AIエージェントとAIワークフローの違いとは?使い分けのポイントを解説
生成AIの活用が広がるなかで、「AIエージェント」と「AIワークフロー」という言葉をよく耳にするようになりました。これらは似ているようでいて、実は設計の考え方や、運用で気をつけるべきリスクが大きく違います。言葉のイメージだけで導入を進めてしまうと、思っていたような成果が出なかったり、自動化が進みすぎて品質が不安定になったりする原因になります。
このコラムでは、両者の特徴を整理し、どのような業務にどちらが向いているのか、精度を高めるためには何が必要か、といった点について具体例を交えて解説します。自社の状況に合わせて、最適な形を選んだり組み合わせたりするためのヒントになれば幸いです。
AIエージェントとAIワークフローの特徴
まずは、それぞれの仕組みが持つ性質を整理してみます。
AIエージェントは、ある目標を達成するために、AI自身が「次はこれをしよう」と手順を自律的に生成・実行します。状況に合わせて動きを変えられる柔軟さがある一方で、結果やコストが予測しにくい面があります。
対してAIワークフローは、あらかじめ人間が決めた手順の中にAIを組み込み、決められたルートで処理を実行する仕組みです。品質が安定し、後からプロセスを追いやすいのが長所ですが、想定外の事態が起きると止まってしまう弱点もあります。
実際の業務では、どちらか一方だけを使うというよりは、決まりきった作業はワークフローで固め、判断が難しい部分をエージェントに任せるといった使い分けが現実的です。もう少し詳しく見ていきましょう。
AIエージェント:AIが自律的に思考し試行錯誤する
AIエージェントは、目標を与えられると「情報収集・計画・実行・振り返り」を繰り返しながら進んでいく、動的なアプローチをとります。途中で新しい事実が分かれば方針を変えることもありますし、必要なら追加の調べものを挟むこともあります。
この柔軟性は、やりたいことが少し曖昧な場合や、状況がコロコロ変わる業務で大きな強みになります。一方で、同じことを頼んでも毎回違うルートを通る可能性があるため、なぜその結果になったのかという説明が難しくなる側面も持っています。
AIエージェントの主な特徴を整理すると以下の通りです。
- 意思決定の自律性:AIエージェントは、次に取るべき行動をその場の状況に応じて動的に選びます。あらかじめ分岐条件をすべて決めておく必要はなく、たとえば「情報が足りない」と判断すれば自ら検索を行い、仮説が正しくなさそうなら分析の切り口を変える、といった判断を自分で行います。
- ツールによる拡張性:AIエージェントは、Web検索やデータベース検索といったツールを使用することで、自分の能力を拡張します。使えるツールが増えればできることも増えますが、そのぶん誤った操作をしたり、情報を不適切に扱ったりするリスクも出てきます。
- エラー時の回復性:実行した結果が思わしくない場合、何が原因だったのかを考え、別のプロンプト(指示文)を試したり、違うツールを使ってみたりと、自己修正のループを回します。
AIワークフロー:定義された手順をAIと連携して遂行する
AIワークフローは、人間が引いたレールの通りにAIやシステムを動かしていく方式です。たとえ枝分かれがあっても、その条件や行き先はあらかじめ決まっています。
一方で、マニュアルにない例外的なケースが来ると対応できずに止まってしまいます。そうした例外をどう扱うかは、ワークフローの外側で人間が判断したり、部分的にエージェント的な要素を組み合わせたりして補うのが一般的です。
AIワークフローの主な特徴を整理すると以下の通りです。
- 手順の再現性:AIワークフローは決められたステップに従って進むため、同じような入力に対しては同じような結果が返ってきやすくなります。業務で一定の品質を守らなければならない場合や、納期がある程度決まっている作業には非常に向いています。
- プロセスの可視性:ワークフローは工程がはっきりと分かれているため、どこで時間がかかっているのか、どこでエラーが起きたのかが一目でわかります。問題が起きたときの原因究明が早くなるのは運用上のメリットです。
- 処理のコントロール性:AIワークフローでは、指示文の内容やAIの自由度、参照するデータなどを細かく固定できます。AIが得意な「曖昧な情報をまとめる」作業には自由度を残し、絶対に間違えてはいけない数値計算や登録作業はロジック処理で制御する、といった使い分けが大切です。
