公開鍵暗号 / 電子署名 / 一方向性関数
公開鍵暗号 / 電子署名 / 一方向性関数
データ活用やDX成功に必要な考え方を、各種キーワードの解説で理解できる用語解説集です。
今回は、インターネットの安全安心そのものを支えている超重要な存在、公開鍵暗号技術について解説をします。
公開鍵暗号・電子署名とは
公開鍵暗号(Public-key cryptography)とは、「データを暗号化するときに使うパスワード」(公開鍵)と「暗号化されたデータを復号するときに使うパスワード」(秘密鍵)がそれぞれ別のパスワードになっている暗号技術のことです。インターネット上での安全安心なデータ転送を実現する技術の基礎として広範に利用されています。
電子署名(Electronic signature)とは、紙の書類における署名捺印のように、デジタルデータ上で特定の意思表明がなされたことを証明可能にする技術で、公開鍵暗号の秘密鍵と公開鍵を逆にして使うことで実現されます。デジタルデータ上での法的意思表明の実現手段として広範囲に用いられ、ブロックチェーンを実現している技術の一つでもあります。
一方向性関数(One-Way Function)は公開鍵暗号を実現する技術的なキーとなっている部分で、順方向の演算は実用的に行えるけれども、それに対応する逆方向の演算は計算量が多くなり実質的に実施できないような処理のことです。具体的には素因数分解の困難性が利用されていることがあります。
「公開鍵暗号」とは何か
「公開鍵暗号」は、現在のインターネット(あるいはITあるいは現代社会そのもの)の安全安心を支えている技術です。この技術無しには社会が成り立たないほどの、現代において最高クラスに重要な技術でもあります。
しかしながら公開鍵暗号、直感的に解りにくいところが多々あります。そこでこれから、「どういうものか」「どうして必要になったのか」「技術的にどのようにすごいのか」などについて、説明をしてみたいと思います。
「データを暗号化する」と聞いてどういうイメージですか?
「公開鍵暗号」とは、ある特徴をもった暗号技術のことです。つまり、これからする話は暗号の話になります。では、「データを暗号化する」と聞いてどういうことをイメージするでしょうか。例えば以下のような「パスワードを用いてデータを秘密にでき、そのことでデータの取り扱いを安全にできるもの」というようなイメージではないでしょうか。
- 暗号化
- 「暗号化したい元のデータ」(平文)に「パスワード」を設定して暗号化する
- パスワードを知らない人は、元のデータに戻すことが出来なくなる
- 暗号化することでデータの秘密が守られる
- 復号
- 「暗号化したデータ」(暗号文)を、「パスワード」を用いて復号する
- 元のデータ(平文)に戻ることで再度データを利用可能になる
「暗号技術とはどのようにして活用するものか」を改めて書くとこういうことになるかと思います。
このような「従来からの方式の暗号」(共通鍵暗号)については、こちらの記事で詳しく解説を行っています。
⇒共通鍵暗号 / DES / AES(Advanced Encryption Standard)|用語集
使い方はほとんど同じだけれども「パスワードが二種類」なのが「公開鍵暗号」
今回話題にする「公開鍵暗号」についても、利用目的については上記とおおむねは同じです。しかし、「パスワード」に相当するものが二種類になっているところが大きく異なります。
- 暗号化(公開鍵暗号での)
- 「暗号化したい元のデータ」(平文)に「公開鍵」(一種のパスワード)を設定して暗号化する
- 暗号化することでデータの秘密が守られる
- 復号(公開鍵暗号での)
- 「暗号化したデータ」(暗号文)を、「秘密鍵」(一種のパスワード)を用いて復号する
- 元のデータ(平文)に戻ることで再度データを利用可能になる
つまり、「暗号化するときに用いるパスワード」と「元のデータの戻す(復号)で用いるパスワード」がそれぞれ別になっている暗号が「公開鍵暗号」です。それぞれには、以下のような名前もついています。
- 公開鍵(Public Key):暗号化するときに利用するパスワード
- 秘密鍵(Secret Key):平文(元のデータ)に利用するパスワード
以上が「公開鍵暗号とはどういう仕組みか?」の「最低限の説明」です。でも、今一つ何のことやらわからず、「一つで済む鍵(パスワード)をどうしてわざわざ二種類にしてややこしくするのか」とか「このようなものを一体何に使うのか?」と思えてしまうかもしれません。
しかし、このような「何に使うのかよくわからない」感じすらする技術が、「インターネットそのもの、あるいはITそのものの安全安心を支えている超重要な技術である」ことをこれから紹介します。
「共通鍵暗号」ではネット通販に必要な安全安心が実現できない
