを導入することは、モチベーションや生産性をアップさせ、従業員の働きやすい環境構築に役立ちます。企業のさらなる成長のために、インクルージョンの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

※記載の情報は、2023年9月時点の内容です。

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