データ活用で新ビジネスを 創出してきた 専門家が語るモビリティデータ活用の現在地と “つなぐ”ことで広がる未来の可能性

車両の位置情報や走行履歴などのモビリティデータを活用し、法人向け車両管理サービスや個人向け安全運転見守りサービスなどを提供する株式会社スマートドライブ(東京都千代田区)。同社取締役の元垣内広毅氏は、多くの技術開発・事業開発に携わってきた、データ解析の専門家だ。そんな同氏に、そもそも「モビリティデータ」とはどんな特徴を持つデータで、いかに活用されているのか、各種データとつなぐことでどんな価値を引き出せるのかなどについて話を伺った。
※役職や所属、提供サービスは取材時のものです。

大きな可能性を秘めるモビリティデータ、本格活用は始まったばかり

2013年10月設立の御社は、そもそもなぜ「移動」というものに注目してビジネスを始めたのでしょうか。

「移動」は、人類にとって大昔から、生活に密着した大きなテーマでした。その中でも近年は特に、自動運転や電動化といった技術革新、ECやカーシェアといった新サービスの発展など、自動車産業や物流業は百年に一度といわれるほどの大変革時代を迎え、「移動」への関心が世界的に高まっています。

そうした中で弊社代表取締役の北川烈は、移動体のデータ分析を研究していた大学院在学中にこの会社を立ち上げ、モビリティデータの収集・分析の基礎の仕組みをほぼ一人で作るところからビジネスをスタートさせました。学部と大学院で統計解析を専攻し、Web系企業でのデータ活用に取り組んでいた私は、創業から約1年後の2015年1月、2人目の社員としてこの会社に入社し、以来、モビリティデータを活用するための技術開発と事業開発を担当してきました。

具体的にどんなサービスをどんな方に提供しているのですか。

大別して2種類、スマートドライブという名前を前面に出して弊社自身が提供するサービスと、そこで培った技術やノウハウを活かしてお客様のビジネスや取り組みを裏側から支援するサービスとがあります。

まず前者としては、車両管理の効率化やドライバーの安全運転を促進する法人向けサービス「SmartDrive Fleet」や、高齢者などの運転情報をもとに家族が見守る個人向けサービス「SmartDrive Families」などを提供しています。

一方、後者は、たとえばHONDA様の「Honda FLEET MANAGEMENT」のように、車両の位置情報等を利用して業務を改善するようなサービスを自動車メーカーなどが展開するにあたって、弊社の仕組みやノウハウをご活用いただくものです。もちろん、各社様の取り組みは多種多様ですから、その中で弊社に求められる役割もさまざまです。弊社の開発した機器あるいは一般に普及しているドライブレコーダーなどの機器を用いてモビリティデータを集めるというレベルから、収集したモビリティデータを弊社の仕組みを使って解析するレベル、さらにはそれをアプリケーションやサービスに落とし込むレベルまで、大きく3つの階層で各社様のサービスづくりを後押ししています。

そもそも「モビリティデータ」とは、具体的にどんなデータなのですか。

GPSで取得される位置情報が基本ですが、それに付随して得られる情報、たとえば車なら速度や加速度、ハンドルやブレーキの操作履歴、路面の凹凸による振動、ドライブレコーダーで撮影される動画・静止画などもモビリティデータに含まれます。さらに広い意味では、今話題となっている新型コロナウイルスワクチンの超低温輸送における冷蔵庫の温度変化なども、移動に付随して得られるという点で、モビリティデータの一種といえるでしょう。

一般に、モビリティデータを活用することに関して、位置を特定されてプライバシーを侵害される、個人情報を勝手に使われる、といった懸念を抱く方もいらっしゃると思います。しかし、ひとくちにモビリティデータといっても、先ほどお話しした通りさまざまな種類があって、位置情報以外のデータを使って実現できることもたくさんあります。モビリティデータの活用といっても、必ずしも位置情報が必須というわけではないのです。