今ではIT活用はすっかり世の中に広く普及しました。業務での利用はもちろん、日常生活においても広く活用されるようになりました。この記事もインターネット経由で読んでいただいているわけですが、インターネット活用で問題になるのは「通信経路でのデータの安全性が保障されない」ことです。
インターネットは「世界中の誰でも通信インフラの一部として参加できる」オープンな通信ネットワークであり、だからこそ全世界を覆うまでに急速に大発展しました。しかし一方で、通信が途中で誰が管理するどこを通るかわからず、途中でデータを覗かれたり改ざんされたりするリスクもあります。
インターネット経由で大事なデータを送信できるようにする「暗号化」
インターネットはもともと、世界中の大学をつなぐ学術利用目的で利用され始めたので、通信経路でデータが覗かれてしまう可能性があることは大きな問題ではありませんでした。しかしながら「ビジネスで活用したい」のなら、そういうことでは困ります。
そこで利用が必要となってくるのが「暗号技術」です。送信前にデータを暗号化しておけば、通信経路上でデータを覗かれたとしても内容は解りません。しかしそこで大きな制限となってくるのが「データの送信先に暗号化で用いるパスワードをどうやって届けるのか」の大問題です。
- インターネットは通信経路でデータを覗かれる可能性がある
- データを暗号化してから送信すれば、通信経路で覗かれる問題は解消できてビジネス利用が可能になってくる
- そのためには暗号化に用いる「パスワード」を安全に届けておく必要がある
インターネット経由でのデータ送信は安全ではないからこそ暗号技術を利用したいわけですから、パスワードをインターネットで送付するわけにはいきません。別途「何らかの安全な手段」でのパスワード共有が望まれることになります。
言い換えれば、「暗号化によりAさんからBさんに安全にデータを届けられる」状況とは、実は「AさんからBさんにパスワードを安全に共有できる手段が別途ある」ことが前提となっており、暗号化によって新たな安全安心は発生しておらず「既存の安全安心を再利用しているに過ぎない」ことが解ります。
「インターネット上で初めて会った人」に安全安心にデータを送付するには?
この制約は、例えば「Webサイトを作ってインターネット通販を実現したい」場合に大きな問題となります。
注文を受け付けて、クレジットカードなどで決済するためには、名前や住所などのプライバシー、クレジットカード情報などの漏洩できない情報を送付してもらう必要がありますが、「ネット上のショップに来てもらったお客さんと、事前に安全にパスワードを共有しておく」ことは現実的に期待しにくい前提です。
つまり、「パスワードで暗号化して送付する」仕組みでは、インターネット外ですでに知り合いであるような人としか安全にやり取りができない、いわば「一見さんお断り」のようなことしかできなくなってしまうわけです。それでは商売になりません。
問題を解決する「公開鍵暗号」
この状況を何とかしてくれるのが「公開鍵暗号」です。すでに説明した通りに、公開鍵暗号とは、「データを暗号化するときに使う鍵(パスワード)」と「暗号化されたデータを元に戻すときに使う鍵」が、異なるものになっている暗号技術のことでした。
公開鍵暗号を以下のように利用することで、「事前にパスワードを共有する前提なし」でも、暗号化によって保護されたデータ転送が実現可能になります。
- 鍵のペアを生成する
- 暗号化するときに利用するパスワード(公開鍵)
- 暗号化されたデータを元に戻すときに利用するパスワード(秘密鍵)
- 「暗号化するときに利用するパスワード」をインターネット上で一般公開する
- 私に対して、データを送信したい人は:
- ネット上で公開されている「暗号化するときに利用するパスワード」を用いて、データを暗号化する
- 暗号化されたデータを元に戻すパスワードは別で、そちらは公開されていないので元のデータに戻すことはできない。
- データの安全安心を保ったまま送信できる
- 受け取った「暗号化されたデータ」は、公開されていない「データを元に戻すときに利用するパスワード」で元に戻すことができる
また、このような使い方をすることから「暗号化するときに利用するパスワード」のことを「公開鍵(Public key)」と呼び、「暗号化されたデータを元に戻すときに利用するパスワード」のことを「秘密鍵(Secret key)」と呼びます。
しかし、本質的な困難がある「公開鍵暗号」の実現
なかなかよく考えられた仕組みですが、ここまでの説明は「そういう仕組みがあれば素晴らしい」というだけの話です。このような仕組みを実際に実現できる「技術的な仕組み」がなければ、絵に描いた餅に過ぎません。
実際のところ世の中では、ビジネス側から生まれた優れた要望が、残念ながら技術的に実現できないことは珍しいことではありません。公開鍵暗号についても、凡人レベルでは「ちょっと実現は無理なんじゃないですか?」と思える、「根本的に難しいところ」(技術的に無理筋がする感じ)があります。
逆向きに計算すれば解けますよね?