業務特性に応じた使い分けのケーススタディ
どちらの仕組みが良いかという話ではなく、扱いたい業務が「手順をあらかじめ決められるか」という視点で選ぶのがイメージしやすいと思います。手順を固定できるならワークフロー、その場その場の判断が必要ならエージェント、というのが基本的な考え方になります。
AIエージェントが向いているケース
AIエージェントは、答えが一つではないものや、やってみないと次のステップが見えないような探索型の業務にフィットします。
- 売上データの分析と洞察:たとえば「売上が落ちた原因を探る」という仕事では、最初に立てた予測が外れることがよくあります。全体を見た後に地域別で調べ直し、それでも分からなければ特定の商品カテゴリーに絞って深掘りする、といった試行錯誤が必要です。AIエージェントなら、こうした「結果を見てから次の分析方法を決める」という動きを支援できます。
- カスタマーサポート支援:お客様からの問い合わせは、内容が断片的だったり、本当の困りごとが言葉の裏に隠れていたりします。追加で質問を投げかけて状況を絞り込み、適切な解決策を探すプロセスは、エージェントが得意とする領域です。状況に応じて回答のトーンを変えたり、マニュアルから最適な箇所を見つけてきたりすることで、スムーズな解決を後押しします。
- 社内ナレッジの探査:「あの件、どこかに資料あったっけ?」という曖昧な質問に答えるには、社内のチャット、ファイル、Wikiなどを横断して探す必要があります。AIエージェントなら、質問の意図を汲み取って検索のキーワードを工夫し、あちこちの情報を突き合わせて回答をまとめてくれます。
AIワークフローが向いているケース
AIワークフローは、ルーティーン化されていて、品質のチェックポイントがはっきりしている業務に向いています。
- 顧客分析とレポーティング:顧客のデータを集計してレポートを作成し、その内容を営業支援システム(SFA)に登録するような一連の流れは、ワークフローが適しています。データの取得、集計、文章作成、レビューといった工程がはっきり分かれているためです。
- 活用のためのデータ整備:バラバラな形式の資料から必要な項目を抜き出したり、タグを付けたりしてデータベースを整える作業も、ワークフローが得意です。工程ごとに精度を測れるため、どこで間違いが起きやすいかを特定しやすくなります。
- 運用時の異常検知:システムの異常を見つけて報告する仕事も、検知から報告、チケット発行までが定型化されています。数値のチェックは正確なシステムで行い、検知された難しいログを人間が読みやすい要約文に変える部分にAIを使います。
実装における精度向上のポイント
せっかくの仕組みも、作り込みが甘いと現場で使われなくなってしまいます。エージェントとワークフロー、それぞれの精度を一段引き上げるためのポイントを整理します。
AIエージェント実装時の工夫
AIエージェントは、自律性が高いほど「何をすれば成功か」「いつ止めるか」が曖昧になりやすいです。精度向上の本質は、自由度を活かしつつ、逸脱を防ぐ枠を作ることにあります。
また、エージェントは「賢く振る舞う」よりも「安全に失敗する」ことが重要です。失敗時に人へ戻す、根拠がないときは回答しない、などの振る舞いを設計します。例えば、以下の観点で設計を考えることが重要です。
- エラーハンドリング:チェックリストや制約条件で出力を検証し、足りない点を特定したうえで再実行します。再試行にも設計が必要であり、失敗の種類を分類し、追加検索で補うのか、プロンプトを変えるのか、別ツールに切り替えるのかを決めます。闇雲なリトライはコストが増加する原因になります。
- ツール利用定義:ツールごとに用途、入力形式、出力形式、制約、権限、禁止事項をディスクリプションとして明確に定義します。特に有効なのが優先順位の設計です。たとえば、まず社内ナレッジベースを検索し、それでも不足する場合のみWeb検索を許可する、といった順序を決めます。
- コンテキストの維持管理:長いタスクほど、LLMが保持できる情報量の限界が問題になります。重要情報が埋もれると、前提を取り違えたり、同じ作業を繰り返したりします。対策は、短期メモリと長期メモリの役割分担です。意思決定に必要な前提、未解決の論点、引用すべき根拠は残し、雑談や不要な中間生成物は要約して圧縮します。
