2025年1月20日 更新

生成AIの問題点・デメリットとは?実際に起きた問題事例や対策を解説

生成AIはその高い創造性と効率化から、多くの業界で注目されています。しかし、著作権問題やフェイク情報の生成、情報漏洩リスクなど、いくつかの問題点も指摘されているのが現状です。本記事では、生成AIの主な問題点やデメリット、対策について解説します。近年話題になった問題事例も参考に、個人や企業が生成AIを安全に活用するためのヒントにしてください。

生成AI活用の問題点・デメリットとは?

著作権侵害と生成AI

活用が進む生成AIですが、問題点やデメリットが指摘されています。具体的にどのような問題点があるのかを確認しておきましょう。

著作権や商標権を侵害する可能性がある

生成AIには、著作権や商標権を侵害するリスクがあります。AIは膨大なデータを基に学習しており、元データに含まれる表現やデザインが生成物に反映されやすい特徴があります。特に、著名な作家やデザイナーの作風を再現する場合、意図せず著作権侵害になる可能性があるので注意が必要です。

現行の著作権法では、AIに作品を学習させる際に著作権者の許可は不要とされていますが、倫理的問題や企業の信用への影響が懸念されます。商用利用においては、生成物が既存コンテンツと類似するリスクが高いため、慎重な活用が求められます。

フェイク情報を生成することがある

生成AIには、フェイク情報を生成する可能性があるのもデメリット。AIが学習するデータには、真偽が不明な情報も含まれており、AIにはそれらの信頼性を判断する能力はありません。そのため、誤った情報を出力することがあります。

例えば、歴史的な事実について質問すると、実際には存在しない出来事をそれらしく回答するケースもあります。AIはネット上の不確かなデータを基にしているため、悪意がなくとも誤情報やフェイクコンテンツが生成され、事実と混同されるリスクがあります。

情報漏洩のリスクがある

企業で生成AIを活用する際には、情報漏洩のリスクにも注意が必要です。機密情報や個人データをAIに入力すると、それが学習データとして利用され、他のユーザーの出力に再現される可能性があります。

例えば、顧客データや製品開発情報を入力した場合、情報漏洩や機密性の侵害につながるリスクがあります。生成AIは膨大なデータを学習することから、意図せず機密データが流出する可能性もあるため、入力データの慎重な管理と選定は不可欠です。

AIへの指示が難しい

適切な指示を出して望む答えを導くのが難しい点も生成AIのデメリットと言えるでしょう。AIは人間の意図や背景を完全には理解できないため、指示が曖昧だと意図しない結果を出力することがあります。生成AIを効果的に活用するためには、プロンプトの作成方法や使用パターンを学習し、指示を明確かつ具体的に伝える工夫が必要です。

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生成AIの問題点が明らかになった事例4選

生成AIとディープフェイク

既に多くの企業で活用が広まっている生成AIですが、フェイク情報や情報漏洩などで大きな問題に発展した事例があります。国内外で問題となった具体例を4つ紹介します。

問題事例①災害のフェイク画像が拡散

2022年、台風15号で発生した水害に関するフェイク画像がSNS上で広まりました。生成AIで作られたこれらの画像は非常にリアルに見えるため、多くの人が本物と信じ込んでしまいました。

このようなフェイク画像の拡散は、社会的混乱を引き起こすリスクを伴います。生成AIを使ったフェイク情報の拡散を防ぐためには、情報の真偽を確認し、常に警戒することが重要です。

問題事例②社内ソースコードの漏洩

2023年、韓国の家電メーカーで、従業員が機密ソースコードを誤って生成AIにアップロードし、そのデータが外部サーバーに保存された結果、他のユーザーに開示される事態が発生しました。

この問題を受け、企業は情報漏洩リスクを回避するため、従業員による社内でのAIツール使用を禁止。また、個人端末での利用にも厳しい規制を設けるなど、対策を強化しました。

