「データはあるのに使えない」不動産業界のデータ活用を阻む課題と進め方

「データはあるのに使えない」不動産業界のデータ活用を阻む課題と進め方

不動産業界では、開発・販売・賃貸・管理などを通じて、さまざまなデータが蓄積されています。しかし、データが部門やシステムごとに分散していると、「必要なデータをすぐに使えない」「部門をまたいで状況を把握できない」といった課題が生じます。
本記事では、不動産業界でデータ活用が求められる背景や課題、データ活用を進めるための考え方について解説します。

なぜ今、不動産業界でデータ活用が重要なのか

不動産ビジネスでは、これまでも現場の経験や担当者の知見が重要な役割を果たしてきました。一方で、市場環境や顧客ニーズが変化する中、過去の経験だけでは判断が難しい場面も増えています。
たとえば、物件の取得・開発では、人口動態や地価、周辺環境などの市場データに加え、自社が保有する物件や過去の取引実績など、さまざまな情報を組み合わせて判断する必要があります。開発後も、販売状況や賃貸状況、入居状況、修繕履歴などを継続的に把握しながら、物件価値を維持・向上させていくことが求められます。

つまり、不動産業界におけるデータ活用とは、単にデータを分析することではありません。
複数のデータを組み合わせ、これまで経験や担当者の判断に頼っていた意思決定を、より客観的かつスピーディーに行える状態をつくることが重要です。

「データはあるのに使えない」不動産企業が抱える課題

企業内にデータが蓄積されていても、必要なときにすぐ活用できるとは限りません。
たとえば、物件情報は不動産管理システム、契約情報は基幹システム、顧客情報はCRM、会計情報は会計システムというように、データがそれぞれ異なるシステムに存在していることがあります。経営会議などで必要な情報を確認したい場合、それぞれのシステムからデータを取り出し、Excelなどで集計・加工している企業もあるでしょう。
さらに、システムごとにデータの形式や管理ルールが異なれば、単純にデータを集めるだけでは比較できません。
その結果、

  • 必要なデータを探すのに時間がかかる
  • 部門ごとに異なる数字を見ている
  • Excelへの転記や集計作業が発生する
  • 最新情報をすぐに確認できない
  • 担当者が変わると集計方法が分からなくなる

といった問題につながります。

「データを活用したい」と考えていても、その前段階のデータ収集や加工に時間がかかり、分析までたどり着けない。こうした状態は、データ活用を進めるうえで大きな壁になります。

部門ごとに最適化されたシステムが、全社では分断を生む

それぞれの部門が業務に合ったシステムを利用すること自体は、決して悪いことではありません。むしろ、業務ごとに最適なシステムを導入することで、現場の生産性を高められます。
しかし、システムが増えるほど、企業全体でデータを活用するときの「つなぐ」という課題が大きくなります。開発部門が持つ情報と賃貸部門が持つ情報、営業部門の顧客情報と管理部門の物件情報などが別々に管理されていれば、横断的な分析を行うたびにデータを集める必要があります。
個々のシステムでは最適化されていても、企業全体で見るとデータが分断されている。このギャップが、不動産企業のデータ活用を難しくする要因の一つです。

不動産のデータ活用で、意思決定はどう変わる?

では、分散したデータを活用できるようになると、具体的に何が変わるのでしょうか。
データ活用の目的は、データを集めることでも、高度な分析を行うことでもありません。最終的には、事業や経営における意思決定をより良く、より速くすることにあります。

不動産のデータ活用で、意思決定はどう変わる?

開発・投資判断に活用する

不動産開発では、立地や市場環境、人口動態、過去の実績など、多くの情報をもとに投資判断を行います。これらのデータを横断的に活用できれば、過去の実績だけでなく、市場の変化やエリアごとの傾向を踏まえた判断がしやすくなります。

たとえば、自社が過去に開発した物件の実績と外部の市場データを組み合わせ、どのようなエリア・物件特性が事業成果につながっているのかを分析するといった活用が考えられます。

物件価値の維持・向上に活用する

物件は開発して終わりではありません。賃貸状況、入退去、修繕、工事、収益などのデータを継続的に把握することで、物件ごとの状況をより正確に捉えられるようになります。
たとえば、修繕履歴と収益状況を組み合わせることで、どのような修繕が物件価値や収益に影響しているのかを分析できます。
個別物件の管理にとどまらず、過去のデータから得られた知見を、今後の修繕計画や投資判断に活用することも可能です。

部門をまたいだ経営判断に活用する

大手不動産企業では、事業や部門ごとに異なるシステムを利用していることも多くあります。そのため、経営層が全社の状況を把握しようとした際に、各部門からデータを集め、Excelなどで加工してレポートを作成するケースもあります。

データを共通のルールで参照できるようになれば、部門ごとの情報を横断して把握しやすくなります。「どの事業が伸びているのか」「どの物件で収益性に変化が起きているのか」といった状況を、よりスピーディーに確認できるようになります。

データ活用を進める前に、まず「データの現在地」を知る

データ活用を始める際、いきなりBIツールやAIなどの導入を検討するケースもあります。
しかし、その前に確認しておきたいのが、「必要なデータがどこにあり、どのように管理されているか」です。どれだけ高度な分析ツールを導入しても、必要なデータが複数のシステムに分散していたり、データの定義が揃っていなかったりすれば、分析の前にデータを集める作業が必要になります。
そのため、まずは自社のデータの現状を整理することが重要です。

