AIエージェントとエージェント型AIは何が違うのか?特徴と活用のポイントを解説

AIエージェントとエージェント型AIは何が違うのか?特徴と活用のポイントを解説

AIエージェントとエージェント型AIの違いは、「人の指示で動くか」「AIが自ら動くか」という点にあります。ChatGPTの登場以降、生成AIはコンテンツ生成から業務を担う「エージェント」へと進化しています。しかし、「AIアシスタント」など類似する用語も多く、その違いが分かりにくいのが実情です。本コラムでは、これらの違いと活用ポイントを分かりやすく解説します。

生成AIに関わるトレンドの変化

AIエージェントは、何もないところから突如生まれた概念ではなく、昨今の生成AIに関わるトレンドの延長にある概念です。AIエージェントの話を深掘りする前に、まず、どのようにして「AIエージェント」と呼ばれる概念が登場したのか、近年の生成AIに関わるトレンドを振り返りたいと思います。

▼生成AIについてもっと詳しく知りたい
⇒ 生成AI(Generative AI)|用語集

ChatGPT:対話・生成能力の獲得(2022年~)

生成AIの根幹を成す自然言語処理技術自体は以前から研究が続けられていましたが、社会からの大きな脚光を浴びるきっかけとなったのは、2022年11月の米OpenAI社から発表されたChatGPTです。

ChatGPTの大きな特徴は、自然言語による対話能力と生成能力です。自然言語――すなわち人間が普段使う言葉によって指示(プロンプト)を提示することで、文章の作成、要約・翻訳、コードの生成といった「コンテンツ」を生成することが可能になりました。

特に企業においては、議事録の要点整理や、事業企画のためのブレインストーミング、プログラミングの補助といった用途で注目が集まりました。

その能力の限界として、生成AIは最新情報や社内情報に弱く、回答が曖昧で一般論に終始しやすいという特性があります。

▼ChatGPTについてもっと詳しく知りたい
⇒ ChatGPT(Chat Generative Pre-trained Transformer)|用語集

RAG:知識の拡張能力の獲得(2023年~)

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、こうした生成AIの知識の限界を克服するためのひとつの手法です。回答プロセスを「検索(Retrieval)」と「生成(Generation)」に分離し、ユーザーの問いに対してまずは社内のドキュメントやナレッジを検索し、その結果得られた情報をもとに回答を生成します。これにより、ChatGPTでは困難だった社内情報を扱えるようになり、かつ実際の情報に基づくために回答時のハルシネーションを抑制できるようになりました。

企業における適用領域は幅広く、人事規定や各種手順書の紹介、提案資料や技術資料の収集、コールセンターでの問い合わせ自動化といった用途で用いられます。特に、情報が散在していて、収集に時間がかかる組織ほど効果を発揮します。

一方で、チューニングを続けてもRAGの精度が高止まりしてしまう「RAGの沼」に陥るケースも頻出するようになりました。また、従来のChatGPTやRAGでは、基本的には「聞かれたことに対して答える」ために、業務で実際に起票、申請、登録するといったアクションは人が行うことになります。

▼RAG(Retrieval-Augmented Generation)についてもっと詳しく知りたい
⇒ 検索拡張生成(RAG:Retrieval Augmented Generation)|用語集

AIエージェント:自律思考・遂行能力の獲得(2025年~)

AIエージェントは「答えるAI」から「やり遂げるAI」への移行を象徴するような概念です。目標に対してAI自身が自ら計画を立て、WebやAPI、業務SaaSなどのツールを呼び出し、結果を確認して次の行動を決める、ということを目標が達成されるまで繰り返します。つまり、自ら思考してタスクを遂行する能力を持っています。

企業における一般的な用途として、調査から資料作成までの一連の処理や、問い合わせ内容の分類とチケットの起票、データ分析結果に基づく定型レポートの作成などが挙げられます。情報の出力に留まらず、一連の作業を幅広くカバーできるようになったのが特徴的な点です。

AIアシスタント、AIエージェント、エージェント型AI

AIエージェント自体は非常に広範な概念であり、AIに関するイベントや展示会に参加してみると、全く異なる特性を持つAIサービスがひとくくりに「AIエージェント」と表現されていることもしばしばあります。

ここでは、広義の「AIエージェント」を、「AIアシスタント」「AIエージェント(狭義)」「エージェント型AI」に分解して、その特性を深掘りしてみたいと思います。

AIアシスタント、AIエージェント、エージェント型AI

AIアシスタント(AI Assistant)

