サッカーの「飲水タイム」や、企業の「熱中症対策義務化」の「WBGT」(暑さ指数)って何?~「暑さ」もデータで考える時代

マーケティング部の渡辺です。
データやITなどに関するさまざまなことをゆるく書いているコラムです。

あちこちで耳にする「WBGT」(暑さ指数)という言葉

今回は、「やたら暑くなる世の中」で耳にすることが多くなってきた「WBGT」(暑さ指数)について、そもそもどういうものなのか、なぜWBGTが広い分野で利用されているのか、そして暑さに科学的に対処することについてちょっと考えてみたいと思います。

あちこちで耳にする「WBGT」(暑さ指数)という言葉

サッカーでの「飲水タイム」

ここ最近になってからですが、サッカーの試合を観に行くとハーフタイム以外に「飲水タイム」という「短時間の試合中断時間」がある場合があります。

従来は、ハーフタイム以外で試合が一時中断するのは、「VARの判断待ち」とか「誰かが負傷してその治療待ち」などの「試合中に何かが起こってしまった」場合でした。なので、試合中に一時中断が始まったということは何かが起こったシグナルにも思えます。しかし中断理由がわからず「何が起こった?」となったのが私の現地試合観戦中における「最初の飲水タイムとの遭遇」でした。

あるいは現地における「飲水タイム」の体感とはそういう感じで、応援している人々もいったん席に座り、そういえば水分取った方が良いな、と一緒に飲み物を飲んだりしがちです。

すべての試合で飲水タイムがあるわけではなく、試合ごとにあったりなかったりします。夏季の試合なら必ず実施されるわけでもなく、まだ6月なのに飲水タイムがある場合もあります。現地での気候的な体感としても実施判断は妥当に行われている印象はありましたが、実施の有無はどうやって判断しているのだろう?とは思えました。そして、飲水タイムを実施するかの判断で基準になっていたのが「WBGT」(暑さ指数)でした。

企業での「熱中症対策義務化」での判断基準

最近になって一部世間で話題になっているのが、2025年6月から改正労働安全衛生規則が施行されたことにより、企業に対して「熱中症対策」が罰則付きで義務化されたことです。

野外で作業することが多い「建設業」で話題になっていることが多いですが、業界を限定した法的義務ではなく「すべての企業」で対策が義務付けられています。実際に熱中症が原因で起こっている重大事故の統計を確認してみると、建設業以外に「製造業」「運送業」「警備業」「商業」「清掃業」などで事故発生が多くなっていることがわかります。

厚生労働省による「職場における熱中症による死傷者数の状況(2016~2025年)」より
厚生労働省による「職場における熱中症による死傷者数の状況(2016~2025年)」より

努力要請ではなく「罰則付きでの義務化」となっているため、対策を怠った事業者には「6ヶ月以下の拘禁刑(または懲役)または50万円以下の罰金」が科されます。つまり各企業は、対策しないわけにはいかなくなりまして、話題になっています。

暑いくらいで騒ぎ過ぎだ、それくらい我慢すればいいじゃないか、という無理解もあったりしますが、熱中症は人が死んだり後遺症が残ったりする深刻な事故の原因になります。なので、熱帯や亜熱帯の国では夏の日中に野外で働くこと自体が非常識扱いになっていることすらあります。中東では日中の屋外労働が法律で禁止されている国すらあります。

そもそも、「暑すぎるまま働かせる」ことは労働災害防止の観点のみならず、生産性の低下や作業ミスが増えたりする要因になり、さらには離職の原因にもなります。良いビジネスを実現するためにも、本来は対策が必要とされることでした。

そしてこちらでも、「どういう状況で対策実施が義務となるのか」の基準として用いられているのは「WBGT」という数値でした。

WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature)が生まれた経緯

WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature)は、アメリカ海兵隊により1954年に考案された「暑さ」に関する指数です。熱中症リスクを科学的に管理する手段として、サウスカロライナ州パリスアイランドの新兵訓練所の取り組みから生まれました。

