データ連携基盤導入におけるプロジェクト計画策定ガイド ー計画策定の阻害要因を排除し、リスクを回避するためには

データ連携基盤導入におけるプロジェクト計画策定ガイド

全社的なデータ統合やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を目的として、データ連携基盤(iPaaS)の導入を検討する企業が増加しています。しかし、その一方で、導入に向けた意欲はあるものの、具体的なプロジェクト計画(WBS)を策定できず、検討フェーズから先に進めないという課題に直面する組織が少なくありません。
本コラムでは、データ連携に関する計画策定の段階で停滞している組織に向けて、その状況を打開し、適正なプロジェクト計画を策定するための手法である「アセスメント(事前評価)」について解説します。

データ連携 データ活用

なぜ、データ連携プロジェクトは計画段階で停滞するのか

「やりたいこと」は明確であるにもかかわらず、なぜ実行計画に落とし込むことができないのでしょうか。その主な要因は、連携対象となる既存システムの複雑性や、技術的な不確実性が多岐にわたるため、「何を、どの順序で、どの程度の工数をかけて実施すべきか」という判断材料が不足していることにあります。

特に、これまで部門ごとの個別最適でシステムを運用してきた組織においては、全社横断的な連携のノウハウが蓄積されていません。そのため、現状が正確に把握できていない状態で無理にスケジュールを引こうとしても、根拠のない計画にならざるを得ません。結果として、予算取りやベンダー選定に必要なRFP(提案依頼書)も作成できず、プロジェクトは膠着状態に陥ります。

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不確実な状態でプロジェクトを進めるリスク

計画策定に必要な情報が不足している状態で、ツール導入や開発を先行させた場合、プロジェクトは極めて高い確率で以下の3つの問題に直面します。これらは、プロジェクトの成功を阻害する致命的な要因となります。

スケジュールの乖離と破綻

最大のリスクは、想定していたスケジュールと実作業の乖離です。 事前の調査不足により、既存システムとの接続難易度を過小評価してしまう傾向があります。「APIが存在するため接続可能」と判断していても、実際には仕様上の制約によりデータの取得が困難であったり、想定外のデータ加工処理が必要になるケースが多々あります。 これらの技術的課題が実装フェーズで発覚すると、解決のための追加工数が発生し、当初の工程表は破綻します。結果として、納期の大幅な遅延を招くことになります。

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要件の未確定と手戻り

システム間連携は、単なるデータ転送にとどまらず、業務プロセスそのものに影響を及ぼす取り組みです。しかし、現状の業務フローにおいて、担当者の手作業や属人的な判断が介在している場合、それらを考慮せずに自動化を進めると、システム稼働後に業務が回らなくなる事態が発生します。 また、関係部署間でのデータの更新頻度やセキュリティ基準などの要件定義が曖昧なまま進行すると、テスト段階になって「意図した挙動と異なる」という指摘が相次ぎます。これにより、設計のやり直しやプログラムの修正といった大規模な手戻りが発生します。

隠れコストによる予算超過

不正確な計画に基づく見積りでは、必要なコストが網羅されません。 例えば、セキュリティ要件を満たすためのネットワーク機器の追加費用、データ品質を保つためのクレンジングツールの導入費用、レガシーシステム側の改修費用などが、プロジェクト途中になって「隠れコスト」として顕在化します。 当初予算でこれらが考慮されていない場合、追加費用の捻出が困難となり、機能の削減やプロジェクトの中断を余儀なくされる可能性があります。

計画策定を可能にする「アセスメント」の役割

前述した「計画が立てられない停滞」と「不確実な進行によるリスク」を解消するためには、本格的な開発フェーズの前に、現状調査と要件整理に特化した「アセスメント」を実施することが有効です。

「アセスメント」 とは、ブラックボックス化している現状のシステム資産と業務フローを可視化し、プロジェクトのスコープ(範囲)とリスクを明確にするプロセスです。不透明な要素を事実に基づいて洗い出すことで、憶測ではない、根拠のあるプロジェクト計画を策定することが可能になります。

社内に専任のエンジニアが不在の場合、データ連携の専門的な知見を持つ外部支援を活用することで、客観的かつ精度の高い計画立案が可能となります。次項より、その具体的なプロセスを詳述します。

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アセスメントの具体的なプロセス

プロジェクト計画を確実なものにするため、アセスメントでは「現状調査」と「分析」の2つのフェーズを通じて、曖昧な構想を具体的な実装計画へと落とし込みます。

現状調査フェーズ

まずは、ブラックボックス化している社内システムと業務の実態を正確に把握するための調査を行います。

現状分析とゴールの共有

調査を開始する前に、プロジェクトの目的とゴールを関係部門へ明確に伝えます。単なるシステム調査ではなく、「全社的なデータ活用基盤の構築」や「業務効率化」が目的であることを示し、各部門がどのような協力(資料提供やヒアリング対応)をすべきか、方向性(ダイレクション)を提示します。これにより、調査の抜け漏れや、部門間の協力体制不備による停滞を防ぎます。

各部門ヒアリング

情報システム部門および各業務部門に対し、実態を把握するためのヒアリングを実施します。

  • 情報システム部門: 管理システムの仕様、インフラ環境、セキュリティポリシー等の技術要件を確認します。
  • 務部門:実際の業務におけるデータの入力タイミング、活用方法、手作業での加工有無など、システムログには残らない運用実態を聴取します。特に「例外処理」や「月次特有の処理」など、定常フロー以外の業務も洗い出します。