AIアシスタントは、会話を通じて人の意思決定や作業を補助する存在です。基本は人が主導となり、AIは下書き作成や整理役として機能します。

主なユースケースは、文章作成、要約、アイデア出し、翻訳、簡易分析など、基本的にはChatGPTが有する機能の延長にあります。そのため、前述した広義のAIエージェントの特徴には必ずしも該当するとは限りません。

昨今のトレンドの影響を受けて、自律思考・遂行能力を持たないAIアシスタントサービスを「AIエージェント」と表現して宣伝するケースも散見されるため、導入を検討する際には注意が必要です。

AIエージェント(AI Agent)

AIエージェントは、ユーザーから与えられた目標やタスクに基づき、必要な手順を組み立てます。そして、情報の検索やデータベース、SaaSの操作、コード実行などの機能を持つツールを呼び出し、タスクが完了するまで遂行します。MCP(Model Context Protocol)は、AIエージェントとツールの円滑な連携を実現するうえで重要な概念のひとつです。

生成AI(大規模言語モデル:LLM)は、AIエージェントの一連の挙動の内部で至る箇所で役割を果たします。具体的には、計画の立案、実行の指示、検索クエリの生成、検索結果の評価、アウトプットの作成などが挙げられます。ユーザー視点では、生成AIの各挙動を意識することなく、まるでひとつのAIがタスクを遂行しているように見えています。

具体的なユースケースとして、出張手配、請求書処理、問い合わせチケット起票、レポート作成があります。ここで重要なのは、単なる自動化ではなく「確認しながら進む」点です。途中結果を評価して次の行動を変えるため、分岐が多い業務でも適用しやすくなります。

エージェント型AI(Agentic AI)

近年「エージェント型AI(エージェンティックAI)」と呼ばれる概念も登場しました。エージェント型AIの定義も様々ではありますが、おおよそ「ユーザー起点ではなくAI起点で目標達成を目指す能力を持つ」あるいは「複数のAIエージェントと連携して目標達成を目指す能力を持つ」という意味で用いられます。

一つ目の「ユーザー起点でなくAI起点で目標達成を目指す能力を持つ」という点は、狭義のAIエージェントと大きく異なる特徴と言えます。AI起点とは、AIが外部環境をモニタリングし、アクションを取るべきタイミングで計画を立案してタスクを遂行するということです。例えば、生産設備の異常が発生した際に、センサーログ及び保全記録から異常の原因を特定し、保全担当者に通知をしたり、あるいは交換対象の部品を発注する等の手続きを行います。

二つ目の「複数のAIエージェントと連携して目標達成を目指す能力を持つ」という点は、エージェント型AIを中心として、複数の特定の役割や機能を持ったAIエージェントが協働・連携して目標達成のためのタスクの遂行を担います。例えば、利益が低下している事象を検知した際に、顧客管理AIエージェントは顧客の利用状況からその原因を特定し、生産管理AIエージェントはサプライチェーンの各種状況から原価やリードタイムに影響が発生しているかを調査する、といった具合です。なお、米Google社が提唱する「A2A(Agent to Agent)プロトコル」は、このAIエージェント間の連携を円滑に行うための規格であり、まさにエージェント型AIの時代のための概念と言えます。

エージェント型AIが当たり前になる時代に向けて

昨今のAIモデルの進化は目まぐるしいものの、RAG、AIエージェント、エージェント型AIの効果はモデルの性能だけでは決まりません。「Garbage In, Garbage Out」と呼ばれるように、AIのアウトプットの質に大きな影響を与えるのは、AIのインプット――つまり「データ」です。

エージェント型AIによる業務の推進を目指すにあたり、AIが正しく環境(業務、商品、市場、顧客など)を理解し、PoCで終わらない精度を発揮するためにも、データ本体、メタデータ、データ連携を適切に整備する必要があります。

▼データ連携についてもっと詳しく知りたい
⇒ データ連携 / データ連携基盤|用語集

データの整備

データ整備の目的は、AIに渡す前に「正しく使える状態」にすることです。どこに何があるか分からない、同じ内容が複数ある、更新が止まっている、といった状態では、AIがいくら検索しても正答に辿りつけません。まずは業務データの所在を棚卸しし、不要・重複・古い情報を整理します。

次に「信頼可能な唯一の情報源(Single Source of Truth)」を定義することも重要です。ドキュメントならば、例えば人事規程なら人事部門が管理する最新版、価格表なら営業企画部門が管理する版、のように「最後に信じる場所」を決定します。情報源が曖昧だと、人の運用のみならずAIの情報の理解もぶれてしまいます。