公開鍵暗号で暗号化する場合、「公開されている鍵(パスワード)」と「公開されているアルゴリズム」を使って暗号化処理をするわけですから、「秘密になっている部分が全くない」ことになります。
- 共通鍵暗号(古典的な暗号):AES暗号など
- 暗号化アルゴリズム:公開されている
- 暗号化処理で用いるパスワード:秘密情報
- 公開鍵暗号
- 暗号化アルゴリズム:公開されている
- 暗号化処理で用いるパスワード:公開されている
共通鍵暗号ならパスワードが解らない前提があります。しかし公開鍵暗号ではパスワードも秘密ではありません。よって、「暗号化処理に際して具体的にどういう演算処理をしたのか」秘密の部分を作ることが出来ないのです。
- 共通鍵暗号
- 元データ+パスワード → 演算処理 → 演算処理 → ... → 演算処理 → 暗号化データ
- どういう処理をしているかは秘密ではないが、処理で用いているパラメータ(パスワード)が秘密
- 公開鍵暗号
- 元データ+公開鍵 → 演算処理 → 演算処理 → ... → 演算処理 → 暗号化データ
- どういう処理をしているかは秘密ではないし、処理で用いているパラメータ(公開鍵)も秘密ではないため、どういう処理をしたのか全て丸わかりになっている
つまり、公開鍵暗号は仕組み上必然的に「どういう演算処理をして暗号化したのか、全部丸わかり」になってしまうのです。行った処理が全部解ってしまうのなら「全ての演算処理を逆向きに実行する」ことで元のデータまで戻せてしまいます。元の処理が「三倍する」なら「三で割る」、「7を足す」なら「7を引く」というように逆に計算すれば当然に元のデータに戻せてしまいますよね?
- 「逆向きに実行すればよい」の例
- 元データ+公開鍵 → 演算A(3倍にする) → 演算B(7を足す) → ... → 演算C(規則に従ってビットを入れ替える) → 暗号化データ
- 元データ ← 逆演算A(3で割る) ← 逆演算B(7を引く) ← ... ← 逆演算C(ビットを入れ替える処理を逆に実行) ← 暗号化データ+公開鍵
実現できれば大変素晴らしいことは解りました、しかしこのように「逆向きに計算すれば解読できますよね?」により実現が本質的に難しそうに思えるところがあります。少なくとも凡人にとっては、そうとしか思えない厳しい状況です。
「公開鍵暗号」を実現する「一方向性関数」
ところが、このような状況を何とかする方法が考えられており、公開鍵暗号は実用化されています。果たしてどうやって解決を図ったのかというと、「実行すべき逆演算は解っている」が「計算にかかる演算量が実用的な時間内では実質的に逆演算を実施できない」という処理を挟むことにより、どういう処理をすべきかは解っていても「実質的に計算できなくする」ことで解決が図られています。
※「計算する方法は理論上存在するが、必要な計算量が多すぎて実質実施できない」ような状況についてはこちらの記事もご覧ください。
⇒アルゴリズム / 計算複雑性理論(computational complexity theory) / P / NP|用語集
- 「公開鍵暗号」実現のポイントになっている発想
- 元データ → ... → 演算X(計算できる)→ ... → 暗号化データ