では実際、モビリティデータは一般にどのような形で利用されているのですか。

やはりもっとも普及しているのはカーナビなどのナビゲーションシステムですね。位置をリアルタイムに把握して、目的地までの道案内に活用するというのは、ここ数十年でごく当たり前のことになりました。スマートフォンの普及により、GPSのデータを活用したサービスも広く普及しています。

ただ、モビリティデータを自ら計測・収集し、普段の生活や企業活動において、いわゆるデータ・ドリブンに活用するような体験が世の中で一般的なものとなっているかというと、実はほとんどなじみがないというのが実情です。たとえば自動車産業は、非常に長い歴史と、自動運転車を実用化できるほどの先端技術を有し、自動車自体の高度化に必要なデータの活用は大きく進んでいます。ところがその一方で、自動車を利用する企業の多くが、当たり前のこととして、自ら走らせている車のデータを取得し、データの利活用をするほどに、モビリティデータ活用の“民主化”が進んでいるかというとそうではなく、今後の伸びしろだらけという状況です。インターネット産業において、ビジネスに関するさまざまなデータを可視化・分析して業務を効率化する、将来を予測する、といったデータ活用が非常に進んでいるのとは対照的な状況ですね。

モビリティデータの活用はまだまだこれからだ、と。

そうですね。ただそれだけに、まずはいろいろなモビリティデータを可視化して把握するだけでも意味があり、そういったシンプルなところからでも、新たな価値が生まれる余地は十分にあります。業務車両の運用状況を可視化するだけで、それをもとに運転日報の作成を自動化したり、ドライバーの満足度向上につなげたりすることができるのです。そういう意味では非常におもしろい、大きな可能性を秘めた領域であると考えています。

弊社のこれまでの取り組みを通じて、位置情報など、今では簡単に取得できるシンプルな情報でも、うまく料理すればさまざまなインサイトを得て、できることがたくさんある、ということがわかってきました。そのため弊社では、最初からやみくもにいろいろなデータを集めてつなぐというより、位置情報をはじめとする基本的なデータをもっとうまく活用して、シンプルに価値提供ができないか、という発想を始点とするアプローチを大事にしています。

もちろん、いろいろなデータ同士を組み合わせてみてはじめて気づくことや、そこから生まれる価値というのも、やはりたくさんあります。ですから、大きな手間をかけずにデータをつないで、本質的な価値を創出する活動に早期にフォーカスできるようになることも非常に重要なんですよね。

“ありもの”のデータでも“つなぐ”ことで新たな価値を創出できる

確かに御社のWebサイトには、モビリティデータの意外な活用や組み合わせによって成果を上げた事例が多数掲載されています。モビリティデータと他の領域のデータをかけ合わせたり、モビリティデータ同士をこれまでにない組み合わせで連携したりすることで、ビジネス・社会の変革や新たな価値の創出に貢献した事例を紹介してください。

たとえば出光興産株式会社様と、位置情報ビッグデータと解析技術を用いた地域活性化支援ソリューションを提供する株式会社ナイトレイ様との取り組みでは、モビリティデータとSNSのデータをかけ合わせて、地域の観光資源の最大化を目的とする実証実験を行いました。車両の位置データや観光客の発信するSNSデータを組み合わせることで、観光客の動きや関心事、目の前を通過されてしまうことの多い観光スポットなどを「見える化」し、観光客の移動をスムーズにするための施策や、知名度がそれほど高くない隠れた名所・観光スポットに誘導を図る施策などに活用しています。