パリスアイランドは湿度が高い地域で、しかも訓練が厳しいことで知られるアメリカ海兵隊であるために、熱中症による重大な事故が発生することがあり、そのことが問題となっていました。そこで「どのような気候であればどの程度の強度で訓練してよいか」を科学的に判断する基準として整備されたものがWBGTです。

アメリカ海兵隊ではWBGTの値に応じて訓練場に「グリーンフラッグ」「イエローフラッグ」「レッドフラッグ」「ブラックフラッグ」を掲げ、それに応じて現在の気候で行って良い訓練内容は何かが管理されていました。

日本では「暑さへの対処」としては精神論が長らく横行していました。1980年代になってもなお「水を我慢できないようでは暑さに耐えられる忍耐力が養われない」とか「水を飲むと身体が鍛えられずバテる」などとして、真夏に屋外でスポーツをさせているのに水すら飲ませないようなことも横行していました。それに比べると、はるか前の1950年代にこのような取り組みがなされていたというのは驚くべきことです。

その後、WBGTは世界中に広まり多くの分野で利用されるようになります。アメリカでも「スポーツを実施してよい暑さかどうか」の判断基準として利用されるようになり、さらにはISOにより国際標準となります。それくらいに世界中で信用され利用されている実績のある指標です。

日本では1994年になってようやく、WBGT値に基づいたスポーツにおける熱中症防止が呼びかけられるようになっています。2020年代には、Jリーグが「飲水タイム」の実施基準としても採用するようになります。最近では、天気予報に関連して「熱中症警戒アラート」が出されているのを目にすることがありますが、こちらもWBGT値で判断されて出されています。

WBGTはどうやって算出するか

WBGTがどういう考え方に基づいているかを説明する前に、先に「どういう計算式で求めているか」を紹介してしまいましょう。

  • 屋外での算出式
    • WBGT =(湿球温度×0.7)+(黒球温度×0.2)+(乾球温度×0.1)
  • 屋内での算出式
    • WBGT =(湿球温度×0.7)+(黒球温度×0.3)

なにやら「三種類の温度」をブレンドして計算していることがわかります。また、熱中症対策というと屋外で注意すべきイメージがあるかもしれませんが、WBGTの計算式には「屋内での算出式」がしっかり存在しています。

乾球温度(dry-bulb temperature)

「乾球温度」は、我々が通常「気温」と呼んでいるものです。つまり、普通に温度計を置いて測った温度です。

しかしながら、屋外での算出式では「わずか一割」、屋内での算出式に至っては「考慮されない」温度となっています。我々は従来「気温」で暑いかどうかの判断をしがちでしたが、それでは不十分だったということになります(そもそも気温で判断して問題がなかったなら、WBGTが発明される必要自体が無かったわけですが)。

湿球温度(wet-bulb temperature)

「湿球温度」は、温度計の球部を「水で濡らしたガーゼで包んだ」温度計で測った温度のことです。乾球温度との差異は「水の蒸発による温度低下が考慮される」ことです。すなわち湿度が考慮された温度です。

湿球温度はWBGT値の七割にも及び、この温度が重要であることがわかります。つまり、汗をかいて汗が蒸発することにより体温調整ができるかどうか、がとても重要であることがわかります。

湿度が高いと汗による体温低下が機能しないので低めの気温でも危険であること、およびしっかり汗をかけるように「水分を補給する」必要があり、大量の発汗によって身体から電解質が失われても大丈夫なように「適切な浸透圧で電解質を含んだ水分を補給すべきこと」がわかります。

黒球温度(globe temperature)

「黒球温度」は、「表面を光沢のない黒色で塗装した、直径15cmの薄い銅製の中空の金属球」の中心部で測った温度です。もはや呪術並みに「なぜそんな妙な計測方法なのか」と思えてしまう奇妙さですが、「輻射熱」(ふくしゃねつ)を考慮するためにこのようなことをしています。

