経費精算データ活用で利益を最大化 ―攻めと守りのDX推進ガイド

経費精算データ活用で利益を最大化―攻めと守りのDX推進ガイド

多くの組織において、経費精算は、発生した費用を事後に処理するための事務的な手続きとして捉えられています。しかし、デジタル化が進む現代において、経費精算システムに蓄積されるデータは、経営の解像度を高め、次の成長へのヒントを提示する重要な資産となります。
本記事では、経費精算データを基軸とした攻めと守りの両面から、データ連携がもたらす新しいビジネスの価値と、具体的な業務効率化の姿について整理します。

データ活用

経費精算におけるデータ活用の現状

昨今、多くの企業がバックオフィス業務の効率化を目指し、クラウド型の経費精算システムを導入しています。Concurなどの代表的なSaaSを活用することで、物理的な書類の回覧をなくし、経費申請や承認のワークフローをデジタル化する取り組みが一般的となりました。しかし、こうしたシステム導入の成果が、ペーパーレス化や入力作業の負担軽減といった局所的なメリットに留まっているケースも少なくありません。

本来、経費精算システムには、いつ、誰が、どこで、何のために資金を投じたかという、企業の活動実態を示す生きたデータが蓄積されています。これらのデータが独立したシステムの中に閉じ込められている現状は、その価値を十分に引き出せていない状態といえるでしょう。経費精算の業務フローで生成される情報を、単なる仕訳の根拠として処理するだけでなく、他の業務データと適切に組み合わせることで、初めて組織の意思決定を支える価値が生まれます。

現在の課題は、経費精算システムが提供する標準的な連携機能だけでは、複雑な社内ニーズに対応しきれない点にあります。例えば、申請者が入力した内容と証憑の整合性を確認する作業や、基幹システムへのデータ変換処理などは、依然として人間の手作業や個別の設定に依存している場合があります。こうした分断を解消し、データをシームレスに流す仕組みを構築することが、データ活用の第一歩となります。

攻めのDX:利益を生むための戦略的な経費データ活用

攻めの視点におけるデータ活用とは、経費を単なるコストではなく、将来の利益を生むための投資として捉え直すことです。経費データを売上や市場動向と掛け合わせることで、これまで見えてこなかった投資対効果を可視化できるようになります。

交際費実績と売上データの相関分析

多くの企業において、交際費の管理は予算の枠内に収まっているかという視点に偏りがちです。しかし、データ連携によって会計システムが持つ売上や利益の実績と経費データを突合すれば、支出の質を評価することが可能になります。例えば、個人別の交際費実績と個人別の売上実績を並べて分析することで、高い利益率を維持している担当者の行動特性を把握できます。

どのような対象に、どのようなタイミングで経費を投じることが成約に結びついているのかを分析し、それを組織全体のナレッジとして展開できれば、営業活動の生産性を大幅に向上させることが期待できます。一方で、売上に対して経費の比率が過剰に高い領域を特定し、リソースをより成長性の高い活動へ再配分するための具体的な判断材料を得ることも可能となります。

外部データを活用した市場開拓の効率化

自社の交通費や宿泊費のデータと、法人数統計やターゲット企業リストなどの外部市場データを地図情報システム上で重ね合わせる方法も有効です。この分析により、市場ポテンシャルが高いにもかかわらず、過去に営業担当者が足を運んでいない戦略的な空白地帯を浮き彫りにできます。

これは、営業が単に行きやすい場所や既存の顧客ばかりを訪問していないか、という仮説を検証することにも繋がります。潜在的な需要が存在する地域を特定した上で、戦略的に出張やキャンペーンを展開するなど、データに基づいた攻めのリソース配分を実現できます。

移動コストの分析による営業体制の最適化

交通費精算のデータから得られる移動実績と、勤怠管理システムの総労働時間を組み合わせることで、一人ひとりの移動時間と顧客接触時間のバランスを詳細に把握できます。特定のエリアにおいて移動時間が突出して多く、商談時間が圧迫されている状況が判明すれば、それは個人の能力の問題ではなく、営業テリトリーの設定という構造的な課題かもしれません。

こうした分析結果を根拠に、担当地域の再編やオンライン商談の積極的な導入を検討することで、物理的な移動に伴うコストと時間のロスを最小限に抑えることができます。データを活用して業務環境を整備することは、現場の負担を軽減しつつ、利益を最大化するための重要な施策となります。