- 元データ ← ... ← 逆演算X(計算量が多すぎて現実的に計算できない) ← ... ← 暗号化データ
つまり「AからBへの処理」は実用的な演算量で処理できるけれども、「BからAに戻す逆向きの処理」は計算量が多すぎて現実的に計算できない、ので暗号解読できないという仕組みです。
このような性質を持つ処理のことを「一方向性関数(One-Way Function)」と呼び、これが今や「現代社会の安全安心そのものを支える技術」となった公開鍵暗号を成立させている、いわばキーとなるアイディアとなっています。
「一方向性関数」の具体例
「一方向性関数」の解りやすい具体例としては、「素因数分解」があります。
「素数と素数を掛け算する処理」は実用的な計算量で実施できるけれども、その逆の演算処理である「素因数分解して元に戻す逆方向の処理」となると大量の計算が必要になってしまい、非常に大きな数字の素因数分解となると現実的に答えを求めることができなくなります。
- 順方向の計算(手計算でも現実的に実施できる)
- 素数同士の掛け算(本当に素数):
104381×103687=10822952747
- 素数同士の掛け算(本当に素数):
- 逆方向の計算(理論上は可能だが現実的には計算困難)
- 10822952747を因数分解してください:
それはちょっと…
- 10822952747を因数分解してください:
6桁の素数同士の掛け算は、手計算でも問題なく実施できる程度でしかありません。しかしその逆演算、11桁の数値の素因数分解となると手計算は絶望的な困難さになります。
そして、現在広く使われている公開鍵暗号では、素因数分解が「一方向性関数」として用いられていることが多くなっています(他には「離散対数問題」「楕円曲線離散対数問題」が利用されていることもあります)。
- 公開鍵暗号
- 元データ → ... → 桁数の大きい素数同士の掛け算(計算できる)→ ... → 暗号化データ
- 元データ ← ... ← 桁数の大きい合成数の素因数分解(計算量が多すぎて現実的に計算できない) ← ... ← 暗号化データ
公開鍵暗号はITでの安全安心を支えている超重要な技術ですが、その実現の鍵となっているのは「一方向性関数」です。具体的には多くの場合「素因数分解」が利用されています。
学校の数学の授業で、素数や素因数分解を習ったときに、これが何の役に立つんだ?と思った人もいるかもしれませんが、実は素因数分解なしには現代社会は成り立たないくらいの重要要素となっています。
「電子署名」を実現する手段でもある公開鍵暗号
ここまで紹介してきたことだけでも十分にすごいわけですが、公開鍵暗号技術は「ITの安全安心の実現」において、さらにもう一つ非常に重要なことを実現する手段となっています。
紙の書類では「サイン」や「印鑑」が果たしてきたような、デジタルデータでビジネスを遂行するにあたって絶対に必要な機能である「電子署名」を実現するのにも使われています。
「公開鍵」と「秘密鍵」を逆にしてみたら?
公開鍵暗号とは、「暗号化する時のパスワード」と「暗号化したデータを元に戻す時のパスワード」が異なる技術です。これまでの話題では、「暗号化する時のパスワード」を公開鍵として利用しました。しかし「公開する鍵を逆にしたら」どうなるでしょうか?