人が感じる暑さには、二種類の「暑さ」が関係しています。まずは、「身体に直接接触している空気からの暑さ」、すなわち通常の気温。もう一つが「周囲の環境から放射されてくる赤外線による暑さ」です。

例えばコタツや炭火の焚火では、空気を通してではなく赤外線により熱が「直接」感じられます。また、屋根が猛暑で高温になっている室内に入ると、天井から焼けるような暑さが「直接に」襲い掛かってきます。真夏に地下道に入ると、空気自体の温度は外と大体同じでも「急にひんやり」することがありますが、これは「周囲から浴びていた輻射熱」が地下道では無くなって快適になるからです。

黒色で塗装しているのは、周囲からの熱輻射をしっかり受け取るためで、光沢がない塗装なのは赤外線を反射しないため、中空の金属球で外の空気と切り離すことで「熱輻射を考慮した温度」を測っています。

これら三つの「温度」を組み合わせたものが「WBGT」(暑さ指数)

WBGTがおおよそどういう感じのものかはわかっていただけたでしょうか。「暑い」ことはこれからますます話題になるはずですが、WBGTでは熱中症予防の観点での「暑さ」をこのような考え方で定義していたわけです。気温以外の要因、湿度(あるいは汗による体温低下)と輻射熱を考慮する重要性について考えさせられる計算式ではあります。

また、ここまでの説明でわかった通り、WBGT値の計測には専用の計測機器が必要になります。しかしそれではちょっと大変すぎるので、代わりに参考にできるのが、環境省や日本気象協会が、当日の気象条件から発表している「WBGTの予測値」です。

ただし注意してほしいのは、これはあくまでも「屋外一般での予測値である」ことです。その場所での本当のWBGT値は計測しなければわかりません。特に屋内でのWBGT値は(仕組みを考えると当たり前ですが)、その場で測らなければ正しい値はわかりません。

サッカーの「飲水タイム」でのWBGT

WBGT値を用いた実際の運用がどのように行われているか、最初に話題にしたスポーツでの活用例です。

日本スポーツ協会(JSPO)による熱中症の予防指針

公益財団法人の「日本スポーツ協会」により、熱中症予防の観点で「暑いときにスポーツをして良いか」の目安がまとめられています。

熱中症予防のための運動指針 - 熱中症を防ごう – JSPO

  • WBGT値31以上:運動は原則中止
    • 特別な場合を除くと運動は中止すべき
  • WBGT値28以上:激しい運動は中止(厳重警戒)
    • 激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける
    • 10~20分おきに休憩と水分・塩分補給をする
  •  WBGT値25以上:積極的に休憩(警戒)
    • 積極的に休憩と水分・塩分補給をする
    • 激しい運動では30分おきくらいに休憩をする
  •  WBGT値21以上:注意
    • 熱中症が発生する可能性があるので注意する
    • 積極的に水分・塩分補給をする
  • WBGT値21未満:ほぼ安全
    • 通常は熱中症の危険は少ない

例えば、子供のサッカーチームの面倒を見ているとして、果たして今日は運動して大丈夫なのか?を判断するときに、このような指針が利用できます。例えば、「WBGT値が31を超えているので試合は中止します」とすれば、どうして判断したのかもわかりやすくなります。

ただし、最近は夏の日中にWBGT値が31を超えることは珍しくありません。この基準で運用すると夏の時期には日中に運動できなくなってしまうことが多くなるので、早朝や夕方以降にする、あるいは空調の効いた室内での運動にせざるを得ないことが多くなるはずです(あるいは今や日本は、そんな気候になってしまった)。

Jリーグの「飲水タイム」でのWBGT値

最初に話題にした「サッカーの試合での飲水タイム」は以下のような基準で運用されています。Jリーグで飲水タイムの運用が開始されてしばらく経過したからか、少し工夫されている感じになっています。