AIワークフロー実装時の工夫
ワークフローの精度は、「いかにタスクを細かく、シンプルに分けるか」で決まります。具体的には以下のような点を考慮して設計することが重要です。
- タスクの細分化:一回の指示で全部やらせると、どこで間違ったかが分からず、修正も難しくなります。入力理解、抽出、変換、生成、検証のように段階化し、中間成果物を持つことでエラーを早期発見できます。小さなエラーを前工程で止めれば、後工程へのエラーの伝播を防ぐことができます。
- LLMによる評価と差し戻し(LLM-as-a-Judge):生成した内容を別のLLMで評価させる方法で、評価観点を明確にし、正確性、形式、根拠、禁則などで採点し、閾値未満なら前工程へ差し戻します。
- 決定論的ロジックとAIの使い分け:数値計算、集計、正規化、文字列置換、ID突合のように答えが一意に決まる処理をLLMにやらせると、わずかな揺らぎが事故につながります。ここはプログラムで確実に実装するのが基本です。一方で、分類、要約、文章化、意図理解のように曖昧さが残る部分はLLMの得意領域です。
AIの価値を引き出すデータ連携のあり方
AI活用の成否はモデル性能だけでなく、参照できるデータの質と、必要なときに必要な形で取り出せる連携設計にも依存します。データ連携は単なる接続ではなく、検索品質、鮮度、権限、前処理までを含む重要な機能のひとつです。
▼データ連携についてもっと詳しく知りたい
⇒ データ連携 / データ連携基盤|用語集
AIエージェントとデータ連携の関わり
エージェントは状況に応じて参照先を選び、必要なら追加で情報を取りに行きます。そのため、データを集約し、検索しやすくし、ツールとして提供することが性能に直結します。整理するならば、およそ以下の観点でデータ連携を考慮する必要があります。
- ナレッジベースへのデータ収集:社内データはファイルサーバ、Wiki、チケット、SFA/CRM、ログなどに散在し、所在を知っている人だけが使える状態になりがちです。まずはAIが参照できるナレッジベースに集約します。
- AIのためのデータの前処理:検索と回答の精度は、前処理で大きく変わります。文書を適切な単位に分割し、タグ付けやエンティティ抽出でメタデータを付与すると、必要な情報が見つかりやすくなり、かつAIの解釈性を高めることができます。
- 直接連携のためのツール利用:エージェントが社内データソースにアクセスするには、APIや検索基盤、DBクエリをツールとして提供する形が現実的です。ツール化すると、入力スキーマや制約を定義でき、誤操作を減らせます。
AIワークフローとデータ連携の関わり
ワークフローは業務システムの前後をつなぐ配管として機能します。処理の順序、依存関係、結果の反映までを設計することで、現場で使える自動化になります。例えば以下のような点で、データ連携がAIワークフローを実現するうえで効果を発揮します。
- ワークフローの定義:ワークフローは、トリガーから結果反映までを一連の処理として定義します。定期実行なのかイベント駆動なのかを決め、データ取得、LLM処理、検証、通知や登録までをつなぎます。
- ワークフロー同士の同期:現場の自動化は単発では終わらず、前処理、分析、登録など複数のワークフローが連鎖します。依存関係を管理し、前段が完了してから後段を動かす同期が必要です。
- 出力結果の書き戻し:AIの出力を価値に変えるには、SFA/CRM、チケット、BIなど現場が使う場所へ書き戻す設計(いわゆるリバースETL)が重要です。常に自分が使う業務システムでAIの効果を感じられることが、業務の現場でのユーザビリティにつながります。
さいごに
AIエージェントとAIワークフローは競合概念ではなく、業務の不確実性と品質要求に応じて補完的に使い分けるのが効果的です。
AIエージェントは、状況に応じて動き方を変えられる柔軟性が強みですが、統制しないと結果とコストがぶれやすくなります。AIワークフローは、再現性と監査性が強みですが、例外には弱くなります。
自社の業務が「柔軟な思考」を求めているのか、あるいは「確実な実行」を求めているのかを見極めることが、AI活用を成功させる第一歩となります。そして、そのどちらにおいても、AIだけでなく、データ連携の考慮が必要不可欠です。
AIとのデータ連携については、ぜひセゾンテクノロジーまでご相談ください。