どこに、どんなデータがあるのかを整理する

まずは社内にどのようなシステムがあり、どのようなデータが蓄積されているのかを整理します。
たとえば、

  • 顧客情報はどのシステムで管理しているか
  • 物件情報はどこにあるか
  • 契約情報はどのシステムを正とするか
  • 会計情報と契約情報はどのようにつながっているか
  • 部門間で同じ情報を重複して管理していないか

といった点を確認します。

こうした整理を行うことで、データの分散や重複、手作業による集計など、現在の運用が抱える課題を把握できます。

「何をつなぐか」ではなく「何に使うか」から考える

データ連携を検討するとき、「このシステムとこのシステムをつなぎたい」というところから始めてしまいがちです。
しかし、重要なのは、その連携によって何を実現したいのかを明確にすることです。
たとえば、

  • 経営判断を迅速化したい
  • 物件ごとの収益状況を横断的に把握したい
  • 修繕計画の精度を高めたい
  • 部門間の情報共有を効率化したい

など、目的によって必要なデータや連携方法は変わります。
「何のためにデータを使うのか」を先に決め、そのうえで必要なデータとシステムを整理することで、目的のない連携が増えることを防げます。

▼データ連携についてもっと詳しく知りたい
⇒ データ連携 / データ連携基盤|用語集

データ活用を支える「データ連携基盤」という選択肢

複数のシステムに分散したデータを活用するには、システム同士を適切につなぐ仕組みが必要です。
そこで選択肢となるのが、データ連携基盤です。
データ連携基盤を活用することで、さまざまなシステム間のデータ連携を一元的に管理し、新しいシステムやサービスが追加された場合にも、連携を拡張しやすくなります。特に大手ディベロッパーのように、既存の基幹システムを長期的に利用しながら、新しいSaaSやサービスを段階的に導入していく企業では、「既存システムを活かしながら、必要なところからつなぐ」という考え方が重要になります。

▼SaaSについてもっと詳しく知りたい
⇒ SaaS(Software as a Service)|用語集

ノーコードiPaaSでデータ連携を柔軟に

iPaaS(Integration Platform as a Service)は、異なるシステムやサービス間のデータ連携をクラウド上で構築・管理するためのプラットフォームです。ノーコード型のiPaaSであれば、複雑なプログラミングを行わず、視覚的に連携処理を設計・管理できます。
連携処理を一元的に管理できれば、システムが増えた際にも連携状況を把握しやすく、個別に連携を構築する場合と比べて、運用や保守の負担軽減も期待できます。

▼iPaaS(Integration Platform as a Service)についてもっと詳しく知りたい
⇒ iPaaS|用語集

HULFT Squareで既存システムを活かしたデータ活用を

HULFT Squareは、異なるシステム間のデータ連携をノーコードで構築・運用できるクラウド型のデータ連携基盤「iPaaS」です。
既存の基幹システムやSaaSを活かしながら、新たなシステムやサービスとの連携を柔軟に拡張できるため、すべてのシステムを一度に刷新するのではなく、必要なところから段階的にデータ活用を進めたい企業に適しています。

iPaaS型データ連携基盤 HULFT Square(ハルフトスクエア)

iPaaS型データ連携基盤 HULFT Square(ハルフトスクエア)

HULFT Squareは、「データ活用するためのデータ準備」や「業務システムをつなぐデータ連携」を支援する日本発のiPaaS(クラウド型データ連携プラットフォーム)です。各種クラウドサービス、オンプレミスなど、多種多様なシステム間のスムーズなデータ連携を実現します。

不動産のデータ活用は「つないで終わり」ではない

データを連携しただけでは、データ活用は完了しません。連携したデータを可視化・分析し、その結果を実際の事業や経営の判断につなげる必要があります。
そして、そこで得られた知見を次の施策に反映し、またデータを蓄積する。このサイクルを継続することで、データは単なる情報ではなく、企業の意思決定を支える資産になっていきます。
そのためにも、最初から大規模なデータ基盤を構築するのではなく、「どの意思決定を変えたいのか」を起点に、必要なデータや連携を整理することが重要です。

まとめ

不動産業界では、開発・販売・賃貸・管理など、さまざまな業務を通じて多くのデータが蓄積されています。一方で、部門やシステムごとにデータが分散していると、必要な情報をすぐに取り出せず、データを十分に活用できないことがあります。
データ活用を進めるためには、まず自社にどのようなデータがあり、どこで管理されているのかを把握することが重要です。そのうえで、経営や事業のどのような判断にデータを活用したいのかを明確にし、必要なデータを使える状態にしていくことが求められます。
「データはあるのに、必要なときに使えない」——もし自社でもこうした状況が起きているなら、まずは現在のデータの持ち方や部門間の分断を見直してみてはいかがでしょうか。
不動産業界で起こりやすいデータ分断の課題や、データを活用するために押さえておきたいポイントについては、資料で詳しく解説しています。

不動産DXの成否を分ける「分断されたデータ」との向き合い方

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本資料では、建設・不動産業界におけるデータ連携の課題や、部門・システム間に分散するデータをつなぐための考え方について解説しています。業務のデジタル化やデータ活用を進めるうえで、どのような連携が必要なのかを具体的にご紹介します。

記事を書いた人

所 属:マーケティング部

對馬 陽子

アプレッソ(現:セゾンテクノロジー)入社後、テクニカルセールスとして技術営業や研修、技術イベントなどを担当。Uターンのため退職したのち、2023年4月に遠隔地勤務制度で再入社。プロダクト企画部での経験を経て、現在はマーケティング部でデジタルコンテンツ作成を担当している。
(所属は掲載時のものです)