アンケート分析を次のアクションにつなげる生成AI活用法

アンケート分析を次のアクションにつなげる生成AI活用法

多くの企業ではアンケート結果やお客様の声を収集し、マーケティングや製品改善に生かそうと試みています。しかし、膨大な自由記述や音声データはデータ形式がバラバラであり、なかなか活用まで至らないケースが少なくありません。特に自由記述内に潜む本質的な要望や不満の把握は重要であるにもかかわらず、人力での分析は多くの工数を要してしまう課題があります。
こうした背景の中、注目されているのが生成AIを活用したデータ処理と分析の手法です。本記事では、アンケートやお客様の声といった非構造化データを生成AIで効率的に分析するためのステップについて解説します。

生成AI データ活用

アンケートやお客様の声に関する課題

まずは、企業におけるアンケートやお客様の声(VoC:Voice of Customer)がなぜ活用されずに放置されてしまうのか、その現状を整理します。

データの散在と未活用の現状

インターネット経由で収集したアンケートデータや紙ベース、コールセンターの音声ログなど、企業が保有する情報源は多岐にわたります。それぞれの形式が異なるため、一括で扱うのが難しく、結果として一部データが全く活用されないまま放置されることも珍しくありません。

Webアンケートのようにすでにデジタル化されているデータは比較的扱いやすいですが、紙アンケートの手入力やコールセンター録音の書き起こしなどは、さらに手間が増大します。複数の担当者が別々のフォーマットでデータをまとめていると、一貫性のある分析が行えない状況に陥りやすいです。

こうしたバラバラのデータを手作業で集計しようとすると、時間もコストもかかるため、どうしても自由記述や音声データの深い分析が後回しになります。結果として、顧客の声からのインサイトを活用できる機会を逃してしまうことにつながります。

自由記述や音声データの処理負荷

選択式回答については集計ツールで自動的に集計が可能ですが、自由記述や音声データは文字起こしや意味の抽出など、追加の作業が必要です。特に大量のデータがある場合には、人力で確認しきれず、結果的にデータが有効活用されにくくなります。

自由回答欄にどのような思いが込められているかを知るには、ひとつひとつ読み込んで分類する必要があります。音声ログを聞き取って起こす作業も含めると、一層の労力がかかります。そうした対応に手が回らず、結局は自由記述コメントや通話録音をほとんど活用しないまま終わるというケースが生じます。

アナログデータのデジタル化とテキスト抽出

こうした企業が持つローデータを活用するための前準備として、紙や音声などの非構造化データをテキストとして扱えるデジタル形式に変換するステップをご紹介します。

紙アンケートのデジタル化

紙で回収したアンケートをデジタル化する際には、まずスキャナーやスマートフォンを用いてPDFや画像として取り込み、次に文字認識技術を使ってテキストデータを抽出します。

文字認識技術と言えば、従来のOCRでは印刷文字の認識に強みがありましたが、最近のマルチモーダルLLM(様々なファイル形式に対応する生成AI)は手書き文字にも柔軟に対応できます。

具体的には、スキャンした画像ファイルをマルチモーダルLLMにアップロード(リクエスト)し、その結果をテキスト化した後で確認・修正を行うフローを設計します。人間による手入力に比べると大幅に作業時間を短縮することが期待できます。

こうして電子化されたデータは、他のチャネルから得たデータとフォーマットを揃えて扱うことが可能になります。その結果、相互に比較や集計を行いやすくなります。また、電子化の過程で抽出した情報にタグを付与することで、後の分析プロセスを一層スムーズに進めることが可能です。

▼生成AIについてもっと詳しく知りたい
⇒ 生成AI(Generative AI)|用語集

音声ログのテキスト変換

電話応対の音声録音や顧客と対面で行われたヒアリングなど、音声データをテキスト化する工程も重要です。同様に、音声をテキストに変換する仕組み(Speech-to-Text)を持つマルチモーダルLLMを用いて、音声からテキストを抽出することができます。