まさに新たな価値を生み出したわけですね。ほかの事例も教えてください。

住友三井オートサービス株式会社様、およびその関連会社様が蓄積されている事故・トラブルのデータと、モビリティデータとを組み合わせることで、お客様ごとのリスクに応じた保険を開発した取り組みも、領域横断的なデータ連携の一例ですね。事故・トラブルのデータと走行データとをかけ合わせると、どんな運転の仕方だと事故を起こしにくいかがわかります。であれば、そういう安全運転をしている方については、保険料を安くするほうがサービスとして公平ですし、その結果として安全運転の促進という、社会に対しての好影響も期待できます。そのように、モビリティデータだけでは決して生まれない価値を、他の領域のデータと連携させることで創出できたケースはたくさんあります。

御社は、データを活用してビジネスや社会に貢献しようとするとき、どんなことに気をつけていますか。

活用に向けて一歩踏み出すときのハードルをできるだけ下げ、継続しやすい形にすることが非常に重要だと考え、お客様にもそのような提案をしています。もちろん、はじめから欲しいデータがすべて揃い、それを的確に分析できる基盤が整えば最高です。しかし、最初からそれをしようとすると、どうしても高価な機器や専門の人員が必要になるので、結局、最初の一手を打つだけで終わってしまう、あるいは取り組むこと自体を諦めてしまう、ということになりがちです。それでは意味がありませんよね。

たとえば位置情報などの基本的なデータを使い、ほかをおおよその推測で補うことで、最初から高価な機器を手配したり、完璧な精度の追求に時間をかけ過ぎたりしなくても、その中で可能な提供価値をうまく組み立てれば、新たな取り組みとして目指す世界観の7~8割方は実は十分に実現できる、といったことは多々あります。ですから、データ活用の目的と現状を見比べて、もっともコストパフォーマンスの高いプロジェクトを設計すべきなのです。最初のハードルをクリアして価値を実感できれば、次のステップとして機器などに投資し、さらに上を目指すことができる。いきなりすべてのことをしようとせずに、無理なくできるところから段階的に進めていくのが、データ活用の肝だと考えています。

今後もそれを基本としてビジネスを進める方針なのですね。

そうですね。特別な機器がなくても、既存の機器や基本的な情報を使って、モビリティデータ活用の価値を感じていただける、いわば導入編のようなサービスを、より積極的に展開していきたいと思っています。価値さえご理解いただければ、「次はこういうことを実現するために、こういう仕組みを導入してはいかがですか」という提案ができるようになりますからね。 極端な話、機器を取りつけなくても、業務車両の鍵管理を電子化して、鍵の貸し出し・返却の状況を可視化するだけで、車の運用状況を把握し、実は車が足りていなから増やすべきだとか、稼働していない車が多いから減らしてコストを削減しようとかいうぐらいのことはできるわけです。そういう“ありもの”の機器や情報を利用して、あるいはうまく組み合わせて、モビリティデータの利用イメージを想起できる、ちょっとした価値を体感していただくところから始める。モビリティデータというのが大きな可能性を秘めたものだからこそ、そういう段階的なサービス提供が必要だと考えています。

最後に、データの連携活用によって新たなビジネスを生み出してきた経験を踏まえて、HULFT Squareというソリューションについての率直な感想をお聞かせください。

先ほどお話しした通り、どうやってユーザーに手間を感じさせずにデータを活用できる状態にまで持っていくか、そのハードルをいかに下げるか、というのは弊社にとって重要なテーマです。その観点から、「つなげる」というところをスムーズに、楽に実現してくれるHULFT Squareは、本当にすばらしいソリューションだと思います。同時に、もうひとつの重要なテーマである「継続的に運用していく」という面も担保されるので、データ活用において、今後このようなソリューションは必須になるのではないでしょうか。

モビリティデータというのは、単体で活用できることもあれば、複数のデータをかけ合わせてはじめてできること、より高い価値の生まれることも多々あります。HULFT Squareを使って、弊社のサービスをさまざまなSaaSやソリューションと連携させれば、また新たな価値を創出できるはず。そういう点でHULFT Squareは非常に魅力的ですし、弊社のマインドに近しいものを感じます。HULFT Squareでつながる仲間に、ぜひ弊社も加えていただきたいと思いますね。

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