問題事例③新聞記事を無許可で学習して訴訟問題に

米国では新聞会社がオープンAIとマイクロソフトを相手取り、数十億ドルの損害賠償を求める訴訟を提起しました。訴訟の主張は、ChatGPTが無断で同紙の記事を学習データに使用したことによる著作権侵害です。

新聞会社は、AIによる記事の利用が購読料や広告収入の機会を奪っていると訴えています。この訴訟は、AI開発企業によるメディア記事の学習を巡り、新たな法的議論を引き起こしています。

問題事例④ディープフェイクに騙されて送金

香港の多国籍企業で、ディープフェイクを利用した詐欺事件が発生しました。詐欺グループはビデオ会議で会計担当者に接触し、AIで作られたCFOや同僚になりすまして、約38億円を送金させました。後にこれが偽物と判明し、詐欺が発覚。この事件はディープフェイクを使った初の大規模詐欺として注目されました。

生成AIの問題点を解消する4つの対策

問題点がいくつかある生成AIですが、対策を講じることで利点を生かした活用につなげられます。ここでは4つの対策を紹介します。

生成物は人間が検証する

生成AIの活用には、人間による検証や編集が不可欠です。AIは大量かつ迅速にコンテンツを生成できますが、その内容が正確か、自然かを判断することはできません。そのため、生成物の真偽や精度を人間が検証し、バイアスや誤情報を取り除く必要があります。AIを利用する際には、事前にガイドラインを策定し、手作業で確認することが重要です。

入力した内容を学習させない

生成AIに入力した内容が学習されないよう、ツールの設定を見直しましょう。多くの生成AIには、履歴を残さず学習を防ぐ機能が備わっています。これを活用すれば、データの安全性を確保できるでしょう。

例えば、ChatGPTではデフォルト設定をオフにすることで学習を防げます。企業はリスクを最小化するため、このような機能を備えたAI生成ツールを選ぶことが重要です。

従業員のAIリテラシーを向上させる

生成AIを適切に活用するためには、従業員教育を通じて生成AI活用のリテラシーを向上させることが欠かせません。生成AIの基礎知識や活用方法、リスクを理解してもらうために、研修やトレーニングを実施すると良いでしょう。また、「AIプランナー」や「AIエンジニア」などの専門人材を採用し、社内のリテラシー向上を目指すことも効果的です。

利用ルールやマニュアルを策定する

生成AIの正しい運用とリスク軽減のためには、企業内で利用ルールやマニュアルを策定することが重要です。ルールには、AIを用いる業務範囲や使用目的、個人情報や機密データの取り扱いガイドラインを明記します。

特に、顧客の個人情報や社内の研究データなどは入力を禁止して情報漏洩のリスクを防ぎましょう。定期的に従業員への周知を徹底し、ルールの更新と管理者によるチェック体制を整備しておくと安心です。

生成AIの活用で得られるメリット

生成AIは、デメリットを上回るメリットがあるため活用が広がっています。例えば、データ分析やパターン検出に優れており、会議や人手を減らしながら迅速に分析結果を得られます。組織全体で活用することで、生産性の向上やコスト削減、プロジェクト進行の効率化が可能です。

また生成AIは、人間の固定観念に囚われない新たな発想を提供し、革新的でクリエイティブな成果を生み出す可能性があります。導入当初は一時的にコストが増加することがありますが、中長期的にはランニングコストの削減が期待できるでしょう。生成AIは効率的な作業を促進し、新たな発想を引き出すため、現代のビジネスにおいて欠かせないツールとなりつつあります。

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生成AIは問題点の対策を講じて安全な活用をしよう

生成AIは多くのメリットがある一方で、著作権侵害、フェイク情報の生成、情報漏洩などのリスクも伴います。企業内で活用するには、従業員の生成AIリテラシーの向上や利用ルールの策定が不可欠です。生成AIの問題点を理解し、適切な対策を講じることで、安全かつ効果的な活用を目指しましょう。

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※記載の情報は、2025年1月時点の内容です。

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