まずは通話を文字起こしして、結果をテキストファイルとして保存します。その後、生成AIや自然言語処理ツールを使って発言者ごとにタグを付けたり、発言内容を特定の基準に従って分類することも可能です。

こうした様々なローデータをテキスト処理することにより、アンケート結果と同じフォーマットでデータを並べて多角的に分析することが可能になります。

生成AIによるデータの分類と構造化

テキストを抽出しただけでは、得られる示唆は限定的なものになります。ここでは、テキストデータに対し生成AIを用いてタグ付け・分類を行い、意味のある形で構造化する手法を紹介します。

生成AIによるデータの分類と構造化

属性とカテゴリーの自動判定

生成AIでは、大量の自然言語を学習しているため、自由回答のテキストから製品や問い合わせ種別、感情などを自動判定し、タグとして付与することができます。これにより、膨大なデータを一度に俯瞰し、どのカテゴリーの意見が多いのかを即座に把握することが可能です。

また、プロンプトの工夫次第で細かい分類も対応可能です。商品カテゴリーや地域別の意見かどうかなど、複数軸でタグ付けを行うことにより、後からさまざまな切り口で分析しやすくなります。

感情分析についても同様で、回答文からポジティブかネガティブかを振り分けるような指示を生成AIに与えることで、どの意見を優先的にフォローすべきかが明確になります。これらを組み合わせることで、応対窓口や顧客サポート部門が効率的に改善策を講じられるようになります。

緊急度やインサイトの抽出

すべての意見が同じ重みを持つわけではありません。中には「早急に問い合わせ対応が必要」といった強いアラートサインを含む意見が存在します。生成AIはキーワードや文章全体の流れをもとに、こうした緊急度を割り出す機能を担うことができます。

従来のアンケート集計や担当者の目視確認では、大量のデータを短期間でスクリーニングするのは困難でした。生成AIを活用することで、個々の文章に含まれる緊急ワードや否定的なニュアンスを察知し、優先度を設定することが可能になります。

同時に、顧客の潜在的な要望や、未顕在の不満などはテキストの言い回しから読み解く場合があります。その結果、クレーム対応の遅れを防ぐだけでなく、潜在的なサービス改善点や新商品のヒントを早期に発見できます。顧客満足度の向上やブランドイメージの向上へと直結するため、全体の業務効率と顧客対応の質を大きく向上させることができます。

整理されたデータの活用と可視化

生成AIにより整備されたデータは、定量・定性の両面から多角的な分析やBIダッシュボード等による可視化が容易になります。

全体傾向の把握とトレンド分析

多角的にタグ付けされたデータを時系列で並べることで、顧客の声がどのように変化しているかが一目でわかるようになります。例えば新商品の発売後に生じたクレームの推移を見れば、改良すべき点を迅速に発見することが可能です。

また、感情の推移や特定のキーワードの頻出度を可視化すれば、市場動向や顧客満足度の変化を把握でき、どの時期に施策を打つべきかの検討材料にもなります。分析結果をチーム全体で共有することで、一貫性のある対策を打ちやすくなる利点もあります。

視覚的に把握できる形で情報を整理すれば、どの問題が顧客にとって最優先の課題なのかを客観的に判断できます。特に、ネガティブな声が集中しているテーマは早期に対策を立てることで大きな効果を期待できます。

さらに、ポジティブな意見が多く集まった製品やサービス分野を深掘りすれば、競合と差別化できる強みを再確認し、新たなマーケティング戦略に活かすことも可能です。

個別対応の迅速化とサービス改善

緊急度が高い意見を自動でピックアップできるようになると、重要な顧客からの問い合わせにいち早く対応しやすくなります。特定の製品に関わる問い合わせ件数が増加していることを可視化できれば、対応マニュアルのアップデートや人員配置の見直しにも活かせます。リアルタイムで顧客の傾向を把握することで、競合に先んじたサービス改善が可能となります。

生成AIで感情を判定したデータをフィルタリングし、ネガティブかつ緊急度が高い案件のみを通知するといったシステムを構築すれば、クレーム対応のスピードは飛躍的に上がります。