権限設計もデータ整備の一部です。部署単位、役職単位、案件単位など、必要なアクセス制御を行い、機密情報にはマスキングを行うなど、AIが参照可能なデータを決定しておくことがガバナンスに直結します。

メタデータの整備

メタデータは、AIが適切なデータにたどり着くための重要な参考情報です。AIがドキュメントやデータベースを参照する前に、どれが最新版で、どの部門が所有者で、どの業務で使うのかが分かる状態にしておくことで、AIが正しく情報を理解して取り回すことが可能になります。

AIが必要とするメタデータはデータの種類によって様々です。例えばドキュメントであれば、作成日や更新日、管理部門、機密区分、ファイルパス・URLなどが求められます。データベースであれば、スキーマ名やテーブル名、フィールド名、各フィールドの意味(コード体系の説明や、他テーブルとの結合キーの情報など)が重要です。

▼メタデータの整備手法についてはぜひ以下もご覧ください。

メタデータで精度向上!生成AI時代に必要なメタデータと整備手法を解説

メタデータで精度向上!生成AI時代に必要なメタデータと整備手法を解説

なぜ生成AIにメタデータが必要なのか、どのようなメタデータを整備すればよいのか、そして具体的な整備手法について解説します。

データ連携の整備

データ連携とは、①データをAIが参照可能な場所に置くためのデータ連携(Data to Data)と、②AIがデータを直接参照するためのデータ連携(AI to Data)という2つの側面があります。どちらの連携が必要になるかは、RAG、AIエージェント、エージェント型AIをどのように設計するかに依拠します。

Data to Dataの連携については、一般的なRAGサービス等は参照可能なデータストレージが制約されているケースが大半です。具体的には、Webブラウザを経由してサービス環境にアップロードするか、パブリッククラウドの各種オブジェクトストレージ(Amazon S3やAzure Blob Storageなど)を指定するケースが多くあります。この場合、業務システムから、これらの環境にデータを移す必要があります。従って、バッチ処理等によりデータを移管するデータ連携が必要になります。

AI to Dataの連携については、主にMCPのようにAIが「データ連携ツール」を実行するような設計である場合に必要になります。例えば、基幹システムのデータを参照するツールを作る場合には、基幹システムからデータをSQLで抜き出す処理をAPI化して、AIがツールとして利用できるようにする必要があります。

エージェント型AIの設計に応じて、必要なデータ連携を見定め、整備することが求められます。なお、セゾンテクノロジーが提供するクラウド型データ連携プラットフォーム「HULFT Square」はどちらのケースにも対応が可能です。もしご関心があればお問い合わせください。

iPaaS型データ連携基盤 HULFT Square(ハルフトスクエア)

iPaaS型データ連携基盤 HULFT Square(ハルフトスクエア)

HULFT Squareは、「データ活用するためのデータ準備」や「業務システムをつなぐデータ連携」を支援する日本発のiPaaS(クラウド型データ連携プラットフォーム)です。各種クラウドサービス、オンプレミスなど、多種多様なシステム間のスムーズなデータ連携を実現します。

さいごに

AIは「質問に答える段階」から、「目標達成を任せる段階」へと進んでいます。自社の課題に合わせて用語と期待値を整理し、データ・メタデータ・連携の土台を固めることが、AIエージェント・エージェント型AIを現場で定着させる近道になります。

世の中には様々な言葉が溢れており、同じ「AIエージェント」という表現でも、その実態と果たす役割は様々です。議事録の作成のように人の作業を速めたいのであれば「AIアシスタント」、人の指示に基づいて自律的にタスクをこなさせたいのであれば「AIエージェント(狭義)」、AIが自律的に起こすべきアクションを決定して行動するようにしたいのであれば「エージェント型AI」です。

AIを用途に合わせて正しく使い分けていくことは当然重要でありながら、その性能を大きく左右するのはデータです。AIモデルのみならず、データ、メタデータ、データ連携を合わせて整備していくことが、PoCで終わらないデータ活用・AI活用に向けた重要な一歩です。

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記事を書いた人

所 属:データインテグレーションコンサルティング部 Data & AI エバンジェリスト

山本 進之介

入社後、データエンジニアとして大手製造業のお客様を中心にデータ基盤の設計・開発に従事。その後、データ連携の標準化や生成AI環境の導入に関する事業企画に携わる。2023年4月からはプリセールスとして、データ基盤に関わる提案およびサービス企画を行いながら、セミナーでの講演など、「データ×生成AI」領域のエバンジェリストとして活動。趣味は離島旅行と露天風呂巡り。
(所属は掲載時のものです)

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