2026/27シーズン 飲水タイム、クーリングブレーク実施ルールについて | プレスリリース | 公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)

  • WBGT値31以上
    • クーリングブレーク」を実施
  • WBGT値28以上
    • 飲水タイム」を実施
  •  WBGT値25以上
    • いずれかのチームが希望する場合、「飲水タイム」を実施
  •  WBGT値22以上
    • 両チームが希望する場合、「飲水タイム」を実施
  •  WBGT値22未満
    • 実施なし

加えて「8月の試合は原則として飲水タイムを実施する」ことになっています。私の記憶によるとですが「飲水タイム」が最初に導入されたときには、夏季の期間指定で期間内の試合では飲水タイムは必ず実施だったように思います。しかし今では、それ以外の期間、例えば5月であっても妙に暑い日ならWBGT値次第で飲水タイムが設けられるようになっています。

プロスポーツなので、「測ってみたらWBGT値31以上だったので試合中止します、来場いただいた皆さんはお帰りください」という運用は難しいので、試合中止にするルールは設けられておらず「クーリングブレーク」を設けた上で試合は行うことになっていると思われます。ただし、夏季には日中の試合が原則行われず気温の下がった時間帯の19時キックオフなどになっていて、何も配慮がないわけではなく試合日程レベルでの配慮はされています。

クーリングブレーク

「クーリングブレーク」とは飲水タイムよりも徹底した熱中症対策で、試合を一時中断して飲み物を飲むだけではなく、ハーフタイムでのように一度冷房の効いたベンチ裏に戻って積極的に身体を冷やす休憩時間のことです。熱中症対策の本質は水分摂取ではなく、深部体温を下げることなので、「身体を直接冷やす、より効果の高い休憩時間を設ける」という対策になります。

本来はスポーツ開催に適さないWBGT値31以上での対策として採用しているくらいですから、熱中症対策一般としても(例えば屋外で働く人の対策としても)、飲水タイムのような対策より、クーリングブレークのような対策のほうが効果が高く本来望ましいということになります。

「いずれかのチームが希望する場合」などとなっている理由

純粋に事故防止の観点であるなら、所定の条件を満たす場合には強制的に暑さ対策の休憩をすべきですが、「休憩を取ること」そのものが試合結果に影響してしまう現実があることから、「両チームの意向を伺って実施するかどうか」を決めていると思われます。

休憩が入ると、そこで試合の流れが一度止まります。試合の流れが止まることを前提にした戦い方をすることもできるため、飲水タイムの有無がチームによって有利に働いたり不利に働いたりします。

飲水タイムは休憩すべき時間として設けられているので戦術伝達は禁止されていますが、「雑談をする」ことは禁止されていないため、現実的に飲水タイムを使っての戦術調整が行われています(世の中、何かの仕組みができるとどうしてもそういうことになってしまうようです)。そういうことからも、試合結果に影響する要因であるため「両チームに実施の意向を聞いている」のだろうと思います。

「ハイドレーションブレークは行いません」

また、上記のJリーグからのプレスリリースではわざわざ「FIFAワールドカップ2026™で導入されたハイドレーションブレークは行いませんので、合わせてお知らせいたします」とも書き添えてあります。サッカーファンに不評だったアレはやりません、という表明ですね。

飲水タイムが実質的に戦術調整の時間としても利用されている実態は、チーム側での一種の制度悪用ですが、W杯2026では(よりによって)大会運営側が飲水タイムを「テレビCMを入れる時間」として悪用したのが「ハイドレーションブレーク」でした。WBGT値などお構いなしに、スタジアム全体で空調が効いている試合会場であろうと必ず実施する、3分間もの長すぎる「飲水タイム」でした。

上記のJリーグの実施ルールでは、飲水タイムは「国際サッカー評議会(IFAB)競技規則に従って1分以内を目安とする」とあり、ベンチ裏への移動を伴うクーリングブレークについても「3分間(日影に入り、身体冷却、水分補給を行う)」とあります。わざわざ書いているくらいなので、飲水タイムは国際ルール通りに手短に済ませろ(1分以内)ということなのでしょう。