- 暗号化
- 「暗号化したい元のデータ」(平文)に「秘密鍵」を設定して暗号化する
- 秘密鍵なので暗号化できるのは私だけ
- 復号
- 「暗号化したデータ」(暗号文)を、「公開鍵」を用いて復号する
- 暗号化されたデータを元に戻す処理は誰にでもできる、一方で暗号化はできない
今度は逆に「私だけが暗号化できて、誰でも元のデータに戻せる」わけです、情報を秘匿する手段としては「まるでコントのようなナンセンスな状況」です。
しかし、この状況を以下のように「考えなおしてみる」ことで、暗号化ではなく電子データに対する「電子的な印鑑」を実現する、非常に重要な使い方が実現できたことになります。
- 電子署名(暗号化)
- データを秘匿する手段ではなく「そのデータに印鑑を押す」つまり「意思表明の手段」として活用する
- 「電子署名したい元のデータ」(平文)を「秘密鍵」により暗号化する。秘密鍵を持っているのは私だけなので、この処理(電子署名/暗号化)ができるのは私だけ。
- 電子署名の確認(復号)
- 「電子署名/暗号化されたデータ」(暗号文)を「公開鍵」を用いて誰でも元に戻すことができ、「元のデータと一致する」ことを誰でも「確認・検証」できる。
- 秘密鍵を持っていない人には、そのような「署名(暗号化)されたデータ」を作ることができない
- よって、「秘密鍵の持ち主がそのデータに対し、持ち主にしか実施できないことをした」(その人が意思表明した)ことの証明になる。
電子署名はどのように使うか
例えば、「Wordで作った契約書」があるとします。電子データは紙の文書と違って、複製できますし内容の改ざんもできます。電子データで契約書を作っても、後から内容の改ざんができてしまうのでは、どういう約束をしたのかわからなくなってしまいます。
そこで、契約書を電子的に作ったというのに、それを一度紙に印刷してから、手書きで署名をして印鑑を押して郵送するようなことが行われたりしてきました。「デジタルデータは改ざんできること」が本質的なことなので、「Word上に印鑑を押したような画像を埋め込む機能」を作ったとて、印鑑画像を改ざんできるため印鑑の代わりにはなりません。
しかし公開鍵暗号を用いれば、電子データのみで印鑑で行うような「意思表明」を行うことができます。
- Wordなどにより電子データで契約書を作成する
- 「契約書のデータ」を「私の秘密鍵」(暗号化する鍵)で暗号化することで、「電子署名済みの契約書」を作ります。この処理は他の人には実施できないため、鍵の持ち主が「意思表明をした」ことが客観的に確認可能になります。
- 私以外の人は「私の公開鍵」(暗号化されたデータを元に戻す鍵)を使うことで、「電子署名済みの契約書」を「契約書のデータ」に戻すことができます。
- そのことにより、その「契約書のデータ」に、「私にしか利用できない“秘密鍵を用いた処理”」が行われていることが他の人にも確認でき、秘密鍵による意思表明がなされていることがわかります。
※実際の電子署名の利用では、契約書のデータ本体そのものを秘密鍵で暗号化する処理は行わず(データ量が多すぎて処理が大変なので)、「契約書のデータ」からハッシュ関数を用いて「ハッシュ値(ダイジェスト値)」を求め、その値を電子署名(暗号化)することで、実質的に同じ状況を実現しています。
電子署名は、契約書などに同意したことの表明、著作権などデータの所有権の表明など、デジタルデータ上での法的な意思表明を組み立てる手段として広範に利用されており、こちらも現在社会を広範に支えている、非常に重要な基礎技術となっています。
例えば、暗号資産を実現しているブロックチェーンの実現でも公開鍵暗号を用いた電子署名が重要な技術要素となっており、例えばビットコインの「アドレス」(銀行口座であるなら口座番号のようなもの)とは実は「電子署名の公開鍵」となっています。ブロックチェーン上の特定の所有権が自分にあることは、「その公開鍵(アドレス)に対応する秘密鍵による電子署名がなされている」ことで表明されています。
「有用な活用方法」と「技術」が、うまく組み合わさっている例としての公開鍵暗号