部署別にカテゴリーを分けることで、専門知識が必要な問い合わせは該当部署にすぐに回すといった運用も行いやすくなることが考えられます。

データ連携と生成AIによるデータ整備

企業が継続的に顧客の声を拾い上げるためには、データの収集から分析までの工程をできる限り自動化することが鍵となります。ここでは、分散したデータを収集から分析まで自動でつなぎ、継続的に運用可能なフローを構築するための考え方を説明します。

収集から分析までの自動連携フロー

まず、データが集まる窓口を明確にし、そこから生成AIを含む各種ツールへ連携するワークフローを設計します。紙アンケートのスキャンや音声のデジタル化が終わった段階で、自動的に分類・集計が走り、分析用のデータベースに取り込まれるように設計することが重要です。

データの入り口では、紙アンケートをスキャンするデバイスや、コールセンターの通話録音システムなど、各形式に合わせた入り口を用意します。そこからAPIやファイルのアップロードなどを通じて集中的に情報をまとめる仕組みを構築します。

その後、生成AIによるテキスト化と自動タグ付けを実行し、結果をデータベースに書き込む段階でカテゴリー情報や感情情報を付加します。最終的には可視化ツールやレポート作成の仕組みへデータを連動させることで、効率的にインサイトを得ることができるようになります。

継続的なデータ整備によるインサイトの創出

一度構築した仕組みを継続して運用すると、常に新しいアンケート結果や顧客の声が蓄積され、データ量が増えるほど分析精度も向上していきます。

データ整備の自動化により、担当者はレポートや分析結果を基に戦略を考える時間を確保できます。加えて、データの抽出や分類のブレが少なくなることで、意思決定の根拠が明確になる利点があります。

常に最新の顧客データを取り込んで分析できれば、トレンドの変化をリアルタイムに察知することが可能となり、早い段階で施策を打つことができます。こうしたデータドリブンな組織文化が定着すると、製品開発やサービス改善のスピードと質も格段に高まります。

さいごに

これまで「アンケート」や「お客様の声」の自由記述は、その重要性を理解しつつも、膨大な手間と時間がかかるために十分な活用が難しい領域でした。しかし、生成AIの登場により、紙や音声といったバラバラな形式のデータを効率的にデジタル化し、一貫性のあるデータとして集計できる環境が整いつつあります。これにより、これまで埋もれていた貴重な意見を、企業の資産として再定義することが可能になります。

生成AIによるデータの分類や構造化は、単なる集計業務の効率化に留まりません。感情や緊急度といった付加情報をデータに持たせることで、優先すべき課題や潜在的なニーズを客観的に捉えることができるようになります。結果として、現場の担当者が主観に頼ることなく、確かな根拠を持って迅速なカスタマーサポートや、精度の高い製品開発に取り組めるようになる点が大きなメリットです。

大切なのは、これらのプロセスを一時的なものにせず、自動的な「データ連携」の仕組みとして定着させることです。データの収集から分析、そしてインサイトの抽出までをスムーズにつなぐパイプラインを構築することで、組織全体が常に顧客の変化を察知し、柔軟に動けるデータドリブンな体制へと進化していくことが期待されます。

セゾンテクノロジーのオンライン相談

セゾンテクノロジーのオンライン相談

当社のデータ活用プラットフォームについて、もう少し詳しい話が聞きたい方はオンライン相談も承っています。お気軽にご相談ください!

オンライン相談をする

記事を書いた人

所 属:データインテグレーションコンサルティング部 Data & AI エバンジェリスト

山本 進之介

入社後、データエンジニアとして大手製造業のお客様を中心にデータ基盤の設計・開発に従事。その後、データ連携の標準化や生成AI環境の導入に関する事業企画に携わる。2023年4月からはプリセールスとして、データ基盤に関わる提案およびサービス企画を行いながら、セミナーでの講演など、「データ×生成AI」領域のエバンジェリストとして活動。趣味は離島旅行と露天風呂巡り。
(所属は掲載時のものです)

おすすめコンテンツ

関連コンテンツ

コラム一覧に戻る