つまり、W杯のハイドレーションブレークは飲水タイムなのに、Jリーグでのクーリングブレーク並みに長すぎる3分であり、国際サッカー評議会の競技規則すら尊重していなかったわけです。

企業の「熱中症対策義務化」におけるWBGT

次に、世間で話題になっている、2025年6月から罰則付きで義務化された「熱中症対策」の基準についてみてみましょう。

職場における熱中症対策の強化について 厚生労働省

まず、「WBGT値を基準として取り組みを実施すべき」と書かれています。

対策が義務化される状況が「WBGT値(暑さ指数)28℃以上または気温31℃以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて作業を行う場合」と定義されています。WBGT値が利用できない(あるいはWBGTが何か理解できていない)状況も想定してか、気温による条件定義も付されています。

屋外だけに限定されていないので室内での労働もすべて対象ですが、日中にWBGT値が28を超える日はかなりあるのが現実なので、夏はもちろん夏の前後の気温の高い日が広く対象となる法的義務です。

取り組むべきこととしては「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が挙げられています。担当部門はどこで誰なのかを明確にし(体制整備)、どういう熱中症対策を取り、どのようにして熱中症の危険状況をモニタし、リスク軽減のためにどういう手順で何をするか、熱中症が疑われる人が発生した場合にどういう手順で何をするかなどを決め(手順作成)、自社の従業員や関係者に熱中症対策とその手順等について周知教育する(関係者への周知)といった感じでしょうか。

よく行われている対策と、それで十分かどうか

私はこの分野の専門家ではありませんので、企業での熱中症対策でどういう取り組みが望ましいのかはよくわかりません。ただし現在、「空調服の利用」と、「ウェアラブルデバイスでの体温上昇の測定」が良く行われている取り組みであると聞くことがあります。

空調服は涼しくなると導入後の評判が良いことが多いようです。一方で、熱中症対策としては、湿度が高い時には汗が蒸発せず体温低下の効果が限定的になることや、今や珍しくなくなってきた35度を超えるような状況では体温より高温の空気を服の中に取り込んでしまうことで、逆効果になることがあるという指摘もあるようです。

ウェアラブルデバイスについても、熱中症対策で問題となるのは深部体温であるのに対して、ウェアラブルデバイスで直接計測できるのは身体表面の温度だけなので、判断の材料としては慎重に利用すべき場合もあるかもしれません。

スポーツでの対策を参考にするなら、水分と電解質をしっかりとって汗をかけるようにすること(飲水タイム)、定期的に休憩時間を設けること、WBGT値が非常に高い危険な状況なら、冷房が効いたところでしばらく休むなどして体温を直接下げる(クーリングブレーク)対策が考えられるでしょうか。

「暑さ」を科学的に取り扱う手段としてのWBGTについて考える

罰則付きで熱中症対策が義務化され取り組まなければならないので、あまり手がかからない程度でともかくも対策がなされているような状況が多いのではないかと思いますが、WBGT値を用いてより積極的な対策に取り組むことも考えられます。

WBGT値は今では世界中で広く利用されているくらいですから、「暑さ」を数値化して科学的に取り扱う手段として利用できるはずです。

「暑さ」を考慮したプロジェクト管理

労働環境が「暑すぎる」ことは、熱中症対策の義務上の問題であるだけではなく、そもそも労働環境としても望ましいものではありません。暑すぎることで、作業効率の低下や、「作業品質の低下」が起こっているなら良いことではないはずです。体調を崩して休む人が増えているとか、離職が増えているなら人的資源の観点からも望ましくありません。

今や人手不足が深刻な時代、暑さを精神論で乗り切るような時代ではありません。人的資源を無駄に消費した上に進捗や仕事の品質まで悪いのでは経営上良いはずがなく、むしろ非効率な働き方であるとして改善されるべきことです。