インターフェースの可視化

ヒアリング結果に基づき、連携対象システムの接続仕様を「IF一覧表」としてドキュメント化します。

  • 技術仕様の網羅:プロトコル(REST, SOAP, FTP, JDBC等)、データ種別(構造化データ・非構造データ)、文字コード(Unicode・UTF-8)、ファイル形式(CSV・PDF・PNG) などを詳細に記載します。
  • 連携先システムの現状一覧化:稼働環境(OS、ミドルウェア)、クラウド/オンプレミスの区分、バージョン情報など、接続性に影響する要素を一覧化します。

データフロー可視化

個別のIF情報だけでなく、システム全体でのデータの流れと構造を可視化します。

  • 論理データフロー:データがどこで発生し、どのシステムを経由して利用されるかという全体の流れを描きます。
  • ER図(データ構造・関係性):各システムが保持するデータ構造とリレーションシップを整理し、システム間でデータ項目がどのように関連しているか(マッピングの整合性)を確認するための基礎資料を作成します。

分析フェーズ

調査で得られた事実に基づき、リスクを評価し、具体的な解決策と導入計画(構想)を策定します。

リスク分析&評価

調査結果から、実現可能性を阻害する要因を特定し、優先度を評価します。

  • ノックアウト条件の特定:「レガシープロトコルで接続手段がない」「セキュリティ要件を満たせない」といった、プロジェクトの致命傷(ノックアウト条件)となるリスクを洗い出します。
  • 難易度と優先度の評価:連携の技術的難易度と業務上の重要度を掛け合わせ、着手すべき優先順位を決定します。

構想作成(グランドデザイン策定)

分析結果を基に、以下の要素を含む包括的な導入構想書を作成します。

  • 現状課題:ヒアリングで明らかになったボトルネック(二重入力、タイムラグ、データの不整合等)を整理し、解決すべき課題を明確にします。
  • 施策・方針:課題に対する具体的な解決アプローチを定義します。
  • グランドデザイン
    • データ連携方式:リアルタイム連携かバッチ連携か、API連携かファイル連携かなど、最適なアーキテクチャー を設計します。
    • マスターデータ方針:複数のシステムに散在するデータのうち、どれを「正(ゴールデンレコード)」とするかの管理方針を定めます。
    • データ活用方針:統合されたデータをBIツールで分析するのか、SaaSへ書き戻して業務利用するのか、活用の出口を定義します。
  • リスク評価:プロジェクト遂行上の残存リスクと、その対策案を提示します。
  • 移行計画:業務影響を最小限に抑えるための、段階的な移行ステップ(ロードマップ)を策定します。
  • 想定体制・役割:自社、ベンダー、支援パートナーの役割分担と、必要なリソース体制を定義します。

アセスメントがもたらす投資対効果(ROI)

計画策定のためにコストと期間を要することに対し、投資対効果を懸念される場合もあります。しかし、不確実なままプロジェクトを開始することによる損失リスクと比較すれば、アセスメントには明確なメリットがあります。

プロジェクト停滞の解消と初速の向上

「何から手をつければよいか分からない」という状態が解消され、具体的なタスクと手順が明確になります。これにより、プロジェクトチームは迷うことなく作業に着手でき、最短期間での立ち上げが可能となります。

コストの適正化と予実管理の精度向上

要件が曖昧な状態での見積もりには、リスク回避のための予備費用(バッファ)が含まれる傾向があります。上流工程を経て要件を明確化することで、不要なバッファを排除し、実態に即した適正なコストでの発注が可能となります。また、隠れコストを事前に把握できるため、予算超過のリスクを抑制できます。

自社主導の体制確立

調査プロセスを通じて、自社のシステム環境や業務課題に対する理解が深まります。これにより、ベンダー依存ではなく、自社が主導権を持って意思決定を行えるプロジェクト体制を構築できます。これは、導入後の安定的な運用保守において重要な要素となります。

確実なプロジェクト遂行に向けて

データ連携基盤の導入は、企業のデータ活用基盤を支える 重要なインフラ投資です。 社内に十分な知見がなく、計画策定が困難な状況下で無理に進めることは、スケジュールの破綻やコスト増大の大きなリスクを伴います。

まずはプロジェクトの初期段階において、アセスメントを通じて現状を正確に把握し、実現可能な計画を策定するプロセスを経ることが、結果としてプロジェクトを最短かつ確実に成功へ導く手段となります。

まとめ

本コラムで解説した通り、データ連携プロジェクトを成功に導くためには、着手前の正確な現状把握と、それに基づく実現可能な計画策定が不可欠です。

セゾンテクノロジーでは、プロジェクト計画の不確実性を排除し、円滑な立ち上げを実現するための「アセスメント(事前評価)」支援サービスを提供しております。数多くの導入実績を持つデータ連携のプロフェッショナルが、貴社のシステム環境や業務フローを可視化し、最適な導入計画の策定を実務面からサポートいたします。

「自社だけで計画を策定するのが難しい」「具体的な進め方について専門家の意見を聞きたい」といった課題をお持ちの方は、ぜひお気軽に当社の「オンライン相談」へお問い合せください。

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記事を書いた人

所 属:データインテグレーションコンサルティング部 ソリューションアーキテクト

K. F

前職では金融機関にて営業職および社内SEを経験。セゾンテクノロジーへ入社後、プリセールスとしてデータ連携基盤に関わる提案支援およびサービス企画を行いながら、金融領域におけるデータ活用法を発信。趣味は、野球観戦・温泉巡り・映画
(所属は掲載時のものです)

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