公開鍵暗号において「なかなかに稀有なこと」なのは、技術として高度なことを実現していることに加えて、その活用(ビジネス側)についてもよく考えられていることではないかと思います。
世の中では「技術と応用(ビジネス)がうまく組み合わさらない」ことが多い
日本は技術立国を自称していますし、日本中の多くの社でも技術力が大事であるとして技術開発が進められていることは多いはずです。しかしながら技術開発でよくある悩みは、「技術」と「応用(ビジネス)」がうまく組み合わさらないことが多いことです。
技術の研究や開発に成功したものの「何の役に立つのかわからない」と言われてしまうようなことがどうもあります。技術開発とはそもそも本質的にそういうところがあるので、儲かる研究開発だけをしなさい、と言われても難しいところがあります。
一方でニーズに深く根差していればうまくゆくかというとそうでもありません。○○があったら革新的なビジネスができる(例:洗濯物を自動で取り込んで畳めるロボットがあったなら)、のようなことはどんどん考えることが出来ますが、技術的にそもそも実現できないことが多くなり、要望を無理押ししても技術側におかしなことになりやすいところがあります。
そのような技術開発に関するよくある悩みを踏まえた上で考えてみると、公開鍵暗号とは、有用な活用方法と技術的に難しいことを実現することが、実に素晴らしく組み合わさっている稀有な例に思えてきます。
「できること」(技術的シーズ)を「実現すれば良いことが起こる」(ニーズ)とうまく組み合わせる
そういうこともあって、技術とビジネスの両方が解っていないとダメだ、と言われるのではないかと思います。しかしながら、私や皆さんがスティーブジョブスのようなことを出来るかというと現実的には難しいのではないかと思います。
全体を高度に見渡した取り組みは難しいなら、「技術はあるが」「データは用意したが」「クラウドを導入したが」が一方ではありつつ、日々の業務で「こういうことが出来たら良いんだけどなあ」があり、「できること」(技術的シーズ)と「実現すれば変わること」(ニーズ)を、「なんとか気が付いて組み合わせること」が我々にできることではないでしょうか。
あるいは、どこの社でも「できること」と「できれば変わること(要望)」がたくさん埋もれているけれども、「組み合わせ方に気が付いていない」ことが原因で活用できていないのかもしれません。
「既存のものをうまく組み合わせて活用する手段」として活躍する「つなぐ」技術
今回の話題においても、「電子署名という技術があるのならぜひ活用したい」と思ったのなら、実際の取り組みで必要になるのは「うまい組み合わせ方を見つける」ことではないかと思います。
現実的に電子署名を利用開始することとは、各種のクラウドサービスとして提供されている電子署名サービスを利用開始するか、パッケージソフトウェアに備わっている機能を利用することになりますが、電子署名が出来るようになっただけでは成果にはなりません。
電子署名は「何かのデータ」に対して行いますが、データは社内のあちこちにある「別のシステムやクラウド」に様々な場所とフォーマットで散在しているはずです。
さらには、自社のビジネス活動においてうまく活用するポイントを見つけることで結果が得られるわけですから、「データ」および「電子署名の機能」を「ビジネス」にうまく組み込む必要があり、現場で試行錯誤しつつ、成果が出る使い方を見つけて作りこむことが必要になるはずです。
「つなぐ」技術を活用ください
このような各種の「連携処理」を、「GUIだけ」で効率的に開発できる手段が存在します。「EAI」や「ETL」、「iPaaS」と呼ばれる、「DataSpider」や「HULFT Square」などの「つなぐ」技術です。これらを活用することで、新旧システムをスムーズかつ効率的に連携させることができます(詳しくは記事の末尾をご覧ください)。
「ITの安全安心」を支えている公開鍵暗号に迫る危機(量子コンピュータ)