そのような改善に取り組むにあたって、WBGT値を用いた数値的な分析が有効なことがあるはずです。私は、屋外での作業の現場について詳しいわけではありませんが、それでもちょっと考えてみると、

  • 現場で行われている作業一覧を書き出す
  • WBGT値ごとに、各作業の生産性を分析してみる
  • WBGT値ごとに、各作業の作業品質(ミスの頻度など)を分析してみる

このようにすれば、暑さが作業にどのような影響を与えているのかを客観的に分析できそうに思えますし(影響が大きいものと小さいものがあるはずです)、どの暑さ対策にどのような効果があるのかを調べることもできるはずです。

  • 暑さ対策を実施した場合としていない場合を比較する
    • 例えばWBGT値が28以上で空調服がある場合とない場合にどの程度の変化があるか?など
  • 暑すぎる状況でもコストをかけて作業をした場合と、無理をせず作業を遅らせた場合のどちらが得かの判断ができる
    • 例えば、対策コストをかけて農作物にとってベストなタイミングで収穫した場合と、無理せず収穫を遅らせることで農作物の等級が下がった場合のどちらがトータルで得か、など

さらにはWBGT値、作業現場で「現在の値はいくつか」を計測することができますし、日本気象協会から、何月何日の何時にどの程度になりそうか予測値も提供されています。であるならば、以下のようなことも可能になるはずです。

  • 分析によりWBGT値の上昇により作業効率が大幅に落ちるとわかった作業を、涼しい時間帯に済ませるルールにする
  • 金曜日に急に猛暑がやってくる予報になっているので、木曜日までに作業AとBとCを終わらせるよう作業計画を変更する
  • WBGT値による作業進捗見込みの変化を踏まえたガントチャートを作成することができる

というような、暑さを考慮した作業の管理や最適化もできるのではないかと思います。さらには、

  • WBGT値の上昇による、作業効率の悪化・品質の低下・人的資源への悪影響を定量化できるなら
    • 暑さ対策に投資することがどれだけプラスになるか効果を数値で判断できる
    • 無人化技術などを導入すべきか、どこまでコストをかけるべきかを判断する新しい材料になる

さらには今後、気温が40度を超える酷暑日がますます増えた状況では、このようなことでも役に立つのではないでしょうか。

  • 発注主に対して「猛暑により作業が遅延しています」と説明をする際に、なぜ休み、なぜ遅れるのか、何をする必要があるのでそうなったのか、どういう根拠で仕方のないことなのかを数値で説明できる
  • あるいは発注主との事前合意で、「WBGT値がどのようになった場合にはこのように対処します」と最初から契約で決めておくことができる
  • 暑さ対策の装備が整っている自社が優位であることを、発注主に数値で示すことができる

マーケティングでの「暑さ」を考慮する手段

天候データは予想以上に多くのことと関連することが知られており、一見(直接には)関係性があまりなさそうなこと、機器の故障率のようなことでも気温や湿度との関連性を調べてみると何かの関連性が見つかることがあります。

人の行動も当然に天候に大きな影響を受けていると考えられますが、気温や湿度よりも、WBGT値の方が人への影響を適切に反映した数値であるとも考えられます。もしそうなら、WBGT値から「暑さによる人々の行動の変化」を読み解くことができる可能性があるのではないでしょうか。

今どの商品が売れるか、人々は今日どのような行動をしていることが多いか(外出している人と自宅に留まった人がそれぞれどれくらいかなど)を予測する手段として利用できる状況があるのではないかと思います。

例えば、気温の高低×WBGTの高低×顧客の年齢に応じて、店に陳列すべき商品や、提供すべきメニューを適切に判断するようなこともできるかもしれません。

WBGT値の進んだ活用を現実にする「つなぐ」技術

WBGT値を用いた積極的な取り組みが考えられることについて、専門家ではない人があれこれ想像してみた程度で恐縮ではありますが、少し考えてみました。

今後ますます夏場の暑さは深刻な問題になるはずであり、そうなると「暑さ」にうまく対処できる組織かどうかで、自社と他社に差が付く時代になってくるはずです。データを活用して暑さ対策に取り組むことができたなら、他社に対して有利な要因になるのではないかと思います。