守りのDX:業務品質の向上とガバナンスの強化

守りの視点では、データの整合性を自動的に担保することで、人間による確認作業を最小化し、内部統制を強化することを目指します。

守りのDX:業務品質の向上とガバナンスの強化

証憑確認と入力照合の自動化

経理担当者の大きな負担となっているのが、申請者が手入力した金額や日付が、添付された領収書の内容と一致しているかを確認する作業です。この工程にAI-OCRソリューションを導入し、読み取った証憑データと申請値をシステム上で自動照合する仕組みを構築すれば、業務の精度と速度を同時に高めることができます。

内容が完全に一致しているものについては人間によるチェックをスキップし、不一致や疑義があるものだけを抽出して確認する運用に変えることで、単純なミスを指摘し合う不毛なコミュニケーションを大幅に削減できます。正確なデータ化が進むことで、その後の仕訳処理や基幹システムへのデータ登録もスムーズに行えるようになります。

稟議データとの突合による不正防止

経費精算を単体で完結させず、前工程である購買管理や稟議システムのデータと紐付けることも、ガバナンス強化において重要です。申請された経費が事前に承認された稟議番号に基づいているか、また支払金額が見積りや発注時の金額と乖離していないかを自動的に判定する機能を実装します。

こうしたシステム的な制約を設けることで、架空請求や二重支払いを未然に防止できる体制が整います。経費申請の流れを一つの連続したワークフローとして捉え、データの連続性を担保することが、不正の入り込む余地をなくす確実な方法となります。

インボイス制度への対応と正確性の確保

インボイス制度の開始以降、登録番号の有効性を確認する作業が経理部門の重い負担となっています。証憑からAI-OCRで読み取った番号を、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトとリアルタイムで自動照合する機能を備えることで、確認作業の効率は劇的に向上します。

番号の実在性や、申請日時点で有効な事業者であるかをシステムがバックグラウンドで判定できれば、法対応に伴うリスクを最小限に抑え込むことができます。専門的な知識に頼ることなく、誰もが正確に処理を進められる環境を構築することが、守りのDXの本質です。

攻めと守りを両立させるデータ連携基盤の役割

ここまで述べた攻めと守りの施策を実現する上で、最大の障壁となるのはシステム間の分断です。経費精算システム、会計システム、勤怠管理、SFA、さらには外部の市場統計データなどがそれぞれ独立している状態では、情報の突合や加工に多大な時間と労力がかかってしまいます。この課題を解決するのが、iPaaS(Integration Platform as a Service)と呼ばれるクラウド型データ連携プラットフォームです。

なぜデータ連携基盤が必要なのかといえば、それは各システムが持つ固有のデータ形式を柔軟に変換し、必要な場所へリアルタイムに届けるハブの役割を果たすからです。例えば、Concurから出力される詳細な経費データを、自社の基幹システムが求める仕訳形式に変換して自動登録したり、BIツールで分析するために外部データと結合したりする処理を、個別のプログラム開発なしに実現できます。

特に、セゾンテクノロジーが提供するクラウド型データ連携プラットフォーム「HULFT Square」は、ノーコードでデータ連携の開発ができるため、ビジネス環境の変化に合わせた迅速な設定変更が可能です。また、高度なAI-OCRソリューションの導入支援を通じて、手書きや複雑なレイアウトの書類を正確にデータ化し、業務フローに組み込むこともサポートしています。

攻めのDXで必要となるデータ可視化や生成AIを活用した高度な分析と、守りのDXで不可欠な正確な自動突合。これら両面を支える土台こそが、データインテグレーションという考え方です。点在するデータを繋ぎ、活用可能な形に整える基盤があることで、企業は変化に対して柔軟かつ迅速に対応できるようになります。

▼データ連携基盤についてもっと詳しく知りたい
⇒ データ連携 / データ連携基盤|用語集

さいごに

経費精算システムの刷新は、単なる事務作業のデジタル化ではありません。それは、社内に眠っている情報を整理し、経営の透明性を高めるための重要なプロジェクトです。手入力を減らし、確認作業を自動化することで生まれる余力は、より付加価値の高い分析や戦略立案に充てられるべきです。

データの断絶を解消し、システム間をスムーズに連携させる仕組みを構築することは、現場の利便性向上だけでなく、組織全体の競争力を高めることに直結します。本記事で解説した活用方法やデータ連携基盤の重要性が、貴社のデータドリブン経営を推進する一助となれば幸いです。

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記事を書いた人

所 属:データインテグレーションコンサルティング部 ソリューションアーキテクト

三川 敦

入社後、大手金融業のお客様を中心にデータ基盤の設計・開発業務に従事。その後、経費精算システムの導入コンサルタントなどを経験し、お客様の経営課題・業務課題をデータ連携、データ活用によって解決するソリューションアーキテクトとして活動中。趣味はゴルフとハシゴ酒。
(所属は掲載時のものです)

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