そしてもう一つ意識したいのは、「世の中のITシステムの安全安心」のかなりの部分が実は公開鍵暗号技術に依存してしまっていることです。あるいは、公開鍵暗号を実現している「一方向性関数」(多くの場合には素因数分解の困難性)の安全性が保たれていることが、ITに関連した安全安心を実現する広範囲の前提となっていることです。
社会やビジネスでのIT活用が進むにつれて、「もしもITが使えなくなった時」のことを考えておくこともますます重要になりつつあります。システム障害でデータが全部消えてしまったら自社は存続できるだろうかとか、クラウドサービスが非常に大規模な障害を起こしたときに自社ビジネスは維持できるだろうか、とか。そういうことは「どの組織でも考えておくべき」ことになりました。
公開鍵暗号は、あまりにも多くのことを支える基盤となっている技術です。インターネット上での安全安心な通信の実現の基礎であり、デジタルな意思表明やデジタルな所有権表明などの法的な行為の実現においても広範に基礎となっています。例えばAWSが大障害を起こしたら世の中に大変な影響が及ぶように、公開鍵暗号に何かがあった場合には世の中に大変な影響が及ぶことになります。
そして現在、現実に危惧されつつあるのが「量子コンピュータが実用化に向けて進みつつある」ことによる影響です。量子コンピュータが十分に実用化されると「素因数分解が困難な計算ではなくなる」、つまり広範に利用されている公開鍵暗号の安全性が維持できなくなる可能性が出てきています。
※こちらの話題について近日中に執筆する予定です。併せてご覧いただけば幸いです。
⇒耐量子暗号|用語集
関係するキーワード(さらに理解するために)
-
耐量子計算機暗号(PQC: Post-Quantum Cryptography)
- EAI
- システム間をデータ連携して「つなぐ」考え方で、様々なデータやシステムを自在につなぐ手段です。IT利活用をうまく進める考え方として、クラウド時代になるずっと前から、活躍してきた考え方です。
- ETL
- 昨今盛んに取り組まれているデータ活用の取り組みでは、データの分析作業そのものではなく、オンプレミスからクラウドまで、あちこちに散在するデータを集めてくる作業や前処理が実作業の大半を占めます。そのような処理を効率的に実現する手段です。
- iPaaS
- 様々なクラウドを外部のシステムやデータと、GUI上での操作だけで「つなぐ」クラウドサービスのことをiPaaSと呼びます。
「iPaaS」や「つなぐ」技術に興味がありますか?
オンプレミスにあるITシステムからクラウドサービスまで、様々なデータやシステムを自在に連携し、IT利活用をうまく成功させる製品を実際に試してみてください。
「つなぐ」ツールの決定版、データ連携ソフトウェア「DataSpider」および、データ連携プラットフォーム「HULFT Square」
当社で開発販売しているデータ連携ツール「DataSpider」は長年の実績がある「つなぐ」ツールです。データ連携プラットフォーム「HULFT Square」はDataSpiderの技術を用いて開発された「つなぐ」クラウドサービスです。
通常のプログラミングのようにコードを書くこと無くGUIだけ(ノーコード)で開発できるので、自社のビジネスをよく理解している業務の現場が自ら活用に取り組めることも特徴です。
DataSpider / HULFT Squareの「つなぐ」技術を試してみてください:
簡易な連携ツールならば世の中に多くありますが、GUIだけで利用でき、プログラマではなくても十分に使える使いやすさをもちつつ、「高い開発生産性」「業務の基盤(プロフェッショナルユース)を担えるだけの本格的な性能」を備えています。
IT利活用の成功を妨げている「バラバラになったシステムやデータをつなぐ」問題をスムーズに解決することができます。無料体験版や、無償で実際使ってみることができるハンズオンも定期開催しておりますので、ぜひ一度お試しいただけますと幸いです。
「HULFT Square」で貴社のビジネスが変えられるか「PoC」をしてみませんか:
貴社のビジネスで「つなぐ」がどう活用できるのか、データ連携を用いた課題解決の実現可能性や得られる効果検証を行ってみませんか?