しかしながら、話題にしてきたような「データ分析の可能性」を実際に現実にするためには、WBGT値そのものをデータとして用意するだけではなく、それ以外の多くのデータを社内のあちこちから取得してWBGT値と組み合わせて活用できる状況を用意する必要があります。

例えば、現場で誰がいつ何をしたかの作業記録データ、作業後の成果物の検査結果データ、などを参照し、それをさらに分析で利用できる形に前処理して用意しないと、私が考えた最初の分析すらできません。

データ分析を行うためにも、分析結果をビジネスで活用するためにも「データ連携」をする必要がある

そもそものWBGT値についても、乾球温度・湿球温度・黒球温度という「三つの計測方法で得られたデータ」をデータ連携して組み合わせたものであり、この三つのデータの組み合わせになるまでにはどのデータでどう計算すべきなのかおそらく試行錯誤を経ているはずです。

さらには、アメリカ海兵隊ではWBGTの値に応じて訓練場に「グリーンフラッグ」「イエローフラッグ」「レッドフラッグ」「ブラックフラッグ」を掲げ熱中症予防の手段として活用していたわけですが、これはいわば「データ分析で得られた結論を外部システムにデータ連携してビジネス上の成果を得る」取り組みの一種だと考えることもできます。

例えば「算出したWBGT値に応じて暑さ対策指示を作業現場に自動送信する」とか「WBGT値と作業の進行状況に応じて、今後の作業進捗見通しを関係する企業に電子メールで自動通知する」のようにして、同じように分析結果から成果を生み出すアクションにつなげることができます。分析結果を得るために必要なデータを用意するためにも、得られた分析結果から成果を生み出すためにも、このように「連携処理を実現できること」が重要になってきます。

では、そのような「データ連携ができる環境」はどう実現すればよいのでしょうか。

GUIだけでデータを自由自在に「つなぐ」手段がある

当社では、多種多様なデータやソフトウェア、クラウドサービスなどをGUIだけで自在にデータ連携できるプロダクト「DataSpider」や「HULFT Square」を提供させていただいています。

データを分析して成果を出そうとしたら、その前にデータをあちこちから用意する必要があります。さらにはデータ活用で成果を出すためには、あれこれ試しての試行錯誤がどうしても必要になります。そのためには試行錯誤をするごとに「分析実施のために必要なデータを新たに用意する手間」が生じることになり、現実のデータ活用の取り組みでは、分析作業そのものよりも、そのような準備の手間が大変で取り組みがうまく進められなかったりします。

データ連携の必要性、あるいはデータ連携のために専用のツールやクラウドサービスがどうして必要なのか、すぐにはわかってもらいにくいこともあるのですが、我々のプロダクトは「そういう状況」で「データ分析をしっかり行えるだけのデータが揃った状況にできる」「得られた分析結果から成果につながるアクションをする作りこみができる」手段として長年にわたり支持を頂いております。

暑くなるばかりの時代に「暑さ」への高度な対応能力の実現で一歩先んじるためにも、データやシステムを「つなぐ」手段として「DataSpider」や「HULFT Square」の活用を検討いただき、「暑さ」もデータで考える時代に備えていただければと思います。

記事を書いた人

所 属:マーケティング部 デジタルマーケティング課 所属

渡辺 亮

・2017年 株式会社アプレッソより転籍
・大学で情報工学(人工知能の研究室)を専攻したあと、スタートアップの開発部で苦労していました
・中小企業診断士(2024年時点)
・画像:弊社で昔使われていた「フクスケ」さんを私が乗っ取りました
(所属は掲載時のものです)