- SaaSとのデータ連携を自動化したいが、その実現可能性を確認したい
- データ利活用に向けて進めたいがシステム連携に課題がある
- DXの実現に向けてデータ連携基盤の検討をしたい
用語集 コラム一覧
英数字・記号
- 2025年の崖
- 5G
- AI
- API【詳細版】
- API基盤・APIマネジメント【詳細版】
- BCP
- BI
- BPR
- CCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)【詳細版】
- Chain-of-Thoughtプロンプティング【詳細版】
- ChatGPT(Chat Generative Pre-trained Transformer)【詳細版】
- CRM
- CX
- D2C
- DBaaS
- DevOps
- DWH【詳細版】
- DX認定
- DX銘柄
- DXレポート
- EAI【詳細版】
- EDI
- EDINET【詳細版】
- ERP
- ETL【詳細版】
- Excel連携【詳細版】
- Few-shotプロンプティング / Few-shot Learning【詳細版】
- FIPS140【詳細版】
- FTP
- GDPR(EU一般データ保護規則)【詳細版】
- Generated Knowledgeプロンプティング(知識生成プロンプティング)【詳細版】
- GIGAスクール構想
- GUI
- IaaS【詳細版】
- IoT
- iPaaS【詳細版】
- MaaS
- MDM
- MFT(Managed File Transfer)【詳細版】
- MJ+(行政事務標準文字)【詳細版】
- NFT
- NoSQL【詳細版】
- OCR
- PaaS【詳細版】
- PCI DSS【詳細版】
- PoC
- REST API(Representational State Transfer API)【詳細版】
- RFID
- RPA
- SaaS(Software as a Service)【詳細版】
- SaaS連携【詳細版】
- SDGs
- Self-translateプロンプティング /「英語で考えてから日本語で答えてください」【詳細版】
- SFA
- SOC(System and Organization Controls)【詳細版】
- Society 5.0
- STEM教育
- The Flipped Interaction Pattern(解らないことがあったら聞いてください)【詳細版】
- UI
- UX
- VUCA
- Web3
- XaaS(SaaS、PaaS、IaaSなど)【詳細版】
- XML
- ZStandard(可逆データ圧縮アルゴリズム)【詳細版】
あ行
- アバター
- 暗号資産
- アルゴリズム / 計算複雑性理論(computational complexity theory) / P / NP 【詳細版】
- イーサリアム
- エラスティック(弾力性・伸縮自在)【詳細版】
- オートスケール
- オープンデータ(open data)【詳細版】
- オンプレミス【詳細版】
か行
- カーボンニュートラル
- 仮想化
- ガバメントクラウド【詳細版】
- 可用性
- 完全性
- 機械学習【詳細版】
- 基幹システム
- 機密性
- キャッシュレス決済
- 共通鍵暗号 / DES / AES(Advanced Encryption Standard)【詳細版】
- 業務自動化
- クラウド
- クラウド移行
- クラウドネイティブ【詳細版】
- クラウドファースト
- クラウド連携【詳細版】
- 検索拡張生成(RAG:Retrieval Augmented Generation)【詳細版】
- 公開鍵暗号 / 電子署名 / 一方向性関数【詳細版】
- コンテキスト内学習(ICL: In-Context Learning)【詳細版】
- コンテナ【詳細版】
- コンテナオーケストレーション【詳細版】
さ行
- サーバレス(FaaS)【詳細版】
- サイロ化【詳細版】
- サブスクリプション
- サプライチェーンマネジメント
- シンギュラリティ
- シングルサインオン(SSO:Single Sign On)【詳細版】
- スケーラブル(スケールアップ/スケールダウン)【詳細版】
- スケールアウト
- スケールイン
- スマートシティ
- スマートファクトリー
- スモールスタート(small start)【詳細版】
- 生成AI(Generative AI)【詳細版】
- セルフサービスBI(ITのセルフサービス化)【詳細版】
- 疎結合【詳細版】
た行
- 大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)【詳細版】
- ディープラーニング
- データ移行
- データカタログ
- データ活用
- データガバナンス
- データ管理
- データサイエンティスト
- データドリブン
- データ分析
- データベース
- データマート
- データマイニング
- データモデリング
- データリネージ
- データレイク【詳細版】
- データ連携 / データ連携基盤【詳細版】
- デジタイゼーション
- デジタライゼーション
- デジタルツイン
- デジタルディスラプション
- デジタルトランスフォーメーション
- デッドロック/ deadlock【詳細版】
- テレワーク
- 転移学習(transfer learning)【詳細版】
- 電子決済
- 電子署名【詳細版】
な行
は行
- ハイブリッドクラウド
- バッチ処理
- 非構造化データ
- ビッグデータ
- ファイル連携【詳細版】
- ファインチューニング【詳細版】
- プライベートクラウド
- ブロックチェーン
- プロンプトテンプレート【詳細版】
- ベクトル化 / エンベディング(Embedding)【詳細版】
- ベクトルデータベース(Vector database)【詳細版】
ま行
や行
ら行
- リープフロッグ現象(leapfrogging)【詳細版】
- 量子コンピュータ
- ルート最適化ソリューション
- レガシーシステム / レガシー連携【詳細版】
- ローコード開発(Low-code development)【詳細版】
- ロールプレイプロンプティング / Role-Play Prompting【詳細版】
